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対決!

 八回目のDCW。入った直後、巴は直観した。

 何もかもあの時と同じだ。

 風の冷たさも、あの時に見た落ち葉を付けた木も。


 急に息が苦しくなり、耳鳴りのように美玖が声を上げ始めた。

 条件反射でイヤホンを付ける。


(ただ似ているだけかもしれない……)


 自分に言い聞かせてみたが、そうでないことも自分が一番知っていた。身体がこの風を覚えている。

 ここはナエドコのステージだ。

 心の均衡が崩れていくのと同時に、気持ちが昂っていくのを感じた。


 殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。


 もう一人の自分がわめきたてる。

 彼女はその殺意を必死に理性で押さえつけた。


 この時のためにずっと計画を練っていた。まず騙されてナエドコの下にまで行かなければならず、そのためには分体が迎えに来ても切りかかってはいけない。臆病なナエドコがそれを見て逃げ出すかもしれないからだ。

 計画通りに進めるには冷静でいなければならない。


 玲於奈が来ると、予想していた通り喋らない分体がやって来た。ナエドコが生み出すこの分体は上級荒神程度の強さはあるはずだったが、玲於奈は軽々とそれを倒して見せた。

 本当に強くなったのだと実感する。彼と話したおかげで少しだけ気分が落ち着いた。


 だが、最初から玲於奈は連れて行かないつもりだった。

 非合理的な判断だ。今の彼なら守る必要もない。事前に全てを教えておけば罠に騙されることも無いだろう。二人で取り掛かった方が絶対的に勝率は上がる。

 それでも連れて行きたくなかった。

 一人でやりたかった。


 ナエドコを前にした時を考えると、自分が死なない自信はあっても一緒にいる誰かは死んでしまうのではないかと恐ろしかった。



 しばらくすると二人組がやって来た。ちゃらちゃらとした赤髪の男とハゲだ。

 ナエドコはあれからかなり分体を人間に近づけることに成功したらしい。名前もより人間らしく、赤城と黒澤と名乗っていた。

 パターン化されているのだろう。前回と全く同じようにこれは合同ミッションであると説明している。

 玲於奈があっさりと騙されて握手まで交わしている時は苛々した。そしてそのまま彼は二人について行きそうになる。

 彼女は力任せに玲於奈を後ろに引き倒した。


「何するんだよ!」


 ショックを受けて声を張り上げる彼のことを刀で脅す。残切は使わなかった。技術には自信があったが、何よりも脳内が残虐性で満たされており、他人のことを気遣う余裕が無かった。


「どういうつもりだよ……」


 初めて玲於奈が怒りを見せる。

 しかし彼女はここで止まらなかった。


「お前はここに残れ」

「お前って言うんじゃねえよ。だいたいなんでそんなこと言われなきゃいけねえんだよ」

「DCWはレベルの高いスキルがあればいいってわけでもない。それを使う技術が本人に必要なんだよ。今までは他に人が居なかったから一緒にいたけど、もうその必要も無いし」


 適当に考えた理由を述べると、さらに彼は噛みついてきた。


「なんだよ、それ。俺が弱いって言うつもりかよ。それで新しい仲間ができたらお払い箱かよ」


 それを振り払うように追い打ちをかける。


「そうだよ。なんだったらわたしと今ここでやろうか? お前がどれだけ軟弱な奴か教えてやるよ」

「上等だッ……!」


 お互いが引けなくなったところで赤毛が割って入ってきた。


「まあまあまあ、落ち着いて。急にどうしたの、二人とも。仲良くしてくれって。みんなで一緒に行動しようじゃないか」


 良識がある素振りに腹が立つ。こいつがこの状況の根源ではないか。

 玲於奈とは違い、こいつには当たったっていいという気持ちで刀を振る。残念ながら上手く躱され、刀は当たらなかったが、相手はひどく驚いたようだった。

 一瞬の膠着の後に赤城が提案した。


「分かった。じゃあ、秋山君は置いて行く。ただ一人で放り出すわけにもいかないから、俺も一緒に残る。君は黒澤と一緒に僕たちのチームメイトのところへ行ってくれ。二チームに別れて行動するんだ。それでいいかな?」


 監視役だろうか。

 彼女は一瞬、玲於奈を敵と二人きりにする危険度を考えた。

 これだけ流暢に会話ができるというのはナエドコにとって貴重な存在だろう。レアが片言であったことや、後ろのハゲは一切話さないことからもそれが垣間見える。そしてその分、力も強いのだろう。その強さは先ほどの上級荒神以上かもしれない。

 しかし彼女は放っておくことにした。


「……好きにしたら」


 玲於奈ならきっと大丈夫だ。それにそうしておけばナエドコを相手にする時、自分の負担を減る。

 彼女は背中に非難めいた視線を受けながら、ナエドコのところに向かった。


(あとで謝らなきゃな……)




 そして現在。巴は念願の宿敵と対峙していた。


「そうか、お前はあの時の……。名前は確か春原巴といったか」


 教えてもいないのに名前を当てたのは美玖の記憶を探ったのだろう。


「なるほど、美玖の敵討ちというわけか」

「お前が美玖の名前を気安く呼ぶんじゃねえよ」

「シハハハハ、そうカリカリするな。久しぶりの再会ではないか」


 ナエドコは余裕の笑みを浮かべており、それが非常に腹立たしかった。


「わしはまた貴様に会えて嬉しく思っておるぞ。あの時食い損ねたエサがまた戻って来たからな」

「だったら」


 刀を振りかぶる。


「食ってみろよ!」


 巴は渾身の紅一刃炎を放った。



次から玲於奈の話に戻ります。


評価・コメント等お待ちしておりますm(__)m

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