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梅林
つまりまあ、それほど、ひどい種類のモノでは、ないのか ――
境内から梅林へとつづく道を歩きながら、首の後ろをなでたヒコイチは、セイベイとならび前をゆく男をあらためてながめた。
いままで、ヒコイチがまきこまれた不思議にでてきたモノたちとは、すこし、違うかもしれないと、どこかでおもう。
寒気は一度だけで、この男をみていると、なんだか、死んだじいさんを思い出す。
ふあり、と梅の花のかおりがとどき、すぐにその木々がめにはいる。
「ここは、また、―― ほんとうに、『梅林』だ」
「そうよ。すこしばかり坂になってるんで、粋をきどったような街のやつらは、わざわざ『山の梅』なんざ見にもこねえってことよ」




