【最終話】 萌えってやっぱり必要だよ
「なあ、俺マジで疲れているんだけど。本当に大変だったんだぞ」
「まあちょっと待ってよ。たぶんもう少しだから」
平日の学校帰り、玲於奈は小野寺と一緒に街を歩いていた。
あれから結局、身体がワイズの毒に打ち勝つまで回復スキルの治療を使い続けることとなり、丸二日苦しんだのだが、最終的にはどうにか生き残った。
そして病み上がりの日に久しぶりに学校に行くと、小野寺から今日はいつものハンバーガーショップではなくご飯が美味しいカフェに行かないかと誘われたのだ。オムライスが有名らしい。
「あ、あった。あれじゃない?」
見るとこじんまりした外装のお店が立っていた。店先には植木がいくつか置かれており、地味ではあるが清潔感があった。
しかしメニュー看板を見ると、「メイド居ます」とポップなロゴで書かれている。
「メイド喫茶なの?」
「おかしいな。そんな話は聞いてないけど」
二人で首を傾げながら恐る恐る扉を開ける。
するといきなり、明るい声であいさつをされた。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「え?」
「え?」
「ん?」
まず玲於奈が驚き、続いて店の従業員が硬直し、そんな二人に反応して小野寺が疑問の声を上げた形だ。
しばらく見つめ合った後、玲於奈は必死に笑いをこらえて尋ねてみた。
「何してんの?」
フリルの付いた白と黒のエプロンに、レース付きのカチューシャやスリーブまでしっかりと付けている巴は、笑顔を崩さずに言った。
「お帰りくださいませ、ご主人様」
「いや、帰らねえよ。オムライス食べに来たんだもん」
「お帰りくださいませ、ご主人様」
「めっちゃ帰らせようとしてくる。帰らねえって。毒から立ち直るのでボロボロになった身体を、美味しいオムライスで癒しに来たんだから。あー、疲れた。どこかで休みたいなー。ちょうどいいカフェとかがあればなー」
「チッ、もう一週間くらい寝込んでればよかったのに」
「え、なに。二人は知り合いなの?」
状況を掴めていない小野寺が尋ねた。
「ああ、このメイドさんが春原巴なんだよ」
「あー……、なるほどー」
小野寺が巴をまじまじと眺めた。これが親友の理想の彼女(仮)かという想いを込めていることを二人は知らない。
「どちら様?」
「友達の小野寺」
「ああ、なるほど。うちの玲於奈がいつもお世話になって」
「保護者か!」
「いえいえ、こちらこそ」
玲於奈のツッコミを無視して巴と小野寺はにこやかに挨拶を交わした。
「チッ、それではご注文をどうぞ」
その後急に雑になった態度で巴は二人を席に案内すると、注文を尋ねた。
「じゃあ、スマイル一つ」
「品切れです。って言うかメニューに書いてないし」
「ええー!? おいてないんですかー?」
「もうやっぱ帰れよー」
じゃれ合う二人を見て小野寺は尋ねた。
「二人は付き合ってるの?」
「「付き合ってない!」」
玲於奈と巴は声をそろえて答えた。
少なくとも息はぴったりなようだ。
これにて一旦完結です。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!




