アイ隊員、『歌上手のコマドリ』さんを発見する?
今日の『逆さ虹の森』の担当は、アイ隊員です。
今日も楽しいことを求めながらも、しっかり見回り中です。すると、小高い丘の木の枝でなにやら難しい顔をしながら頭をひねっている『コマドリ』を発見しました。
ちゅん、ちゅん、ちゅん
パタパタパタ
「……こんにちは、コマドリさん。こんな所で難しい顔をしてどうしたの?」
「……え? あ、あなたは誰? どうして私に話しかけてきたの?」
「え? ああ、そうだったわね。自己紹介がまだだったわ。こんにちは。初めまして。私の名前は『アイ』。この森の先にある岩山で暮らしている『ちゅん鳥戦隊』の一員よ。よろしくね?」
コマドリさんの様子を気きかけながらアイ隊員はいつものように気軽にあいさつをしました。そんな誰にでも気軽に話せる所がアイ隊員の良い所?
「あら、アイさんって言うのね? いい名前だわ。ステキよ。私は『コマドリ』さんって呼ばれてるわ。私の方こそよろしくね」
コマドリさんも自分の興味のある事にしか頭がいかないようで、ちゅん鳥戦隊の事などどうでもよく、アイ隊員の名前が気に入ったようです。
「あら、嬉しい事を言ってくれるのね。この名前は私の『ご主人様』がつけてくれた名前なの。ステキでしょ! ふふふ」
もうごきげんのアイ隊員。ちょろ過ぎます。さすが気分屋さん。ちゅん鳥戦隊の弱点は『名前を褒められる』事なのかもしれません? いったい何しにやってきたのでしょう。忘れてませんよね?
「あら、それは良いご主人様なのね。そんなステキな名前を考えてくれるなんて何だか羨ましいわ。ふふふ」
更に追加の褒め言葉。もうこれは褒め殺しです? 大好きなご主人様まで褒めてもらって、アイ隊員はもうメロメロです。恐るべしコマドリさん。
「も、もう! そんなに褒められても何にも出ないわよ? もうもうもう! そうでしょ! この名前もステキだけど、『ご主人様』ももっとステキなのよ! きゃー!」
もうダメです。アイ隊員。すっかり任務の事を忘れて1人で盛り上がってます。弱点2『ご主人様を褒める』。これも間違いなさそうです。
「そ、そうなのね。それは何よりだわ。良かったじゃない。本当に羨ましく思えるわ。そこまで言ってもらえるなんて、あなたのご主人様も幸せだと思うわよ?」
もうどうするつもりなのでしょうか。コマドリさん。これ以上アイ隊員を褒めると、羽根をこすり過ぎてボロボロになってしまいそうです。褒め殺しも程々にしましょうね?
「むふふ~。そうかしら? 本当に優しい『ご主人様』だから、私達の方も幸せなのよ? いいでしょう? うふふふふ」
~~しばらくお待ち下さい~~
ようやく落ち着いたアイ隊員。自分の任務を思い出したようです。
「そ、そうだったわ。私ったら嬉し過ぎて大事なコトを忘れてたわ。ふー。私は、この森を見回っている時に難しそうな顔をしたコマドリさんを発見したからやってきたのよ?
何か変化があれば飛びつけて確認する。それが私達ちゅん鳥戦隊の任務なの!」 バサッ!
ちょっと格好つけて右手を左斜め前に挙げてポーズを決めるアイ隊員。本人は心から格好いいと思っています。さっきまでのデレデレ姿とは凄い違いです。こっちも驚きです。
「そ、そうなのね? それも大変そうな任務ね? でも私には無理かしら。まったく興味がないもの。そういうの。でも嬉しいわ。私の事を心配してきてくれたのね?」
満足そうにポーズを決めるアイ隊員を見て、そこには何も触れずに話を進めるコマドリさん。大人です。
「そうよ? 何かあったのならできる範囲で協力するわ。『ご主人様』の事を分かってくれる人に悪い人はいないから。任せてちょうだい!」
出ました。必殺『いいコマドリ』認定です。この先が思いやられます。
アイ隊員のごきげんな対応に少し押されながらも、コマドリさんも気を許して自分の今抱えている問題を説明します。コマドリさんが本当にいい人で良かったね。
「じゃあせっかくだから聞いてもらおうかしら? 実はね? 私は、歌を歌うのが好きなんだけど、なかなか大きな声が出せないの。もっと遠くに歌声を届けたいのにできないの。それで悩んでいたのよ? 分かるかしら?」
コテン
何を言っているんだとばかりに頭を傾けるアイ隊員。
「ええ、もちろん分かるわよ? 声を遠くに届けたいのよね? それはこんな風にでもいいのかしら?」
フワッ!! 》》》ラララ~~~~!!》》》
風魔法の力を使って声を遠くに運んでみせるアイ隊員。凄いです。そんな事までできたのですね。感動です。
「…………す、凄いじゃないの!! あなたそんな事ができるの!! それはどうやるの!! 私にも教えてよ!! お願いよぉ!!! はあはあはあ…………」
あまりの驚きに、一瞬言葉を失いながらもすぐに我に返り、何とかしてその方法を教えてもらおうとしたコマドリさん。興奮し過ぎです。お疲れ様です。
コテン
何を言っているんだとばかりに、またもや今度はさっきとは反対方向に頭を傾けるアイ隊員。
「やっと落ち着いたわね。お疲れ様? それだけ大きな声が出せるのなら何の問題もないと思うわよ? 今自分が出した声の大きさが分かるかしら?」
「…………はっ!! そ、そうなのね!! こうやって声を出せば、大きな声が出せるのね!! あ!! あ!! あ!!」
あまりの驚きに、またもや一瞬言葉を失いながらもすぐに我に返り、今出したのと同じようにして声を出して確認するコマドリさん。もうコツをつかんだの? 早過ぎます。
「ふふふ。さっきみたいに興奮しなくても、ちゃんと大きな声が出せるじゃない? やるわね? コマドリさん」
近くで大声を出され過ぎて実は耳が痛かったアイ隊員。それでもコマドリさんの喜びに水を差すような事は言いません。アイ隊員も大人な対応です?
「あ、ありがとう! アイさん! あなたのお陰で何とかなりそうな気がするわ! もちろん練習も必要そうだからすぐにできるわけじゃないと思うけど。これで私の歌声をもっと遠くに届けられるようになると思うわ! ふふふふふ」
素直に感謝の気持ちを伝えるコマドリさん。やっぱりいい人みたいで良かったね。
「そう? それは何よりだわ。私もまた聴きにくるから、頑張って練習してね? 分かってると思うけど何にでも特訓や検証は大事よ? …………あら? もう聞いてないわね? やれやれだわ? ふふふ」
せっかくいい話で締めくくろうとしたアイ隊員。コマドリさんはもう別の事を考え始めているようです。本当、やれやれですね。
「ふっふっふっ。こうやってお腹に力を入れてやれば良かったのね? でもこれを続けてやるのも難しそうね? 私の体力がもつかしら? きっとこれも練習が必要なのね? 私も頑張らないと。ふふふ…………」
歌声と言っても、ただ大声を出せば良いというわけではありません。声質、音程、音域、発音、リズム感、表現力、聞き手がどう受け止めるか……
挙げていったら切りがありません? だから、コマドリさんの練習も大変な日々が続いていく事でしょう。そう。もしかしたら一生続く練習なのかもしれません。『芸』とはそう言うものです。
そんな事も知らずに? コマドリさんの役に立てたと判断したアイ隊員はいつものように気軽に、でも今は凄くごきげんな満足顔であいさつをして、さっそうと飛び去っていくのでした。
「じゃあまたね、コマドリさん! ありがとう!」 パタパタパタパタ
その後、毎日取っ替え引っ替え現れるちゅん鳥戦隊によって、コマドリさんの『歌声』は少しずつ遠くに、キレイに届けられるように改善されていくのが目撃されるのでした。あ。目じゃなくて耳から聞こえているのだから耳撃でした。
小さな事からこつこつと? 小さな小鳥のちゅん鳥戦隊だから上手くいったのでしょうか?
そうです。それもあるかもしれませんが、ごきげんなアイ隊員の『ご主人様愛』は、時には凄い力を発揮するのです? アイ隊員だけに、愛がある?
…………冷たい空気が流れた気がします…………
ま、負けませんよ? 他者を思いやれる心。自分が認めた他者を思いやれる他者。そうやって繋がっていければ、人類みな『お友達』です? そんな気持ちがアイ隊員にあったのかどうかは分かりませんが?
ぱっと見、ちゅん鳥達の違いが分からずに、みんなアイ隊員だと思って接していたコマドリさん。声の違いですぐに気づいたみたいです。さすがです。
ちゅん鳥戦隊達もちゅん鳥戦隊達で、そんな事は気にせずに接していたのも凄いと思います。ただでさえ『鳥』繋がりで親近感があるのに、任務の見回り中にステキな歌声まで届けてくれるのです。
それに加えて『ご主人様を褒め』てくれたコマドリさんは、『いいコマドリさん』認定は当然で『お友達』以上『恋人』未満の存在です?
ちゅん鳥戦隊はみんな既にカップルですからね? 『アカとアズキ』『アオとアイ』のカップルです。驚きの新事実? いえいえ、周知の既成事実です。仲間の間では?
細かい事は気にしない。みんなそれぞれに楽しい時間が過ごせればそれでいいんです。平和な時間ってそんなささいなものです。日常生活の中のふとした一時にでも、それを感じられるか感じられないか。それはあなたの心の持ち方次第です!
今日もまた、ちゅん鳥戦隊はそれぞれにあった出来事を報告し合ってから安らかに眠るのでした。これも『ちゅん鳥戦隊のルール』の1つだからです。情報の共有は大切ですからね。
これにて任務完了です。おやすみなさい。
…………つづく
次回『アカ隊員、お人好しのキツネさんを発見する?』
お楽しみに!




