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開きそうなとき
「 ああ、そうか、泥だまりに・・・。 で、そのままってことか?」
普請作業は終わり、掘りはできあがってから、 ―― 嵐がきたのか。
「 嵐の時に、たまった水ん中でころがった厨子の扉が、もうちょいであくんじゃねえかってときに、その《ご神木の片付け》がはじまっちまったんだ」
男は重い息をはくようにいってから、ぱん、とまた膝をうった。
「 それでな、その厨子がしずんでる場所には・・・まあ、いままでの堀さらいのときにも、すぐ近くまでは来るんだがよ、 ―― ほら、堀さらいの時、自分の家の壁を汚されるんじゃねえかってうるせえ家があるだろ?」
ここで、セイベイが笑い声をあげた。
「ああ、わかった。あのあたりか」




