表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/58

33 王国の改革の手順

『諸君。お集まりいただきありがとう。

 今回集まってもらったのは他でもない。ここ第一メタゾールから北方の第三メタゾールまでの道路建設、および鉄道建設のためだ』


 偉そうな幼女だ。六歳の幼女が何言っているんだか。相変わらず口は動いておらず、風魔法による合成音声でAIがしゃべっているらしい。


『計画は各自のタブレットに配信してある。エージェント・アンネリーゼの説明をよく聞いておくように』


「「「「「はい!」」」」」


 領民にはエージェント・アンネリーゼという名前で通っているんだ…。


『ママもエージェントの言うことを聞いておくように』

「はいな」


 母親に向かって偉そうな幼女だ。



 集められたのは、火魔法や土魔法の得意な領民労働者、一〇〇名。


 今回の計画は、国の最南端、第一メタゾールから、王都近くの第二メタゾール領を通って、北方の第三メタゾールまでの道路と鉄道を通すこ大規模な計画だ。

 これが実現すれば、流通革命となる。


 もともとは、影収納で流通革命を起こす計画があった。しかし、闇の魔力の安定供給ができないため、計画倒れとなってしまった。

 影収納は、見た目以上の空間を確保できるし、中身の重さも無視できる。さらに、割れやすいものを振動させずに運ぶことができるなどのメリットがあったのだが、発電所と魔導炉の組合せでは闇の魔力を生成できないため、人の魔力頼みだった。また、闇の魔石も十年以上集めているが、輸送の燃料にできるほどの量は確保できていない。


 闇の魔力の高い領民は、まだあまりいない。領民は、ダイアナが一歳のときに作った影収納学習用の動画を見て初めて、闇魔法を使えるようになった。闇魔法が領民に知られてからまだ五年しか経っていないのである。

 乳児の学習用コンテンツの一つにはなっているが、乳児に理解されて闇魔法に目覚めるにはそれなりに時間がかかる。だいたい二歳か三歳にならないと、闇魔法を使い始めない。

 つまり、乳児の魂百まで計画には組み込まれているものの、実際には闇魔法については三つ子の魂百まで計画なのである。

 結局、今もっとも闇の魔力の高い領民は、二歳の時に闇魔法を覚えて、現在七歳の子が数人だけである。



 結局、影収納による流通革命は計画倒れとなった。

 何でも魔法に頼ろうというのが間違い。

 今度は科学に頼ろう。ダイアナの前世は自動車会社の電気設計者であったため、高速鉄道を作るなどお茶の子さいさいだ。えっ、マジで?


 ここ最近、ダイアナはロイドステラ王国中から鉄を買いあさっていた。それは線路と電車を作るためだ。

 金はいくらでもあるから、金に物を言わせて高いものでもなんでも買っていた。

 それでもなお足りないので、ヒストリア王国からも鉄を買い集めている。ロイドステラの鉄道開発が落ち着いたら、今度はロイドステラの鉄をヒストリアの鉄道開発に使うらしい。


 こうして、ようやく線路と電車を作るための鉄が集まったらしい。というか、電車はもうできているらしい。屋敷の地下六階相当の場所に置いてあるらしい。そんな階段どこにあるんだ…。



 今回の計画は、ドリーの土魔法が要だ。土魔法で深い地下にトンネルを掘っていかなければならない。さらに、それが崩れ落ちないほどの強度を確保するのもドリー頼みだ。


 一方で、鉄で線路を成形するためには、土魔法の前に、火魔法で熱することが必要だ。そのための、領民労働者だ。


『じゃあドリー、設計図どおりお願い』

『わかったわ~。任せといてぇ!』


『うわっ、はやっ…』


 ドリーのトンネルを掘る速さは尋常じゃない。掘った土がどこに行っているかというと、トンネルの強度を増すために、圧縮して固めているらしい。

 もし、ドリーが誰かに付いている精霊であれば、設計図などなくとも、「メタゾールからラメルテオンまでの良い感じの鉄道用トンネルを作りたい!」って望んだだけで、適当に理想的なものを作ってくれるだろう。精霊が大きいということは、そういう適当な指示で望む結果が得られるということだ。


 だけど、今はドリーは誰かに付いている精霊ではないので、その適当力がいまいち働かない。

 その代わり、ダイアナは自分の大きな電気の精霊に、「メタゾールからラメルテオンまでの良い感じの鉄道用トンネルの設計図を作りたい!」と望めば、ドリーの理解できる理想的な設計図を得られるのだ。つまり、ダイアナは非常に高い適当力でドリーの魔力を使いこなすことができるのである。

 もちろん、ダイアナはちゃんと事前に王国の正確な地図を作って、どこにどのように鉄道を通せばよいか考えている。完全に精霊任せではない。



 鉄道は、時速四〇〇キロの高速特急、時速二〇〇キロのローカル鉄道、それぞれ二本ずつ快速と鈍行が作られる。

 道路は、時速二〇〇キロ高速道路、時速一〇〇キロの中速道路、それらもそれぞれ二車線ずつ。


 それから、時速一〇〇キロ以下の馬車用の道路。これも二車線。

 あと、一応、人道も整備。馬車道と人道は、魔物や盗賊の出ない、安全な道としての需要がある。

 というか、安全で雨風しのげるので、浮浪者とか居着きそう…。


 数十キロおきにパーキングやサービスエリアも設ける。簡易宿泊施設も用意する。


 道路も電車も、各領地に出入り口を設ける。


 ついでに、電波基地局も設置。かなり深い地下なので、電波は地上には届かない。電波は地下だけのもの。

 その代わり、魔力波の基地局というものを開発。これなら物質に干渉されないので地上にも届くようになっている。


 魔力波レーザー通信は、メタゾールとマイア姫の領地やヒストリア王国を繋いでいるものであるが、レーザーとしてではなく、指向性のない魔力波で通信する方式を次世代通信技術として取り入れた。

 最初は、ダイアナの土魔法では、魔力波の回路や通信は集積化ができなかったので、魔力波通信には消極的だったが、ドリーのおかげで集積化・高速化をできるようになったため、積極的に使うことにしたのだ。機器の製造にドリーが必須という難点があるので、従来の電波通信方式も併用する。


 電力やエネルギーは、ついに完成した永久機関としての魔道炉を用いて供給する。電気の魔力を入れると、入れた以上の電気の魔力、火の魔力、水の魔力が生成される。

 ただし、高出力を得るにはそれ相応の大きさが必要であり、道路沿い十キロおきに魔道炉や変電設備を設置してある。



 ところで、まだ自動車も開発していないのに時速二〇〇キロ以上の道路なんて誰が使うんだ、と思ったら、私がシルバーで爆走するための道だって。

 地上で誰かに当たったら危ないから用意するらしい。シルバーはそんな間抜けはしないんだけど。



 というわけで、地下道だけなら、ドリーの魔力であっという間に終わってしまいそうだ。先に行ってしまって全然見えないけど。


 私とダイアナ、領民は、影収納で鉄材を運び、その場で製鉄しながら、線路を敷いていっている。

 使える火の魔力のほとんどは、胎児の魂百まで計画で育った私とダイアナが多くを占めており、私たちは作業を外れられない。

 それでも、乳児の魂百まで計画で育った子をたくさん集めたので、なんとか頑張っていこう。


 でも道のりは長い。なんせ、第三メタゾールまで三五〇〇キロだ…。今回は、南のメタゾールから北の第三メタゾールまでの開通だけど、いずれは全国に広げようと考えている。そのときに、高速特急を通すか、それともローカル線を通すかは、まだ考えていない。


 ちなみに、第二、第三メタゾール領付近のお嫁さんの領地にはローカル線や車道を伸ばす予定だ。


 作業は、線路を敷いたそばからトロッコに乗ってで進んでいくという感じだ。私とダイアナが手伝えば、時速二十キロで進んでいける。私とダイアナがいなければ、作業員全員で時速十キロだ。

 特急はリニアモーターカーだ。線路は普通の線路ではなく、配線などの設置も必要だ。


 私とダイアナは数キロおきに電波と魔力波の基地局、魔道炉を設置したり、休憩所やサービスエリアに機器を設置したりするので、常に線路だけを敷いているワケではない。

 それに私は治療院で仕事をする日もあるので、まあ、開通まで一年はかかるだろう。


 ちなみに、アリシアのシルバーへの嫉妬も落ち着いていて、今は治療院で精力的に働いている。私がいなくても大丈夫なようだ。




 というわけで、鉄道や道路などのアングラ開発はダイアナに任せて、私はフォアグラの処理を進める。


「それではロコイア、ヒドルチゾン領に参りましょうか」

「はい!」


 マイア姫に紹介された他の三人、アレスタ、グリメサ、タルメアは、すでに自分の領地に戻って開発を進めている。彼女らは優秀なご令嬢だ。父親も問題ない。任せておいて大丈夫だ。


 一方、ヒドルチゾン侯爵はダメな貴族の典型例であり、ロコイアもダメな子だった。でも、私がロコイアに説教をして改心させた。

 ロコイアは自分の父親を説得し、自領開発の主導権を握るために、メタゾールで居残り勉強を続けていた。


 ダメな子だから育て甲斐がある。これって愛だよね…。でも、最近ここに恋が加わったんだよ。ロコイアにもマッサージをしてもらってから、ロコイアを見ても少しドキドキするようになっちゃったよ…。

 腐っても侯爵令嬢なので、外見的スペックは高いのだ。もちろん、付き合いが短いから、他のお嫁さんに比べるとドキドキは小さいけど。



 まあそれはさておき、今日はヒドルチゾン領にロコイアを返しつつ、領地の開発を進める。


 その前に、第二メタゾール領の電波塔にヒドルチゾン領へのアンテナを仮設置してきた。これは、新規開拓するのに必要な作業だ。

 第二メタゾールからヒドルチゾンは数十キロの距離なのだけど、プレドールみたいに街道に通信線を引くのは面倒なので、魔力波レーザー通信で繋いだ。

 ちなみに、道路建設の方では一緒に通信線も引いているので、いずれはヒドルチゾン領とも有線で繋げる予定だ。魔力波レーザー通信は一時しのぎだ。


 というわけで、ヒドルチゾン領に到着。ヒドルチゾン侯爵は事前調査どおりのダメなオヤジ。ロコイア、身につけた知識で親を制圧してね。応援してるよ。

 メタゾールから連れてきた作業員でヒドルチゾン領を開発した。ダイアナがいないけど、エージェント・アンネリーゼが作業手順を教えてくれた。


 その日はヒドルチゾンの屋敷にお泊まり、すると見せかけて、与えられた部屋に魔道ルームへの入り口を設置して、魔道ルームにお泊まり。

 魔道ルームとは、魔道テントをさらに簡素化した、カーテンの付いた折りたたみ式の鳥居のような魔道具だ。中は1DK、バス、トイレ、家具付きの影収納。


 その翌日、ロコイアと、ロコイアのお友達のダメなお嬢様四人とお茶会。

 うわべだけのキャッキャうふふという無駄な時間を過ごした…。


 そして、ロコイアとお別れしつつ、四人のダメなお嬢様をお持ち帰りだ。メタゾールに来てもらって、心を入れ替えてもらう。

 今後も、このお嬢様の伝手を辿って、ネズミ講(?)的にダメなお嬢様をお持ち帰りして、てこ入れしていく予定だ。



 いつもどおり、帰りの馬車の中で美味しいものをごちそうしたり、お風呂でマッサージしたり、授乳したりした。

 ドリーは、私のマッサージは、私を恋の対象と見られるようにするだけで、強制的に恋に落ちたりはしないと言っていたけど、あからさまに私に恋しているように見える。

 結局、洗脳みたいになってしまっている。でも、みんなが幸せになるための近道だから許してほしい。


 一方で、私をマッサージしてもらうかどうかは迷っている。べつに私はこの子たちに恋をしなくても、このたちのことを見捨てたりするつもりはない。恋が芽生えなくても、私はすべての女の子を愛するよ。




「アンネお姉様!また四人も拾ってきて!」

「言ってあったじゃないですか…」


 マイア姫はいつもいつも、捨て猫を拾ってきたみたいに言わないでほしい。まあ、これは挨拶みたいなものだ。



 一方で、私が第二、第三メタゾール領の土地を取得するのに王国に支払った金額の多くを、マイア姫の領地に回してもらえることになったおかげで、滞っていたマイア姫の領地の開発も軌道に乗ってきた。

 町の地下には電力線と魔力線が張られ、領民はメタゾール製の近代的な魔道具を使ったり、毎日お風呂に入れるようになったりして、領民の生活は豊かになってきた。


 ちなみに、スマホやタブレットの購入資金の補助もあり、それらも普及した。エージェント候補は私とマイア姫だよ!将来の王だよ!それってどうなの?


 まあとにかく、初期投資で領民の生活を豊かにしてやると、仕事の効率が格段に上がって、税収が上がる。そして、初期投資分くらい、すぐに回収できるのだ!


「というわけで、王の視察に合わせて移動しましょう」

「アンネお姉様と二人きり!」


 開発の進んできたマイア姫の領地をマイザー王に見せることになったのだ。マイア姫が王になったら、王国がどのように変わるかが分かる。それはマイア姫の実力を示すことになるのだ。

 これで、王がマイア姫を王位第一継承者にしてくれるといいなぁ。


 さらに、王がマイア姫を継承者に選んでくれても、王が死なないと王位を継げないのでは意味がない。


 王には悪いが毒を飲んでもらおう…。


「アンネお姉様…、仕込みは済んでいますね」

「はい…、でも、心苦しいですね…」

「皆が幸せになれる方法です。アンネお姉様が気に病む必要はございません」

「はい…」



「陛下、お迎えに上がりました」

「うむ、ご苦労」


 私とマイア姫で王城にマイザー王を迎えに行った。王都とマイア姫の領地は隣とはいえ、普通の馬車では三時間ほどの距離。でも恒星間ワープモードなしのシルバーで二十分だ。

 この時代、三時間の馬車旅に耐えられる七十四歳というのは、この老人の他にいないが、ここは技術アピールするところだ。

 あ、そもそも七十四歳というのが最高齢だった。


「こちらの馬車にどうぞ」

「うむ」


 王は、私の胸と足をジロジロと見ている。

 マイア姫にエロジジイだと言われて、そういう目で見るようにしたら、エロジジイ以外の何者でもないじゃないか…。なんで今まで気が付かなかったんだ…。


「お付きの方と護衛の方もこちらへどうぞ」

「はい」


 王は美人のメイド四人と執事二人、騎士を二十人連れていくようだ。

 当たり前だが、マイア姫を超える大所帯だ。


 王都にはメタゾールブランドが浸透しており、メイドはミニスカメイド服だ。まあ、この子たちは、なんのお世話をするメイドなのやら…。今日はマイア姫の領地の屋敷にお泊まりの予定なのに、他人の屋敷に来てまでやってもらわなきゃならないお世話とはなんなのか!


「どんどんどうぞ」

「まだ入るのか?」


 見た目が十六人乗りの少し大きめの魔道馬車。中身は四十人以上暮らせるようになっている。今の私の闇の魔力の回復量でまかなえる限界の広さだ。だって、何人連れてくるか分からなかったのだもの。


「これは…、馬車なのか…」

「はいこちらにお座りください」


 内装も可能な限り高品質なものを揃えた。装飾だらけ成金趣味というわけではない。

 この世界の建物や家具は、すべて土魔法で土を固めて作ったものだ。

 でも、この魔道馬車のテーブルには光沢のある磨いた木材を使用している。

 ソファーには…、シルバーの羽毛が使われている…。表面はシルクで肌触りも良い。


「うむ…、ふかふかで気持ちが良いのぅ」

「喜んでいただけたようで何よりです」


 ソファーに腰掛けた王。

 続いて、向かいのソファーに私とマイア姫が座った。


「お茶でございます」

「うむ?馬車で茶をいただけるのか」


 リメザがお茶を持ってきた。


「良い器だ。口触りも良い」

「お褒めいただき光栄です」


 ティーカップも、普通は土魔法で固めた土器だ。でも、ここでは土を焼いて作った白い陶器のティーカップを使っている。これも光沢があって、さらにダイアナの施した模様が綺麗だ。

 あの子のこういうセンスは、あの子自身のものなのか、電気の精霊のものなのか。


「なんだこの香りは」

「それはマイア様の領地で生産しておりますお茶でございます」

「なんと。渋みがたまらんのぅ。こんな茶は初めてじゃ」


 第二メタゾール領で茶葉を生産して、マイア姫の領地で加工している。今回はウーロン茶だ。この世界のお茶は、なんだかよく分からない雑草を煮出しただけのものだったので、ウーロン茶はとても新鮮なはずだ。

 第二メタゾール領は、農地や魔物の放牧地がほとんどだ。マイア姫の領や、他のお嫁さんたちの領へ卸す素材を生産するための土地となっている。


「茶菓子でございます」

「うむ、甘い!」


 リメザが持ってきたのは、ほんのり甘い杏仁豆腐だ。私が若返らせたとはいえ、七十四歳のおじいちゃんにチョコや生クリームないだろうと思ったので。

 それほど甘くしてないけど、それでもじゅうぶんにインパクトがあったようだ。


「ところで、茶や菓子はうまいが、出発せんのか」

「窓の外をご覧ください」

「なぬ?これはガラスか?そなたの領地の特産の?」


「すでに、マイア様の領地の門をくぐるところです」

「なんだと?まったく揺れんかったぞ。ケツが痛くもならんかった」

「これは魔道馬車という乗り物なのですが、私の魔力で動いているため、まだ市販できておりません」

「そうか…、残念じゃのぅ」


 マイア姫の領地に入った。ここからは、マイア姫がプレゼンをする。


「それでは、窓の外をご覧ください。領地の様子をご覧いただけます」


「領民はスマホを持っておるのか」


「はい。私への予算を増やしていただけたので、領民に購入資金を援助しました。陛下もおわかりの通り、王城の仕事効率が何倍にもなりましたでしょう。同じように、領民の仕事効率も何倍にもなっているのです。すると、領民は何倍も税を納めてくれるようになります。すでに、購入補助金の分は、今年の税収で回収できる予定です」


「なるほど、理にかなっておる。しかし領民に笑顔が溢れておるのは、それだけが理由ではなかろう」


「はい。領民は毎日、風呂に入ることができるようになりました。おかげで、身体が清潔になり、病気が減りました」


「なぬ?増やした予算は、領民が風呂に入る薪代の補助にも使っておるのか?」


「いいえ、予算は、魔道炉の購入に使いました。魔道炉とは…」


 ダイアナの開発した魔道炉。最初に電気の魔力を入れると、それ以上の電気の魔力と火の魔力と水の魔力を生み出す永久機関。


「魔力を生み出す魔道具とは…。それで、魔石の代わりに、格安で魔力を提供できるようになり、風呂や便利な魔道具を使い放題というわけか…」


「はい」


「これがお前のやり方か…」


「はい。アンネリーゼ様は教えてくださいました。

 領民から搾り取るのではなく、領民に幸福を与えると、よりお金を生み出すようになる、と。

 私はその考えに感銘を受けました。貴族や王族は、国のため、ひいては、民のために働くもの。

 貴族と王族が民に尽くすと、民は自然と国のために働いてくれるようになるのです」


「おぬしが王になればこれが国全土広がるというのか」


「はい」


「何十年もこの国を治めてきたが、そのような考えは初めてじゃ…。おぬしがおればこの国は安泰じゃの」


「お褒めに預かり光栄です」


「図に乗るでないぞ。すべておぬしの力だとは思っておらん。メタゾール侯爵の力添えあってのものじゃろう」


「か、返す言葉もございません…」


 どうしよう、サポートしすぎたか。


「そう縮こまることはない。おぬしはメタゾール侯爵とともに歩んでいくと決めたのであろう」

「はい…」


「そして、メタゾール侯爵もそのつもりなのじゃろ」

「はい…」


 バレてらぁ…。


「ワシはもうおぬしらに任せてもよいと思っておる。これほどまでに国の利益を考えておる者は他におらぬからな」


 ただのエロジジイかと思ったら、まだちゃんと国の行く末を考えていた。


「しかし、ワシは死ぬまで王を全うせねばならぬ」


 ここだ!いけっ、マイア姫!


「陛下、提案がございます。法を改正すればよいのです。陛下の退位を、陛下自身が決められるようにする法律です」


「しかし、前例がないのだ…」


「前例なくてできないのであれば永遠にできません。法改正に関する法はあります。それに則って法改正すればよいのです」


「しかし…」


 王は法を変えてまで退位することに抵抗があるご様子。


「屋敷に着きました。昼食を用意しております。お話はあとにしましょう」


「わかった…」


 よし、あと一押しだ。

 心を読めばもっと簡単にいくのかもしれない。でもまあ、王からは悪意を感じない。悪意のない人にはあまり使いたくない。それがマイルールだ。



 マイア姫の屋敷は、メタゾール製のガラス窓が使われており、また、室内照明もLEDなので、室内がとても明るい。


 ちなみに、シルバーは馬車を置いてくると見せかけて、裏でヒト型に変身した。そして、メイドとしてちゃっかり一行に混ざっている。

 メイドシルバー…可愛い。あれ…、耳と尻尾にツッコミが来そう…。


 マイア姫の屋敷で用意してもらったのは和食だ。ちなみに、今日は私はこねこねしたりはしていないよ。

 炊き込みご飯、ブリの照り焼き、根菜の醤油煮、豆腐とわかめの味噌汁。米と野菜は第二メタゾール領で取れたもの。魚は今朝生け捕りにしたものを持参した。根菜は昆布出汁が決め手。味噌汁は焼きあごだしが決め手。

 にんじんや大根を花の形に切ってもらったりした以外は、全体的に質素な構成だ。まあ、魚をこれほど内陸まで運んで来られるのは私だけなので、その点においては贅沢極まりないが。


 馬車で出したおやつもそうだけど、王は高齢なのだ。十四年前に内臓がほとんど止まりかけていたのを、私が内臓を活発にしてあげたとはいえ、あまり無理をするものではない。

 和食だけど、箸の文化はないので、ナイフとスプーンとフォークだ。そのため、魚の骨を避けるのが面倒だろうから、毛抜きのようなものを作って、料理人に予め抜いてもらった。だから、ナイフとフォークでステーキみたいに召し上がれ。


 見たこともない食べ物ばかりで、王はどのように食べていいかわからなそうだ。私の方を見て食べ方を伺っている。と見せかけて私の胸を見ている、ワケではない。そのような意志は伝わってこない。


「これは魚であろう。このように風味の良い魚は初めてじゃ。

 それに、こちらの野菜煮込み。色々な味が混ざっておる。

 そしてこのスープ。これも風味豊かで味わい深い…。

 一見シンプルだが、目に見えぬ食材が多く使われておって、手間をかけた料理だということが分かる」


「お褒めに預かり光栄です」


 まあ、これはほとんど私の功績だけど、マイア姫の功績ってことにしてあげたい。

 マイア姫は、私の意志をくんで、自分が褒められたということにした。


「十四年前にメタゾール侯爵に病を治してもらってから、食事が進むようになったが、やはり肉などは多く食えぬ。だがこの料理はすんなり入る。身体に染み渡る。これもメタゾール侯爵の入れ知恵なのじゃろう」


「あ、はい…」


 むぅ…。バレバレだ。

 マイア姫は、自分の有能さをアピールしなければならないところなので、私を褒めてもしょうがない。言葉に詰まっているようだ。


「メタゾール侯爵はワシを退位させたいのじゃろう。その気になれば、ときどきかけてくれる治療魔法に細工したり、料理に毒を混ぜたりして、ワシの寿命を短くすることなど造作もないであろう。だが、それをせんのじゃ。それはおぬしの人となりを示しておる。

 この料理は、身体に良いものなのじゃろう。おぬしはなおも、ワシの延命を考えてくれておるのじゃろう。そのような者がワシを殺すとは思えぬ」


 王は私たちに協力的だ。ならば、それなりのことを話してしまっていいだろう。


「すべてお見通しですね。私はマイア様を王に据え、ともに国を栄えさえようと思います。すでに、改革の計画は実行に移されています。

 そのためには、王国主導で改革を進めたいのです。この国に救う悪徳貴族を一掃するには必要なことなのです」


「ふむ…。おぬしたちに任せたいのはやまやまじゃが…」


 王は王位にすがりついているわけではない。古いしきたりに縛られているのだ。この歳になって、慣れたやり方を変えるのはおっくうだ。だからそれに勝る動機を用意してやればよい。


「分かりました。まあ、ごゆっくり考えていただければと思います」

「うむ」


「今日はお疲れでしょう。お風呂で疲れを癒さされてはいかがですか」

「そうする」


 マイア姫が王に風呂に入るのを促す。風呂は私とダイアナが作ったものだから、わたしがどうぞどうぞと言いそうになるが、いちおう、風呂を持っていることや風呂で客をもてなせるのはマイア姫の力なのだ。




 王族はたまにはお風呂に入っているみたいだから、メイドさん四人がお世話できるのだろう。私は男湯に乗り込んだりはしない。

 シャンプーやコンディショナーなど、メイドさんに使い方を教えておいた。シャンプーや石けんは、すでにマイア姫の領地から他の領地に輸出できる体制にあるが、お風呂が普及しないと意味がないのである。

 あ、まずは水のいらないシャンプーが必要だったか。


 風呂から上がって服を着た王。今度は私がご奉仕する番だ。私は服を着ていない男にご奉仕するつもりはない。


「いつものように、施術をしましょう」

「ああ、そなたはなおも、ワシの延命を考えてくれるのだな」

「乗りかかった船でございます」


 まあ、普通に考えたら、カイロプラクティックで伸ばせる寿命なんて、前世の人種の寿命プラス十年くらいなんだけど、この世界では魔法がこもっているから、もしかしたら施術し続けていれば永久に死なないんじゃなかろうか…。


「×××…!」


 消音魔法を忘れない。

 以前から無意識に、「私に恋をしないでほしい」という魔法を込めて施術していたのだろうか。今回は意識してその魔法を込めよう。

 今日は、特別に元気になってもらおうと思っている。どこがとはいわない。一回でそうそう変わらないけど、覇気はだいぶ若返ったように見える。


 この王は例に漏れずイケメンだ。イケメンダンディーだ。私の施術により、加齢臭はしなくなっているし、シワも少ない。さすがに全部白髪だが、髪が薄くなってもいない。十四年前に初めて見たときのよぼよぼとは大違いだ。



 マッサージを終えて、王を寝室に送る。


「それでは良い夜を」

「ああ」


 メイドさん四人も、当然のように一緒に寝室に入ろうとするので、


「メイドさんたちのお部屋はこちらです」

「えっ、私たち、お世話が…」

「こちらです!」

「はい…」


 王は、部屋に自分の大事なメイドを連れていけなかったのに、文句も言わず吸い込まれるように寝室に入っていった。


 なぜなら寝室には、私の仕掛けた毒が…。


 行き遅れちゃった二十代後半のご令嬢八人。すべて、十七歳に改造済みだ。

 短期間だが豊胸マッサージも施した。スタイル抜群、お肌もすべすべ。

 化粧品も提供し、ナチュラルメイクを教えてある。ほんのりアイシャドー、ほんのりピンクに輝くリップ。ほんのりピンクのチーク。この世の者とは思えないほど美しい!

 王が今夜のおかずに連れてきたメイドさんたちなんて目じゃないのだ。メイドさんもどっかしらのご令嬢なんだろうけど…。


 呼んだのはご令嬢だけど、私に恋をしないように魔法を込めた。心苦しいがこの子たちは生け贄だ。いやいや、本人たちも納得済みなんだよ。

 ご老人だけど、イケメンで金を持っている男を紹介するよと言っておいた。ウソは言ってない。


 王は無駄遣いをしないので、王としての給料をため込んでいる。退位した後も、不自由なく暮らせるだろう。

 そこで、若い女の子でハーレムでも作れば、退位後に遊んで暮らせるってワケだ。


 さっき、王には特別元気なってもらうようにしておいた…。

 ここで、ご令嬢に妊ませて…、なんて、両者を陥れるようなことは考えてないよ。ご令嬢には、月経周期の管理アプリ入りのスマホを渡してあって、今日が安全日だということは確認してある。というか危険日の子には今日は辞退してもらった。


 まあ、王はこの歳になって子供を作るわけにはいかないから、このままではハーレムを作ることはできない。

 ぶっちゃけると、王には、退位してハーレムを作って、欲望のままに生きませんか、と提案するわけだ。


 王の唯一の欠点。好色であること。というのは、以前マイア姫から聞いた。それ以外は、かなりできる人だ。今日話してみて実感した。

 しかも、私たちに友好的だ。だけど、歳を取り過ぎて保守的になってしまっている。そこで、王の唯一制御の効かなそうな感情に刺激を与えて、保守的な考えよりも優先すべき利益を提供するのだ。

 これはよく効いてくれそうな毒だ…。



 マイア姫が考えたんだよ。この作戦。けっこう人でなしな作戦だよ…。

 最初はほんとうに妊ませて陥れようって言われたんだ。

 マイア姫、ちょっヤバいよ。マイア姫としては早く王になって、同性婚の法律を作って、私と結婚したいんだろうけど、欲望に身を任せて何を言い出すのやら…。

 だから、もうちょっと穏便に行くように、私が作戦を修正したんだ。


 まあ、王の退位後に子供ができちゃうのは知らないけど。


 ちなみに、王は、息子や娘が寿命で死に始めるような歳だから、十人いた王妃はすでにすべて亡くなっている。




 翌日。お部屋の掃除は、王の連れてきたメイドさんに任せた。慣れているだろう。だけど、非常に屈辱的だ。可哀想なので、すべて済んだらハーレムに入れてもらえるように十七歳に改造してあげよう。


 朝食の席で、マイア姫が切り出した。


「陛下。提案がございます」

「ああ…」


 王は昨晩、欲望に身を任せ、やらかしてしまっている。妊ませてはいないはずなので、弱みを握るなんてところまではできないだろうが、王はそれを知らないので弱みを握られたとでも思っているようだ。

 だから、顔色が悪い。体調はこの上なく良いはずだけど。

 でも何度もいうけど、私は弱みを握って操ったり陥れたりしたいわけではない。


「王位の継承に、王の死が必要であるという条件を、法律から削除しましょう。退位してしまえば、昨晩のような暮らしを、毎日できますよ」


 マイア姫…、悪役っぽい…。


「なっ…」


「ちなみに、心配なさらずとも、昨日の子たちは妊んでなどおりませんよ」


「…」


「あとは決断だけでありませんか」


 王は王位にすがりついているわけではない。マイア姫と私に国を託すことに二言はないはずだ。

 天秤に掛けるのは王位とハーレムではない。保守的な考え、重い腰とハーレムなのだ。たいした決断ではないだろう。


「参った…」


「それはつまり…」


「ああ。ワシが死なずとも王位を継承できるよう、法改正しよう」


「「ありがとうございます!」」


 マイア姫とハモってしまった。


「しかし…、ほんとうに大丈夫なのか…。その…、昨日のは…」


「はい。この歳になって未婚のご令嬢を妊ませてしまったなどというスキャンダルで、陛下を陥れようなどとはみじんも考えておりません」


 おい、最初は陥れる算段だったんだろう!マイア姫、怖いよ!


「はぁ…」


 結局、王はあまりその言葉を信じておらず、半ば脅す形で王位を継承してもらう感じになってしまった…。




 王は急速に法整備を整えた。もしほんとうにご令嬢を妊ませていたらと思うと、いち早く退位したかったようだ。効果てきめんだ。

 これで、遺言書に後継者を書いておいて、死んだときに後継者が発覚するというシステムが廃止される。

 いや、王と子孫は基本的に友好関係にあるので、死ぬまで後継者を明かさないとか、遺言書を見たら実は違ってましたなんてドッキリはやらない。


 反対票はなし。反対があっても王は強権で法を改正できる。もちろん、やたら強権を使う王など支持されない。



 そして、マイア姫が十五歳になった日。いや、この国には成人という概念はないので、いつでもよかったんだけど。


「マイア・ロイドステラよ。我は王位を退き、そなたに王位を授けるものとする」


 マイア姫が腰を低くすると、マイザーはマイア姫の頭に王冠を授けた。十五歳の女の子が被るにはちょっと大きい。


 王位の継承は、王城のバルコニーで、王都民に公開される形で行われた。

 ヒストリアの王城と同じような作りだ。あのときやったのは歌とダンスだけど…。


 マイア姫の衣装は、王の威厳を示す、装飾の多いドレス。でも、ミニスカートは忘れない。

 水平からなら見えないかもしれないけど、バルコニーは高いところにあるので、柵の隙間からパンツが見えた人もいるかもしれない。だけど、成人女性が胸を大きく出してひけらかすのと同じように、パンツをチラ見せするのは、女性のアピールの基本となりつつある。


「「「「「おおおおおおおお!」」」」」


 湧き上がる歓声。女性の王の誕生だ。


「私はこの国の民を幸せにすることによって、この国を発展させます!」


「「「「「おおおおおおおお!」」」」」




 バルコニーから引っ込むと、マイア姫のスマホが鳴った。

 王城には王のためにアンテナ塔を設置したので、電話が通じるのだ。


『『『マイア様、王位継承おめでとうございます!』』』


 ビデオチャットには、ヒルダとクレアとロザリーが映っている。


「えっ、もうメタゾールに伝わったのですか?」


『バルコニーでの継承式、ライブ中継で配信されていたのよ』

『マイア様、演説かっこよかったぁ』

『マイア様…、ほんとうに王になられたのですね…』



 私の方にもコールがあった。


『『『マイア様!おめでとうございます』』』


 セレスとカローナとレグラだ。


 なんだこれ、全国大会優勝おめでとうみたいなノリだな。




「さて、王城の大掃除です。アンネお姉様もお手伝いお願いしますね」

「はぁ。気が重いですね」


 王族というのは、王の配偶者と子孫である。配偶者はすでにいない。

 マイザー王が王位を退くと、マイア姫を除く王の子孫すべてが、王族ではなくなる。このことは予期されたことであったが、何も問題がないわけではない。


 王族は生活費として莫大な公費をもらっている。まず、王族でなくなったからには、これをもらえなくなる。

 だが、王族は王城内で何かしらの役職に就いており、給料ももらっている。王城で働いているから、王城を追い出されることもない。もしくは、すでにどこかの貴族に嫁いでいる。

 退いたのは王だけであり、子、孫、ひ孫は、まだ仕事を続けるのである。彼らの中には、マイア姫の父親、祖父が含まれるのだ。マイア姫の弟もちゃんと仕事に就いている。彼らはマイア姫が王位に就くことを了承している。マイア姫の公務を支えてくれるだろう。


 ちなみに、祖父の父、つまりマイザー元王の息子、元第一王子は、つい最近老衰で亡くなった。享年六十歳だ。それなのに、その親はまだ生きているのだが。


 そういうわけで、元王族は路頭に迷うことはない…、はずだった。王族の中には、なんの役職にも就かず、公費で遊んで生活をしていた者が二人いたのだ。


 一人は毎度おなじみ、元第五王子、サレックスだ。ちゃんと公費でもらっている生活費を貯めておけば、困ることはなかったのにねえ。貯金はほとんどないようだ。

 さらに当てが外れたのが、父マイザーの遺産がないこと。サレックスが王城を追い出されるときは、マイザーが死ぬときとなるはずであった。マイザーの子は十人おり、王妃はすでに全員亡くなっているので、マイザーが死ぬと、子十人で遺産を分けることになるが、それでもじゅうぶん遊んで暮らせるほどの遺産となるはずだった。しかし、マイザーが死なないまま、サレックスは王城を追われることになってしまったのだ。


「さあ平民、出ていきなさい。情けはかけません。今までの生活費も返してもらいたいくらいです」

「なんだと、小娘風情が!」


 マイア姫はいつものメイド四人と女騎士二人を連れている。もちろん、私もマイア姫を守る。

 さらに今日は、メタゾールに最初に連れてきていた八人の男騎士も連れている。彼らもちゃっかり学校で勉強していたのだ。魔法も使える優秀な魔法騎士だ。そんな役職はないけど。


「私は気分が良い。今日だけ、その無礼を許しましょう。あなたたち、連れだしなさい」


 男騎士四人がサレックスの腕を掴んで連行した。


「離せ!お前ら!不敬罪で打ち首にしてやる!」

「不敬罪を言い渡せるのは、王と貴族当主だけです。あなたにその権限が与えられたことは一度もありません」


 サレックスには、家もない。メイドを雇う金もない。食べるだけの金なら、少しはあるかもしれない。


 もう一人のプー太郎…、プー子?は第五王女。いかにも悪役おばさんという感じだった。今度は女騎士二人で連行してあげたよ。



 一方で、マイザー元王は、マイア姫の収めていた領地でハーレムを作ってすごしてもらうこととなった。

 もちろんお約束の八人の生き遅れたけど十七歳に改造したご令嬢を送ってあげた。

 それから、視察で付いていたメイド四人も、十七歳に改造してあげた。月経の周期アプリをインストールしたスマホもあげた。懐妊に使うのか、避妊に使うかは、本人たち次第。


 マイア姫が治めていた領地は、代官に任せることになる。もちろん、大まかな方針はマイア姫から出す。




 マイア姫が王になったことで、止まっていたことがいろいろと動き出す…。まずは…、


「アンネお姉様!ください!」

「えっと…、まだ結婚していませんよ」

「女どうしで子供を作れることを示さないと、女どうしの婚姻を法律で認められないでしょう」

「卵が先かコカトリスが先かというやつですね…」


「なんですかそれは。まあ、ヒストリア王国と同じです。あ、ヒストリア王国との国交も公にしなければなりませんね。

 と・に・か・く!アンネお姉様!早くください!」


「えっと…、時期が来たら、ヒルダたちにもあげるという約束でした。だから…」

「アンネお姉様は私の正室ですよ!私がいちばんにもらうのが道理です!」

「分かりました。でも、明日にはメタゾールに、みんなにも…」

「不本意ですがそれでいいです。じゃあ、今夜!今夜ですよ!」

「はい」


 ああ、マイア姫と交わるんだ。考えたら、顔が熱くなってきた…。初めて本気のエッチ…。

 毎日やっているマッサージ…、あれはエッチじゃないんだよ…。

 九歳でカローナに妊まされたときは意識がなかったからエッチしたという感覚は全くなかったし…。というか、あのときは私が女役で、今度は私が男役なんだよね…。


 私とマイア姫は、別々にお風呂に入り、身を清めた。だって、エッチの前にお風呂でマッサージしちゃうと、本番での気分が…、ってマッサージはエッチじゃないのだから、本番とか仮とかじゃないんだって、何度いったら分かるんだ。


 つまり、初めてエッチ…。ああ、なんだかドキドキしてきた…。前世でもしたことなかったと思う…。


 王城にもお風呂があるし、自分でお湯も張れるけど、シャワーとかがないので、私に割り当てられた部屋に魔道ルームと魔道テントを設置して別々にお風呂に入った。

 マイア姫は魔道ルームを使い、四人のメイドさんにお世話してもらっていた。私は一人、魔道テントでお風呂に入った。お風呂を二つ持ってきていてよかった。


 私は自分の世話くらいできるので、先に風呂から上がった。髪の長さはマイア姫と同じくらいだけど、私は水魔法を使って髪に付いている水分を集めたりできるからすぐに乾く。

 それくらいなら、メイドさんも覚えているかな?


 マイア姫の使っている魔道ルーム側の寝室に行った。最初からその手はずだった。慣れているメタゾール製のベッドを使いたいから。


 私は灯りを暗くしてベッドに座って一人待っていた。魔道ルームの廊下から漏れる灯りに、バランスの良い胸と凹凸のある女らしい身体シルエットが浮かんだ。私はお嫁さんの体型をすべて覚えているので、もちろんシルエットだけで誰か分かる。というか、夜目が利くのか、顔まですべて分かるよ。愛しいマイア姫…。

 顔が火照る…。胸がドキドキする…。これが恋…。

 このときが訪れるまでに恋を知ってよかった。


「アンネお姉様ぁ…」


 マイア姫からは聞いたこともない色っぽい声。


「マイア様…」


「様なんてイヤっ。マイアって呼んで」


「マイア…」


 マイア姫はベッドに寄ってきて、私の隣に腰掛けた。


「アンネお姉様ぁ…。とっても素敵な身体…」

「ひゃっ…」


 マイア姫が人差し指で、私の胸に触れた。


「アンネお姉様はこんなに私を誘惑しておきながら、つい最近まで触らせてくださらなかったなんてずるいです!」

「そういうつもりではなかったんですけどね…」 


「まあいいです。今夜はたっぷり可愛がってあげますね」

「えっ、あっ、はい」


 あれ?私が子種提供者だから、私が男の気持ちになってマイア姫の体つきにドキドキしていたっていうのに、私が可愛がってもらうの?これが女どうしで恋する魔法なの?


「あはん…」


 マイア姫が私に触れるたびに身体が熱くなって気持ちいい…。あれ…、これってやっぱり、最近毎日マッサージのお返しとしてやってもらっていたのと同じ…。

 じゃあ、私も。いつものマッサージ魔法から、マッサージ成分を抜いて…。


「ひゃっ…」

「マイア…、可愛い…」


「アンネお姉様…、ずるい…。もう、食べちゃう…」

「むんん…」


 いきなりキスだよ。いっつもディープ。ほんとうに食べられそう…。物理的に人肉を喰う肉食女子。

 でも、そのディープさが良い…。私もマイア姫を食べたくなる…。


 マイア姫…。私が九歳のときに手紙で知り合ってから八年の付き合いか…。

 私をお姉様と呼び、若干ストーカー気味に慕ってくれる、可愛い妹分…。でもこれからは私の妻…。


 今日、私はマイア姫と交わった。



「アンネお姉様…、おはようございます…」

「おはようございます、マイア…」


 私の顔を見るなり真っ赤になってしまったマイア姫。マイア姫と二人きりのベッドで起床すると、ああ、夫婦になったんだなぁと感じられる。どっちも婦だけど。

 ちゃんと記憶がある。昨日、たしかにマイア姫に授けた。X染色体のものしか作らなかった。うまく着床するように祈った。




 私は王城にマイア姫を残して、メタゾールに戻った。

 一方で、王城および王都のテラフォーミングを進めるべく、ダイアナとドリーを送った。


「アンネ!約束よ!私にちょーだい!」

「待ってください…、せめて夜に…」


「私も欲しいな…」

「じゃあ今夜はクレアに譲ってあげるわ!」

「ほんとう?」

「クレアはいつも私に譲ってくれるもの。だから、私はクレアの次でいいわ」


「じゃあアンネ、今夜お願いね!」

「はい」


 最初はマイア姫も含めてみんな一緒にあげようと思っていた…。そんなロマンのかけらもないようなことをしようとしていたなんて…。お嫁さんたちを十把ひとからげに扱うなんて、私は酷いやつだ…。

 いつものマッサージと同じようなものと考えがち…、いや、実態はほとんど一緒だったな…。ってことはマッサージをみんなでやるのが間違いなのかな…。


「では私はあさってで…」


 ロザリーも、私の子供、欲しいんだね…。


「お嬢様方のあとは、私がいちばんよ!」


 次はアマージなんだ。アマージは私のことあからさまに好きだもんな。


「次は僕だよ!」


 次はマクサか。


「その次は私」


 次はレルーパ。無表情だけど、鼻息は荒い。


「次は俺…」


 次はゾーミア。俺とかいって、顔を赤らめちゃって、五人の中ではいちばん乙女。


「私はリーダーだから最後よ」


 私と交わる順番に、ハンターパーティ聖女の守り手のリーダーとか関係あるのかな…。イミグラは私をハンティングしたり、子種を採集しようとしているのかな…。


 お嫁さんに、王族、貴族、平民って序列を付けたくなかったんだけど、結局そういう順になってしまった。

 と思ったら、月経周期の管理アプリをみんな使っていて、おすすめの日を示されたんだってさ!エージェント・アンネリーゼに…。私が順番指定したみたいじゃんか…。


「私はみんなのあとでいいわよぉ」

「お母様…、誰の後でもダメです…。学校で教えているでしょう…」


「私はねーねのなんていらないよーだ」

「それでいいよ」


 でも、ダイアナの言ったとおり、遺伝子改変とかすればできるのだろうか…。まあ、危ないことはやめておこう…。


「あの…、私にもいただけるのでしょうか…」

「もちろんです」


 シルバー…。何が生まれるんだろう…。


「お母さん…」

「えっ、アリシアはもう少し大きくなってからね…」

「うぅ…。早く大人になりたい…」


 アリシアは六歳。まださすがに初潮来ていないよね。っていうか、ドラゴンの成長速度とかどうなってるの?人間に変身したから人間と同じでいいのかな。


「私はおばあちゃんのはいらない。お母さんからもらう」

「そうしていいですよ」


 ワイヤ…。ときが来たらダイアナとお幸せに…。



 やはり、マッサージとエッチは紙一重であり、みんなにマッサージしたあとにエッチっていうのは気が引けるので、エッチの期間にマッサージはお預けだ。メイドたちもね。こればっかりは我慢してもらおう。


 メイドもお預けなのだから、領民にもやってあげられない。治療院でアリシアがどのような思いでやっているのか知らないのだけど、今回はアリシアとは交わらないし、アリシアに治療院を切り盛りしていてもらおう。




 私たちには個人の部屋というのがない。というか、みんなの部屋になってしまっているのが私の部屋だ。

 以前はお母様の部屋でみんな寝ていた。でもセレスとカローナが帰ってくるまで、この部屋は基本、入室禁止だ。

 今回はお母様の部屋に魔道ルームと魔道テントを設置して、私が魔道テントのお風呂、クレアが魔道ルームのお風呂へ。クレアは自分のメイドに綺麗にしてもらっている。

 お母様の部屋のベッドは使用禁止なので、また魔道ルームのベッドで明かりを消して私は待っている。


 魔道ルームの廊下から漏れる明かりに、クレアのシルエット。この世界の十七歳としては小柄で童顔。前世の母国の十七歳なら標準的。でも、プロポーションは抜群。私が鍛えたんだもの。

 ああ、ドキドキする…。


「アンネ、もういるの?お待たせ」

「待っていませんよ」


 お待たせだって。可愛い…。

 私の座るベッドに寄ってきて、隣に座るクレア。


「アンネって、ホント綺麗…」

「ひゃうっ…」


 クレアに背中を触られたら、とても気持ち良かった…。もっとやってほしい…。


「小柄な私よりウェストが細いんだから…」

「はう…」


 クレアは、背中から後ろに手を回して、そのまま腰を上から下まで、お尻の方までなでた。

 私はまたもや気持ち良くなってしまい、声を上げてしまった…。


 あれ…、私が攻められている…。


「アンネっていつも大胆な格好をしているのにウブだよねー」

「ああん…」


「体中敏感みたい…」

「あはん…」


 あれえ…、私が男役じゃないの…。反撃しなきゃ…。反撃ってなんだ…。


「クレアだっていつも可愛い声をあげるじゃないですか!」

「あふん…」


 互いに五歳から付き合いのある幼なじみ。出会ったばかりのころは、ドジで泣き虫だったし、今でも守ってあげたくなるような可愛い子。でも、自分の意見を言えるしっかりとした子に育った。


 クレアと見つめ合う…。そのまま、顔が近くなって、目を瞑ると、唇にクレアの感触…。


 今日、私はクレアと交わった。



「アンネ!おはよ!」

「おはようございます!クレア」


 ちょっと顔を赤らめながらも元気に挨拶をするクレア。いたずらっぽい笑顔。

 こうやって、クレアと二人だけのベッドで起床すると、これ夫婦なんだなぁと思える。両方とも婦だけど。




「アンネ。今夜ね!」

「はい」


 顔を赤らめて、とても良い笑顔で言うヒルダ。

 それを見ると、私も顔が火照ってきた。



 その夜…、昨日とおなじで、お母様の部屋に魔道テントと魔道ルームを設置。テントのお風呂を私が使い、ルームのお風呂をヒルダが使う。


 魔道ルームのベッドで私は灯りを消して待っていると、廊下を駆けてくる音。ヒルダが一糸まとわぬ姿で部屋に入ってきて、私の胸に飛び込んだ。


「ああん…」


 ヒルダの顔が私の胸の間に飛び込んだ瞬間、とても気持ち良かった…。

 胸を触られて気持ちいいなんてことはなかったのだけど…。

 気持ち良かったせいで力が入らず、私はそのままベッドに押し倒された。


「今日は独り占め!」

「ああああん…」


 ヒルダになら何をされてもいいよ…。


「アンネの脚…」

「あふん…」


「アンネのお尻…」

「ひぅ…」


「アンネの二の腕!」

「はう…」


 ってマニアックなところを…。

 でもそろそろ反撃しないと…。だから反撃ってなんだー。

 でももっと触ってほしい…。

 私は肉体的には疲れないのだけど、このままだと精神がいってしまいそう。今日は子種を授けることがゴールなのだから…。


 私の上に乗ってきた瞬間に、ヒルダを抱き寄せた。そして、口づけ…。


「ん…」

「ん…」


 私とヒルダは一つになった。



 翌朝…。


「あ、アンネ…」

「おはようございます」


 昨日はあんなに大胆だったのに、朝になるとしおらしい。ああ、夫婦になったんだなぁ。




 そわそわしているロザリー。


「今夜…、お願いします…」

「はい…」


 顔を赤らめて、もじもじしながら言われると、私もなんだかドキドキしてきて、目を合わせづらい。

 ああ、こういう子こそ、お嫁さんって感じする。



 その夜…、お母様の部屋で魔道テントと魔道ルームを使うやり方は定番となった…。テントのお風呂を私が使い、ルームのお風呂をロザリーが使う。


 魔道ルームのベッドで私は灯りを消して待っていると、廊下にロザリーの姿。なんかもじもじしている。裸でよいのは脱衣時までであり、廊下で裸でいるのには抵抗があるのかな。


「あの…、お願いします…」

「はい…」


 そんなにもじもじしながら言われると、こっちまでもじもじしてしまう…。

 ベッドに座っている私の前でロザリーは立ったまま。

 今度こそ、私が男役?いや、私は男になりたいワケではないんだけど、ずっと男役の覚悟をして来ているのに、どちらかというと私が攻められている方が多くてさ。

 よーし!


「きゃぁ」


 私はロザリーの手を引いて、ベッドに倒した。そのまま、私が上になって、


「あはああん…。それでは今度は私が上になりますね…」

「あ、はい…」


 断りを入れてからだなんて…。淑女だなぁ。お嬢様だなぁ。


「それでは…」

「ん…」


 ロザリーと口づけ…。


 私とロザリーは一つになった。



 翌朝…。


「あ、あああ、アンネ…」

「ろ、ロザリー…」


 ロザリーは私の顔を見るなり、顔が真っ赤になってしまった。ああ、私の妻。




「アンネお嬢様ぁ。もう我慢できません…」

「早いです…」

「そこをなんとか…」

「ダメなものはダメです…」

「いけずなアンネお嬢様も素敵…」


 その一日は、ずっと鼻息の荒いアマージに尾行されていて、落ち着かなかった。



 魔道テントと魔道ルームに別れてお風呂に入った。私が身体を洗っていたら…、


「ひゃっ…」


 私は後ろから背中に触れられて、声を出してしまった…。

 知っていたよ…。私に後ろから近づいて奇襲なんてできる人はいないんだよ…。筋肉のきしみ音とか強い感情とか、アマージはダダ漏れなんだもの。

 でも、私が気が付いたらがっかりするだろうし、私も襲われたかったので、気が付かない振りをした。


「アンネお嬢様あぁぁ」

「ああああん…」


 アマージは私を押し倒して……。



 翌朝…。あれ…。昨日は私がめちゃくちゃにされるだけで終わったような…。

 だいたいさ、起きたら浴室の床とかどうなのよ…。来るのが早かったけど、ちゃんと身体洗ってきたのかなぁ…。

 床に大の字で寝ているアマージ。っていうか、昨日私、すぐに気を失ったから、子種を植え付けられなかったじゃん…。

 じゃあ、今、失礼します…。


 はぁ…。雰囲気のかけらもなかった…。ドキドキする暇もなかった…。

 まあ、アマージのほうは一日中ドキドキしていたみたいだし、喜んでくれたようで何よりだ…。


 これでも私とアマージは契りを交わして夫婦になったんだなぁ…。


 私は魔道テントの浴室のベッドに寝かせて、その場をあとにした。




「アンネお嬢様。ホントにボクがもらっちゃっていいのかな…」

「はい。もちろんです」

「分かった!今晩、よろしくね!」

「はい」


 ボクっ娘のマクサ。だけど、一人称がボクであることと、若干男の子っぽい口調以外は、男の子の要素はあまりない。

 男の()ってやつには会ったけど、逆は女の息子()っていうのかな…。それは無理があるな…。

 普通に可愛い男の子に恋をしたら、こういう気持ちになるのかなぁ。



「優しくお願いね…」


 マクサは男の子のように振る舞っているわけではないのだけど、ウケ専というのは予想外…。


「まずはベッドに一緒に座りましょう」

「うん…」


 こうやって、何もしないでそばに座っているだけってドキドキする…。

 マクサの気持ちも同じみたい。心臓の鼓動が聞こえる。

 マクサの後ろからマクサの腰に手を回した。


「あっ…ん…」


 自分のことをボクと言っている子から、こういう色っぽい声が出ると、普段とのギャップのせいなのか、とても興奮する…。


「アンネってとても綺麗…。触ってもいいかな…」

「はい……、あっ…ん~…」


 やたらに触るんじゃなくて、こんなふうに少しずつ触りあっているほうが、なんだかドキドキする…。


 しばらくお互いに触ったりなでたりしあって…、そして私のほうが我慢できなくなってキス…。


「ん…」

「ん~…」


 私はマクサと契りを交わした。



 翌朝、


「あっ…」

「おは…、あれ…」


 マクサは私を見るなり、ボッと火が付いたように顔が真っ赤になって、気を失ってしまった。

 みんな翌日になると、なんで恥じらう乙女のようになってしまうんだ。




「アンネお嬢様」

「はい」


 無表情だけど、普段と違って顔の赤くなっているレルーパ。

 私が笑顔ではいと応えると、さらに赤くなった。

 それを見たら、私もなんだか顔が火照ってきた…。


「うん…」

「はい…」


 しゃべるときはけっこうしゃべるのだけど、普段は口数の少ないレルーパ。言いたいことは分かるよ。だから私もうなずいておく。



 魔道テントの浴室に…、気配が…。


「アマージ!」

「アンネお嬢様ぁ。続きぃ」

「ダメです!出ていって!」

「はい…」


 はぁ…。いつからここにいたのかな…。レルーパのことだけを考えていたのに…。もう、しょうがない子。


 アマージのせいでお風呂に時間がかかってしまった。

 魔道ルームの寝室に向かうと、すでにレルーパの気配。待ち伏せしている?

 こういうのは罠にかかってあげないとがっかりさせてしまう。

 何も知らないフリをして寝室に入ると……、


「きゃっ…」


 きゅるるんお嬢様モードで怖がってみた。そうしたら、レルーパに火が入ってしまったようだ。

 ガバッと後ろからわしづかみにされて、あっという間に縄で縛られてしまった。何これ…亀甲結びってやつ?


「アンネお嬢様を調査する」

「えっ…、調査…」


 レルーパはこういうプレーが好きなのか…。手足をひとまとめに後ろ側で縛られて、ベッドに転がされた。たまにはこういうのも良いかな…。


「まずはここ…」

「はぅ…」


「次はここ…」

「ああん…」


 どこがどれだけ敏感か試されている…。一カ所一カ所、触り始めてから意識が飛ぶ寸前までの時間を計測されている…。


「はぁ…はぁ…」


 心臓がバクバクいっていて、生まれて初めて息が上がっている…。


「仕上げは…」


 私としては、このまま一方的にめちゃくちゃにされて意識を飛ばしてしまってもいいのだけど、私の役割はレルーパに子種を授けることなので、このままだと役割を果たせない。レルーパはそこのところ分かっているのかなぁ。


 次に触られたら、気を失ってしまいそうだ。

 私は腕と足を縛っている縄を、力尽くで引きちぎった。

 全身を縛っている縄も、普段はぷにぷに状態にしている筋肉を一瞬だけ堅く膨れ上がらせることで、粉々に引きちぎった。


「えっ…」

「次は私の番です」


 縄は繊維。私を縛っていた縄を土魔法で分解して、そのまま同じような形でレルーパを縛ってあげた。違うのは結び目がないということだ。


「ちょっ…」

「今度は私が調査していいですよね!」


「うん…」

「しおらしいですね…、レルーパ…」


 レルーパを調査っていったって、私はみんなの身体のことを知り尽くしている。でも…、マッサージと関係ないところは、あまり触らない…。今日はそこも含めて調査しちゃう…。


「ああああん…」


 レルーパは終始無抵抗。そのまま口づけ…。口づけしたまま、土魔法で縄をほどいた。


 今日、私とレルーパは一つになった。



 翌日、レルーパは私を見るなり、顔が真っ赤になった。

 昨日、私のことをあれだけ好き放題やってくれたのになぁ。

 でもまあ、こうやって恥じらう姿を見ていると、夫婦になったって実感できるんだよな。




「アンネお嬢様…」

「はい、今夜、よろしくお願いします」

「あ、ああ…」


 赤くなっちゃったゾーミア。そんなに赤くなられると、私まで顔が火照ってくる…。

 実はパーティメンバーの中でいちばん乙女なゾーミア…。



 魔導ルームの寝室のベッドに座って待っていると、廊下からゾーミアがゆっくり入ってきた。


「アンネお嬢様…、オレ…、どうかな…」

「綺麗です…。とても綺麗です…」

「ありがとう…」


 四年前に会ったときは、マッチョだったゾーミア。腹筋は六つに割れていたし、至る所にばきばきの筋肉があってすごかった。まるでボディビル。でも、それは本人の望む体型ではなかった。

 私は、自分の身体と同じように、ゾーミアの筋肉をすべてほぐし尽くした。今では筋肉に見えるものは全くない。女らしい凹凸のある、長身スレンダーボディのお姉さんだ。ゾーミアは四年間で憧れの体型を手に入れた。


 ゾーミアは私の隣に腰掛けた。


「なあ…、優しく頼む…」

「ええ」


 口調は男のままなのに、言っていることが乙女。そんなゾーミアはとても可愛い。ああ、ドキドキしてきた…。


 二人でベッドに寝そべり、互いに抱き合ったりした。


 今日、私とゾーミアは一つになった。



 翌朝、ゾーミアは私の顔を見るなり、火が付いたように真っ赤になり、そのまま気を失ってしまった。

 これが夫婦…、なのかな…。




「アンネお嬢様。今夜は寝かせないわよ」

「はい…」



 魔導テントのお風呂から上がり、魔導ルームの寝室に行くと、すでにイミグラがベッドに座って待っていた。

 あ…、なんか…、ベッドに座っているイミグラが、とてもかっこよく見える…。


「イミグラ…、よろしくお願いします…」

「今日は私が恋のABCを教えてあげるわ」

「はい…」


 頼りになるお姉さん、イミグラ。イミグラがリードしてくれるんだ。


「まずは…」

「ん…」


 イミグラが目を閉じて顔を近づけてきた…。この世界では最初がキスなのかぁ…。

 って、私、前世のABCも知らないじゃん…。


 私はイミグラに身を任せることにして、目を閉じた…。

 唇に伝わるイミグラの感触。

 体中が熱くなっていく。


 唇が離れると、急に寂しさがこみ上げてきた。行かないで!

 思わず目を開けてしまった。すると、イミグラの優しい笑顔。すぐさま寂しさが紛れ、ほっとした。


「ひゃっ…」


 イミグラは私の腰に手を回した。指が触れた瞬間、私はビクッとしてしまった。だって、気持ちよさを凝縮したような感覚だったから…。


 イミグラは腰に回した手で私を引き寄せて、もう一方の手を反対側から背中に回して、私を抱きしめた。

 私の胸がイミグラの胸に当たると、さらに心臓の鼓動が高鳴ってきた…。


 そして、抱き合ったまま、もう一度キス…。


 キスをしたまま、私はイミグラに押し倒された。

 しばらく口づけしたまま、抱き合ったり、脚や腕を絡め合ったりして、肌と肌で触れあった。


 唇と唇が離れると、


「あの…、アンネお嬢様…」

「えっ、はい」


「その…、最後にどうすればいいかしら…」

「あ、そうですね…」


 イミグラはずっと男役としてリードしてくれていたようだけど、本来男役は私だ。うーん難しい。私たちは女どうしなのだ。本来どっちが男とかないのだ。

 エッテンザムの血を引いていれば本能で分かるのかな…。無意識に身体が動いちゃうくらいだから…。


 そのあとは、私のリード。

 私とイミグラは契りを交わした。



 翌日、


「あ、あああ、アンネお嬢様…、お、おおお、おはよう…」

「おはようございます、イミグラ」


 昨日は頼りがいのあるお姉さんが、男役としてリードしてくれたというのに、なぜ翌日になるとウブな少女なってしまうのだ。

 でも、こういう姿を見せてくれると、私は妻を持った、夫婦になったって思うんだよな。




「ご主人様…」

「ええ…」


 私のお嫁さんの中では、シルバーがいちばん清楚なお嬢様って雰囲気…。その、真っ白な髪が清楚さを引き立てている…。



 魔道テントのお風呂から出て、魔道ルームの寝室に行くと、すでにシルバーがベッドの前で立って待っていた。


「ご主人様…」

「シルバー…」


 白馬の耳と尻尾、白鳥のような翼を備えた、ペガサス娘、シルバー。


「座りましょう…」

「はい…」


 二人でベッドに腰掛けた。シルバーには翼がある。余分な耳と尻尾もある。これらを触るとどういう反応をするのかは知っているのだけど、気になってしょうがない。


 私はシルバーの背中の翼に触れた。


「ああああん…」


 そのまま腕を下ろしていって尻尾。


「あふん…」


 そして、耳。


「はうぅ…」


 ああ、可愛いシルバー…。


「あの…、私を人間として見てください!」

「はい…」


 シルバーはそう言うと、翼をしまった。耳と尻尾はしまえない。

 私はシルバーのもふもふが気持ちいいからって、そこばっか触っていた。でもシルバーは人間として扱ってほしいんだ…。


 シルバーの腰に手を回した。


「ひゃっ…」


 初めて王都に行ったときから十五年も付き合っているシルバー。

 一年前まで馬だったシルバー。今だって、どこへ行くにも一緒。シルバーなしの生活は考えられない。

 私が寂しかったとき癒やしてくれたシルバー。馬の姿のままでもかまわなかったけど、シルバーは私の望む姿に変化した。


 ああ、シルバー…。


 私はシルバーと一つになった。



 翌日、目覚めると真っ赤な顔のシルバーの姿。


「おはようございます、ご主人様…」

「おはようございます、シルバー…」


 ああ、私とシルバーは夫婦になったんだ…。




 さあ、これでメタゾールにいるお嫁さんはすべて攻略したぞ。と思ったら…、


「お母さん…」

「アリシアはまだ早いですよ…」

「子種をもらえなくてもいいの。みんなと同じようにしてほしい…」

「分かりました…。今夜、来てくださいね」

「うん!」


 アリシアは嫉妬モードだ。シルバーのときと同じだ。

 可哀想だから、しかたがない…。でも六歳の女の子にエッチのまねごとをするのは…。

 いつもみたいにマッサージしあう感じで…。うんそうしよう…。


 翌日、アリシアの機嫌は回復した。




「アンネちゃん…。やっぱり寂しいわ…」


 お母様は収穫祭からずっと水着のままだ。一辺が十センチの正三角形を紐で繋いだだけの水着。少し動くだけでポロリしそうなので、いつも心配になって目で追ってしまう。


 お嫁さんの中でお母様だけ仲間はずれになんてできない。

 子種を授けなければ、お母様と抱き合ったりすることはなんらおかしくない。


「今夜、よろしくお願いします…」

「わかったわぁ!」



 魔道ルームの寝室のベッドに座って待っていると、お母様はやってきて、寝室の入り口で立ち止まった。


「アンネちゃん…」

「お母様…」

「お母様じゃイヤよ!リンダって呼んで!」

「リンダ…」


 お母様のことは、まだ幼さの残る十歳の少女の頃から知っている。幼なじみと言っても過言ではない。

 十歳にしては胸の大きかったお母様。今はとても大きなお胸のお母様…。


「アンネちゃぁん!ってあああん!」


 お母様はかけだした。そして盛大にコケ…そうになったので、私が駆け寄って、お母様を支えた。

 でも慌てていたので、私が手を差し出した先には、お母様の胸が…。お母様の胸を持ってお母様の身体を支えることになってしまった…。お母様の胸をムニュっと潰してしまった…。


「あはあん…。アンネちゃんったら大胆…」

「えっ、転びそうになったのを支えただけで…」

「もっと支えて~!ああ~ん…」


 お母様は私が手で支えている胸に、さらに体重をかけてきた。お母様の胸がむにゅむにゅと潰れる…。


「もう!」

「きゃっ」


 私はうつ伏せに倒れそうになっているお母様を横に回転させて、仰向けにして、そのままお姫様だっこした。


「リンダ…」

「アンネちゃん…」


 生まれて目がはっきり見えるようになってからずっと、お母様のことを可愛いと思ってきた。お母様なら結婚してもいいと思ってきた。


「ん…」

「んん…」


 お母様をだっこしたまま、お母様に口づけ…。


 お母様と結婚できないなんてイヤだ!

 お母様との結婚を阻むもの。私とお母様が共通で持っている問題となりそうな劣性遺伝子。そこを組み替えれば、私はお母様と結婚できる!



 目を覚ますと、愛しいお母様の顔…。あれ…、あれれ…、あれええええ…。

 いやまだ、危険日じゃない可能性だって…。


「アンネちゃん…」

「お母様…」


 お母様と夫婦になってしまった…のかな…。




 結局、リーナは私の前に顔を出さなかった。いやいや、それでいい…。勢いに任せて、お母様みたいにしてしまいそうだ…。


 その後、クローナ、メレーナ、ソラーナ、エリス、アレスタ、グリメサ、タルメア、ロコイアの八人から電話があって、子種が欲しいと言い出した…。あの八人のお嫁さんも大事なお嫁さんだ。私もみんなと夫婦になりたい。

 でも、自分の領地の改革中なんだから、それが終わってまた一緒に暮らせるようになったら、そのときにしようよ、ということで待ってもらった。



 振り返ってみると、どちらかというと積極的なお嫁さんが多かった。私のほうが男の役割を果たさなければならないというのに、お嫁さんのほうが私を女と見ていて、襲ってくるお嫁さんが多かった。

 いや私はどこからどう見ても女なのだけど、私としては今回男の役割を覚悟していたにもかかわらず、予想外の展開だったものでね…。

 そのくせ、翌日目覚めたときには、ほとんどのお嫁さんがしおらしい妻の顔になっていた。


 女同士で子供を作る魔法はこんなものなのだろうか…。エッテンザム家はとうの昔に女同士で子供を作ることを禁止されていただろうから、カローナに聞いても知らないだろうし…。



『アンネちゃん…』

「ドリーとはリーフっていう子供を作ったじゃないですか…」

『みんながうらやましくなっちゃったわ…』

「分かりました」


 私はドリーに素直に同意した。私だって、今回ドリーを仲間はずれにするには嫌だ。ほんとうはリーナとダイアナとだって…。


『それでね、私の子供をみんなの赤ちゃんに付けてあげてほしいの』

「えっ…、みんなって…、人数分?」

『そうよっ』


 リーフは、私がドリーに子種の魔力を与えると、すぐに生まれた。たくさん産むのは簡単なのかもしれないけど…。


「あの…、全部私の顔になってしまうのイヤなんですけど…」

『じゃあ、今回はちゃんと容姿を考えましょうよ!』

「でもそれだと、ドリーどころじゃなくなってしいますよ」

『その前まで私のことを思っていてくれればいいわよ~』


「あの…、ドリーから何か減っていったりはしないのですか?リーフはドリーの半分の魔力を持っていました。

 私の半分の光の魔力も持っていましたけど、私の最大MPが減ったとかはありませんでしたが…」


『MPって何かしらぁ?私はなんともないわよ~』

「では今夜…」

『は~い!』



 魔道ルームのベッドで座って待っていると、廊下からドリーの姿が。

 ドリーは葉っぱ水着を着ている。木の精霊だからこんな感じ!という私の妄想が生み出したコスチューム。

 ドリーは葉っぱ水着を脱げない。だけど、葉っぱ水着をめくったりはできる。

 私は光と土の魔力を込めるとドリーに触れられる。ドリーも土の魔力で私に触れられるようだ。でも…、


『あああああああん…。アンネちゃん…、今日はすごいわぁ…』


 気持ち良くさせることなく、ただ触るというのは難しい。とくに、今みたいにドキドキしているときは…。


「ああああん…」


 ドリーが土の魔力を込めて私に触れると、私も声を上げずにはいられない…。

 これはもはや、マッサージとは無関係。私がドリーにかけた恋の魔法のお返し。


 しばらく互いに愛撫。そしてキス…。あ…、ドリーとキスって初めて…。

 物理的なものはなにも交換していないのに…。魔力の交換だけでここまでできるものなの?



『はぁ…。良かったわぁ。そろそろ…いいわよ~…』

『分かりました…』


 ドリーは、人間の姿になったときに比べると、私のマッサージの魔法で、お肌が綺麗になった。それはきっと、私が作った設定だ。それならきっと、精霊の姿は成長することもできるはずだ。そういう設定にできるに違いない。

 加護している子供が生まれるまでは、普通の精霊みたいに光の玉で。子供が生まれたあとは子供と同じ形をとり、子供の成長に合わせて一緒に成長していくんだ。そうだ、双子みたいになるといいな!


 私とお嫁さんたちの子だから、半分は私に似ていて、半分お嫁さんたちに似ている。精霊も同じように、私とお嫁さんたちに似ている。

 まあでも、子供と同じ姿の精霊が側にいたら見える人は混乱するよな…。普段は光の玉でいてもらおう。必要があれば、人間形態になるってことにしよう。


 服装は…、着替えるって設定できるのかな…。もう葉っぱ水着はこりごり。ひとまず、ちゃんと下着を着ている。ブラとパンツだ。下着を脱ぐのは禁止。そして服は加護している主人の服装がコピーされる!

 服も成長に合わせて大きくなっていく。そんなことできるかな…。できるはず!できると信じていればそうなるはず!


 よーし、設定が固まったぞ!


「ドリー…、よろしくお願いします…」

『は~い……、ああん…生まれる~~~~』


 相変わらず速いなぁ…。

 薄緑の精霊が十一体生まれた…。ドリーの土の魔力半分と、私の光の魔力半分を持つ精霊。

 十センチの大きさだけど、とてもつよい、濃密な魔力。


 ぶっちゃけ、私の五メートルの光の精霊は邪魔なので、姿を決められるなら大きすぎないようにね…。

 ちなみにドリーはもともと直径十メートルの光の玉だ。リーフは最初から人間形態だったけど、もし精霊形態だったとしたら、ドリーの魔力の半分だから、八メートルだろうか。

 だとしたら私の光の精霊も、少なくとも八メートルになれば、人間形態になれるかもしれない。でも、十八年生きていて五メートルということは、八メートルになるにはその四倍…、七十二年かかる…。

 自分の光の精霊を人間形態にすることは忘れておこう…。



 この子たちは

 マイア姫、ヒルダ、クレア、ロザリー、

 イミグラ、ゾーミア、レルーパ、マクサ、アマージ、

 シルバー、お母様、

 と、私の両方に似た姿に育つんだ。


 今は同じ形をしていてどれがどれだか分からなくなりそうだから、一体一体別々の小さな影収納に入れた。



 翌日、


「アンネ…、これはすごい魔力を持った精霊ね…。私でも分かるわ…」

「すごいね、どこで見つけてきたの?」


「えっ…、それは…」


 私とドリーの子供ってのはちょっ言いづらい…。まるで、正妻との娘に、妾との娘を侍女として付けるような…。

 いやいや、ドリーは妾ではない。私にとってはみんな正妻。


「まあいいわ。ありがとね。これでパリナも安心ね」

「ありがとね!プレナを守ってね!」


 名前決まってるんだね。あ、誰にも尋ねなかったけど、女の子でいいんだよね?うわ、もしあとで男の子がよかったって言われたらどうしよう…。


『精霊を付けてもらったの?よかったわね!』

『精霊を付けてもらったの?よかったね!』


 ヒルダとクレアがタブレットをおなかに向けている…。


「なんですか…それ…」


「えっ?突然エージェントの私が出てきて、胎児教育するんだって言っているのよ」

「もしかしたら、アンネみたいな魔力のすごい子が育つかもって、エージェントの私が言ったんだ」


 タブレットには、普通の可視光で見える映像に重ねて、精霊を見る視覚で見える映像が映っている…。

 しかも、音も普通の音と一緒に、ドリーが出す声のように精霊の音が鳴っている。


 つまり、胎児がおなかの中で見ることができるし聞くこともできるってことか!これなら胎児も教育できる!胎児の魂百まで計画か!


 ヒルダのタブレットにはエージェント・ヒルダとエージェント・アンネリーゼの二人が映っている。今発言したのはエージェント・ヒルダのほうだ。文字も一緒に表示されている。

 クレアのタブレットにも、エージェント・クレアとエージェント・アンネリーゼの二人が映っている。

 なるほど、両親で教育するんだな。クラリスのタブレットにもセレスとカローナが映っていたもんな。


『あなたに精霊を付けました。この精霊の魔力を使って、ここに魔力を集める練習をしてみましょう!』(前世の言語で)


「えっ…」


 今度はエージェント・アンネリーゼが…、前世の言語でそう言った。つまり、転生者であることを期待しているってことか…。


 ダイアナが私のおなかにいるとき、ダイアナとは精霊を並べて前世の文字を形作ることでコミュニケーションを取った。精霊でドットフォントを作るのは大変だった。

 でも、それと同じことをタブレットでできるようにしてしまったのか…。しかも音声付き…。


「エージェントのアンネは、何を言っているのかしら?」

「おかしくなったのって聞いたら怒るんだよ」



 その後、ロザリーや聖女の守り手のみんな、シルバーとお母様にも、おなかの子供に精霊を付けにいった。光や土の精霊が見える子はあまりいないので、見えない子にはこっそり付けておいた。


 というか、お母様のおなかに精霊が定着してしまった…。遺伝子操作はうまくいったのだろうか…。お願い、光の精霊…。おなかの子を守って…。


 みんな同じようにタブレットで胎児教育していた…。

 普通はエージェントキャラは私かご令嬢しか選べないが、特別仕様なのか、エージェント・イミグラとかエージェント・シルバーがいた!


 ちなみに、胎児教育は普通に妊娠した領民にも行われているらしい。転生者発掘に力を入れているのか。

 でも、両親のエージェントキャラが登場するのは、あくまで私の子向けの特別仕様であり、領民向けは普段エージェントをしている私か領地の当主のどちらかだけらしい。それでは、領民の子に私たちが親だとすり込んでしまうのではなかろうか。




 続いて、マイア姫の子供に精霊を付けに王城に行こうと思って、


「シルバー、王城に…、あっ…」


 シルバーを呼んだのだけど…。


「はい、そう思いましたので、ブロンズを鍛えておきましたよ」

「シルバー!準備が良いですね!」

「私が仕事をできない間の担当を用意しておくのは当然です」


 シルバーが時速六〇〇キロで走ったら、おなかの子は死んでしまいそうだもん…。


「でも、ブロンズはまだ時速三〇〇キロしか出せません…」

「それだけ出せればじゅうぶんです」


 というわけで、ブロンズの恒星間ワープモードで五時間。王城に着いた。ブロンズだって、人間の言葉を理解できるし、目的地も分かる。


「アンネお姉様ぁ…、遅いですう…」

「ごめんなさい…」

「もう!アンネお姉様は公爵であり、私を補佐する役割なのだから、王城にいてもらわないといけませんよ!」


 私は、ダイアナに侯爵位を継いだのだ。そして、私は公爵になった。領地を持たない法衣貴族だが、侯爵よりも上位に位置する。

 公爵という地位はロイドステラ王国にはなかった。だが、マイア姫はヒストリア王国の制度を参考にして公爵位を設け、私を第一号に任命した。


 侯爵位をダイアナに譲った私が公爵になるためには、無爵位から五段分の爵位の功績を挙げないといけないと思うのだけど、私はその数倍の功績を挙げているので、無爵位から公爵になるのは造作もないとのこと。ほんとうかな。


 新たな爵位を賜るなら別の家名を与えられるのかなと思ったけど、この国ではそうでもないらしい。爵位を得た分家も、同じ家名を名乗ることは多いらしい。


 それから、厳密にはダイアナ・メタゾール侯爵と、アンネリーゼ・メタゾール公爵は違う貴族家になってしまったので、予算など分けなければならないのだけど、いつまでなあなあで済ませられるだろうか。


「…ンネお姉様!聞いてま……、うぅ…」

「マイア様!」


 最初に着床させたマイア姫は、そろそろつわりが来る頃だ。私が見てあげないと…。

 でもなあ、メタゾールにも妊娠中のお嫁さんはいっぱいいるし、どうしよう…。毎日往復しないといけないのに、五時間かかるブロンズじゃ役不足…。


「おとなしくしていないと身体に触りますよ…」

「誰のせいで……うぅ…」

「さあ…、お休みになって…」

「あああん…」


 私はベッドに寝かせたマイア姫をマッサージした。ここのところ、恋の気持ちとマッサージの気持ちを切り分けられるようになってきた。でもマイア姫とは夫婦になったのだから、恋の気持ちも込めてマッサージすることにした。


 マイア姫は王になって間もないというのに身ごもっちゃったから、私が公務のほとんどをやるハメになりそう…。私、事務仕事、無理だって…。



 王城では、マイア姫が誰の子を身ごもったのかという噂で持ち切りになった。


「皆の者、集まってくれてありがとう。私の噂が立っていますね。皆の疑問に答えましょう」

「(ざわざわ…)」


 謁見の間に集められた、王城で政務を行う者たち。つまりマイア姫の親や祖父などだ。ここにはマイア姫の味方しかいない。


「私はアンネリーゼ・メタゾール公爵の子を身ごもりました」

「はっ?どう見てもおなごではないか」


 マイア姫の父親、キプレス、三十歳。優しそうな人だ。たしかに王になる器ではないかもしれない。だが、彼の疑問はもっともだ。


「はい、我が妃、アンネリーゼは、女どうしで子供を作る魔法を編み出しました。これからすべての女性が女性と子供を作れるようになります」

「そのような魔法が…。いや、それよりも妃と言ったか」


「はい。私はアンネリーゼを正式に結婚し、アンネリーゼを正妻とします。

 そのために、同性婚を法律で正式に認めるものとします。まあ、今までも禁止するような法律はありませんでしたけどね、これからは正式に認める条項を加えます」

「いったいどのような影響があるか…」


「それについては、こちらにシミュレーションがございます。このシミュレーションは、ヒストリア王国という、私が密かに国交を深めてきた海の向こうにある国で、すでにこの法律を施行した結果を基にしたので確かな…」

「ちょちょちょっと、待ってくれ!」


 マイア姫が身ごもった。相手は私だ。女同士で子供を作れるから。

 さらに、私と結婚。ヒストリア王国で前例があるから。ヒストリア王国と国交?海の向こう?

 話がカオスすぎる。まあ、マイア姫は誰にも理解できないと思いながらも、情報をすべて詰め込んだのだ。


「はい。分かっていますよ。順序立てて話しましょう。と言いたいところですが…、皆のタブレットに詳細をまとめておいたので、あとは各自エージェント・マイアに聞いておくように。私は…、うぅぅ…」

「マイア!」


 マイア姫には時間がなかったのだ。


「マイア様は今がいちばん大事なときですので、これにて…」

「すみません…、ごきげんよう…」


 マイア姫は、話しながらどんどん顔色が悪くなっていた。私はマイア姫をお姫様だっこして、退室した。


「えっ…。なんという力…。そ、そうか。マイアを頼むぞ…」



「アンネお姉様ぁ…」

「はい」

「あああん…」


 私に甘えてくるマイア姫。

 今あんまりマッサージしてしまうと、子宮へ集中している血流が全身に分散してしまって、子供の成長に影響が出るかもしれない。だから、まだまだ控えめにしかやっていないのだ。これだと、あまり効果が持続しない。


 ところで、王都民に格安で配られたスマホ・タブレットのエージェントキャラは、私かマイア姫を選べるようになっている。そこで、王城勤務の者たちにも、エージェントキャラを選び直すチャンスが与えられた。

 マイア姫の肉親たちはこぞってマイア姫を選んだようだ。そりゃ、自分の子、自分の孫が可愛いもんね。


 それで、そのエージェント・マイアが王城の者たちに説明したのは、まず、ヒストリア王国との国交について。セレスタミナ・ヒストリア王とは非常に親密な関係にあり、互いに情報交換をしている。

 その前に、ヒストリア王国はメタゾールの南の海を隔てた大陸にある。

 その前に、海を渡ることのできるほどの船をメタゾールでは開発済。

 ヒストリア王国を説明するのに必要な前提知識が多すぎる。


 それから、ヒストリア王国での同性婚に関する法律の施行について。マイア姫と同じようにセレスタミナ王が身ごもって、出産の後に法の施行、結婚と第一子の公開、女性どうしで子供を作れる魔法の公開。

 ヒストリア王国でそういう手順で進めていったから、同じようにやりますよってことだ。


 ヒストリア王国民は、セレスタミナ王と聖女の支持が厚いから簡単に受け入れられたけど、ロイドステラ王国ではどうかなぁ。その辺の説明がすっぽり抜けてるよ。大丈夫かな…。




 うう…。マイア姫のことが心配でメタゾールに帰れない…。とりあえず、ビデオチャットで様子をうかがってみよう…。


「ヒルダ、調子はどうですか」

『アリシアが良くしてくれているのよ!』

『そうなんだ。アリシアってすごいねー!』

『お母さん、私みんなのこと治してあげたのぉ!』


 ヒルダの後ろからひょこっと顔を出したアリシア。とても可愛い。


「そう!それは助かりました!」

『アリシアがいなかったらヤバかったわ…。子供を宿すのがこんなに大変だなんて…』

『そうだね。これならアンネがいなくてもなんとかなりそう』


 えっ、私がいなくてもなんとかなる?アリシアがいればいい?

 そんなぁ…。ヒルダとクレアは私の妻なのに…。


 もう私はいらないの?みんなはアリシアのことが好きなの?


『…ンネ、大丈夫?』

『顔色悪いよ』


「えっ?」


 私ったら…、みんながアリシアのことを褒めたり、アリシアがいればいいって言ったりしているのを聞いて、アリシアに嫉妬した…。胸が締め付けられるような思いだった…。

 これが恋…。私のお嫁さんを奪わないでほしい。寂しい…。


『もう、アンネが体調崩してどうするのよ』

『そうだよ。私たち、アンネのことがいちばん大事なんだ。おなかの子よりもね』


「あ、ありがとうございます…」


 私のことがいちばん大事…。その言葉が嬉しい…。


『じゃあ切るわね』

『アンネも無理しないでね』


「ごきげんよう」


 はぁ…。

 自分がいらないとか、自分より他の人がいいとかいう言葉に、すごく動揺した。いや、そんな言い方はしていなかった。でもそう言われたような気がした。

 おかしいな。私はお嫁さんどうしが仲良くすることは嬉しかったはずだ。それなのに、アリシアがみんなに慕われていることがとても不安に思えた。


 アリシアも同じ気持ちだったのかな…。


 私はすべてのお嫁さんを大切にしたい。お嫁さんに序列とか付けたくない。

 でも、今はマイア姫に付きっきりだ…。マイア姫に仕組まれたのかな…。マイア姫は独占欲に駆られたんだ、私が王城に缶詰になるようにしてしまったんだ…。

 分からなくもない。今は私もお嫁さんを独り占めしたい。


 恋って難しい。愛とは違う。愛ならみんなに等しく振りまくことができていたと思う。たぶん。

■アンネリーゼ・メタゾール公爵(十六歳~十七歳)

 マイアが王位に就くとともに、ダイアナに侯爵位を継ぎ、自身は公爵位となった。


■ダイアナ・メタゾール侯爵(六歳~七歳)

 セレスとカローナに衣装を指導され、アンネリーゼにフリルなどの装飾をくわえられたため、比較的まともな貴族のミニスカートワンピースを着ている。

 アンネリーゼから侯爵位を継いだ。


■マイア・ロイドステラ王(十四歳~十五歳)

 マイザー王から王位をむしり取り、王となった。


■マイザー・ロイドステラ(七十四歳~七十五歳)

 王位をマイアに継承した。今後は資産のある平民という扱いになる。


■リンダ(二十六歳~二十七歳)

 永遠の十七歳。三角水着ですごしている。


■メリリーナ(十歳~十一歳)


■ヒルダ、シンクレア、ロザリー(十六歳~十七歳)


■イミグラ、レルーパ(二十二歳~二十三歳)

■ゾーミア、アマージ(二十一歳~二十二歳)

■マクサ(二十歳~二十一歳)


■ドリー(永遠の十七歳)


■クローナ・ランドセン伯爵令嬢(十六歳~十七歳)

 ロザリーに紹介されて嫁になったご令嬢。熱狂的ファンなキャラ。


■メレーナ・メキサム伯爵令嬢(十六歳~十七歳)

 ロザリーに紹介されて嫁になったご令嬢。わたくしさん。


■ソラーナ・アンプラム侯爵令嬢(十六歳~十七歳)

 ロザリーに紹介されて嫁になったご令嬢。むっつりデレ。


■エリス・フルジアン侯爵令嬢(十六歳~十七歳)

 ロザリーに紹介されて嫁になったご令嬢。

 間延びした口調。なかなかのお胸をお持ち。ロザリーのより大きい。


■アレスタ・コーチゾン伯爵令嬢(十四歳~十五歳)

 マイアに紹介されて嫁になったご令嬢。元気な子。


■グリメサ・デキサテール伯爵令嬢(十四歳~十五歳)

 マイアに紹介されて嫁になったご令嬢。緊張しがち。


■タルメア・アルクロゾン侯爵令嬢(十四歳~十五歳)

 マイアに紹介されて嫁になったご令嬢。おしとやか。


■ロコイア・ヒドルチゾン侯爵令嬢(十四歳~十五歳)

 マイアに紹介されて嫁になったご令嬢。

 アンネリーゼに悪意を持って近づいたが、改心して真面目に取り組むようになった。


■ロコイアのお友達のお嬢様

 私欲にまみれたダメな貴族家のご令嬢。父親もダメ人間。


■パリナ(胎児)

 ヒルダがおなかの子に付けた名前。


■プレナ(胎児)

 シンクレアがおなかの子に付けた名前。


■マイザー元王のハーレム嬢(二十代後半)

 マイザーの退位を決意させるために用意された。生き遅れのご令嬢。十七歳に改造されている。


■マイザーのメイド

 マイザーの退位後、十七歳に改造されて、無事にハーレムに入れたらしい?


■マイアの祖父(四十五歳)

 マイザーの孫。名をアタラックス・ロイドステラ。


■キプレス(三十歳)

 マイアの父。マイザーのひ孫。


■その他の王城で働く肉親


■エージェント・アンネリーゼ、エージェント・ヒルダ、エージェント・シンクレア、エージェント・マイア、エージェント・ロザリー

 スマホ・タブレットの教師兼エージェントアプリのCGキャラ。

 領民は自分の領地のご令嬢かアンネリーゼを選択できる。

 胎児の魂百まで計画を実施するために、親のスマホに二人同時に出現するようになった。


■エージェント・イミグラ、エージェント・ゾーミア、エージェント・レルーパ、エージェント・マクサ、エージェント・アマージ、エージェント・シルバー、エージェント・リンダ

 胎児の魂百まで計画を実施するために特別出演。親のスマホにエージェントアンネリーゼと二人同時に出現するようになった。


■開拓作業員

 火魔法や土魔法が得意な領民労働者、一〇〇名。


◆メタゾール領、メタゾール侯爵領、第一メタゾール侯爵領、第一メタゾール領

 たんにメタゾール領というように表記した場合は、ロイドステラ王国の最南端に位置する、アンネリーゼの生まれた地を指す。


◆第二メタゾール侯爵領、第二メタゾール領

 アンネリーゼが、王都やマイア姫の領地の近くに取得した魔物の森を開拓して作った領地。


◆第三メタゾール侯爵領、第三メタゾール領

 アンネリーゼが、ラメルテオン領の近くに取得した魔物の森を開拓して作った領地。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ