解散
その後、予定では四人で席を囲んで少しだけ話をする時間だった。ショーが十分で終わり、残りの二十分がそれに割り当てられているのだ。
しかし正直、それは気詰まりのする時間だった。恐らくその場にいる誰もがそう感じていただろう。
そのためか、ショーが終わると須藤はカバンを持ってそそくさと帰ろうとした。
「ごめんなさい。これから用事があって。今日はもう帰らせてもらっていいですか」
これから用事が無いことは誰の目にも明らかだったが、彼女はさっさと一人でドアに向かう。
玲於奈は無理やり参加させる必要はないと思った。須藤は誰とも仲良くする気がないのだから、話しかけて迷惑に思われるくらいなら一人にさせた方がお互いの幸福のためだろう。
しかし予想外に小野寺がその背中を引き留めた。
「せっかくだからもう少しいたらいいんじゃない?」
「え……」
須藤が驚いたように振り向いた。
玲於奈も巴も驚いて小野寺の顔を見る。小野寺はいつも通り平然としており、考えが読めない。これが彼の努力ということなのだろうか。
須藤はしばらく目線を彷徨わせたのち、うつむいた。
「ごめんなさい。今日は、その、大事な用事があるので……」
「本当?」
「はい、ごめんなさい。今日のショーも、あまり楽しめなくて、すいませんでした」
彼女はペコリと頭を下げると、それ以上引き止められない内に足早にドアから出て行った。
もの悲しい響きで、ドアのベルが須藤の退出を告げた。
「主賓が居ないんじゃ、やってもしょうがないし、今日はこれで解散ってことにしてもいいかな?」
取り残された三人の沈黙を破って、小野寺が言った。
玲於奈と巴は顔を見合わせた。
「まあ、今日の目的が果たされたってことは、これ以上残っていてもしょうがないし。それでいいんじゃないか」
「わたしも別に構わないけど」
何とも言えない空気だった。やり切ったという達成感もなく、かと言って中心になって動いた小野寺はそれほど悔しがることも無く、みんなの足並みがそろっていない。
小野寺だけはきびきびと動いてテーブルとイスの位置を元に戻して片づけを終えると、「お邪魔しました」と言って帰って行った。
「なんだかよく分からないな。結局、小野寺は何がしたかったんだろう?」
「さあ? 正直わたしも提案した時、本当にやるとは思っていなかったから」
「冗談で提案していたのか」
「半分以上ね。でも、小野寺はあの須藤さんのことを最初から知っていたんだよね。本気でこれで解決できると思っていたのかな?」
「そうは思えないな。やるだけやってみた感じじゃないか」
小野寺とは高校に入ってからなんとなく仲良くなった間柄だが、未だに玲於奈にもよく分からない部分がたくさんある。
結局、「それじゃあ」と言って、玲於奈もその日は帰ることにした。
まるでオチの無い話をされた時のような、不完全燃焼の気持ちだった。
簡潔に結果をまとめれば、小野寺の任務は失敗。須藤を楽しませることはできず、彼女の成績は二学期も下がったままだということだ。ただし小野寺は最大限の努力をした。
それでこの話は終わりだと思った。DCWが始まる前のちょうどいい休息と時間つぶしにはなったのではないだろうか。
だから、まさかこの日の出来事が後日、こうつながるとは思っていなかった。
次話は2020年6月の投稿予定です




