魔力の暴走
私はアリス。ことし七歳になった。小柄なのでよく幼女と間違えられる。
だが、幼女ではない。少女だ。大切なことなので何度だって言う。少女だ。
さらに言えば銀髪銀目の美少女だ。
自意識過剰? ハッ人さらい人気ダントツ一位の実績は伊達ではないのだよ。ついでに変態さん人気もな!
この特殊技能『変態ホイホイ』のお陰で今や街の幼児性愛者は絶滅危惧種に指定されている。いっそそのまま絶滅してしまえ!
……うん。物心ついたころには教会に併設されている孤児院で生活していた。両親の記憶はない。
孤児院は大人たちが『大都会』と揶揄る街のさらに隅っこにある。
半ば森に埋もれたように存在する教会と孤児院だが、遊び場や遊び道具の調達には事欠かない。ついでに肉という食糧にも事欠かない。大自然よありがとう。
自然の恵みのおすそ分けや労働力を提供しているからか、街の人たちとの関係は良好だ。ここでの暮らしに大きな不満はない。
しいて言うならば、ではあるが。
王都から離れ、騎士団の目が届きにくい辺境ゆえに、人さらいの類がちょっかいをかけていくくらいだろうか。
そんなゴロツキを捕まえるたびに人の売り買いはご法度だと、大人たちが容赦なくプンプンしているため今まで大事に至ったことはない。
変態ホイホイの送迎にはシスターがいつもついているし。
シスターがいない時はすぐ連絡が付くよう警備網が敷かれてるし。
だから今日もすっ飛んできたシスターがゴロツキをぶっ飛ばして、私たちが縛り上げて、自警団のおっちゃん達に引き渡して、駄賃をもらって終了するはずだった。
無謀にもゴロツキの一人が刃物を取り出したりしなければ。
取り出された刃物は無常にもシスターの拳によって弾き飛ばされる。
が、その先には私がいた。
運が悪いにも程がある。いや、いっそ運が良いのかもしれない。
――アリス、享年七歳。凶刃に倒れる。
そんな不吉なモノローグが脳内で再生されると同時に、身体中から大きな力が虹色に輝く光の渦となって現れた。
光の渦は飛んできた刃物を音もなく消し去る。
「なに……これ……」
街のど真ん中に突如現れた光の渦。
日が傾いだ時刻ではさぞかし目立ったのだろう。
気が付けば私の周りにはシスターだけではなく、街の人や自警団のおっちゃん達、御年九十を超える薬屋の偏屈ばーさんまで集まっていた。
「アリス……! アリス!」
いつも不愛想を通り越して無表情なシスターが血相を変えて叫んでいる。
――えっと、どうしよう。
光の渦は途絶えることなく私を囲っている。
なんでこうなったかが分からないのだから、これをどうすればいいのかなど分からない。分かるわけがない。
分かるのは、身体の中にある大きな力がガンガン吸われ続けていること。
そしてその力が吸われるごとに意識が遠くなっていること。
だからこの渦を消さなければならないこと。
この予感はほとんど本能に近いと思う。だからこそ今の状況がマズいのだということが分かる。
シスターをはじめ街の人たちが必死に私の名を呼んでくれているので辛うじて意識は失ってはいない。
けれど、そろそろ限界かもしれない。
がくりと膝をつき、そしてうつ伏せに倒れる。
孤児院の子が神父様の腕を引いて走って来る姿をぼうっと眺めながら、私はついに意識を手放した。
アリス「思えば何もかもがここから始まりましたよね」
神父様「懐かしいですねぇ」




