四十八万円目。VS一②
~十視点~
太郎さんの試合が始まった。相手は元居た世界の太郎。勇者の体を借りている太郎さんとは別人で、日本人の太郎は冴えない顔をしている。
勇者の姿の太郎さんと一が変身した太郎。二人がぶつかり合い、試合はヒートアップしていく。
闘技場の観客席から見守り、情勢を判断する。
一が有利だった。
『画竜点睛を知る』
私の能力が発動し、太郎さんが負けているイメージが浮かぶ。
「あるじ様」
「なんじゃ?」
「このままでは太郎さんが負けてしまいます」
「そかのう」
彼女は我があるじ、のじゃロリ様。
最初から太郎さんの傍にいた名前のない天使様。
歌子さんに名無しがついていたように、あるじ様は、課金一万円目からずっと太郎さんのお傍にいた。
天使は下界の人間に気を使い、喋らないようにしている。
あるじ様は、このバトロワの参加者であり、元日本人であり、そして、私たちの生みの親。
チート能力は合成人間を作る力。
日本に存在する概念と言葉を組み合わせて合成人間を作る。私のように、麻雀+画竜点睛を欠く。みたいに。
人間界に存在する天使の造った兵器アーベントはエピックたちが作ったもの。のじゃロリ様はあくまで私たちの生みの親で、それ以上の介入はせず、我々合成人間の独断に任せている。
多少エピックは独断専行している部分があるが、彼女が一から信仰を集めている部分も納得できる。
カリスマ性があるのだ。エピックは。
能力も協力で時間に関与できる力。金を払えば時を止めることができる。時間停止、時間遡航、何でもありだ。
「で、太郎はどうやって負けるのじゃ?」
あるじ様はポップコーンとコーラを口に含みながら、聞いてくる。
「はい。アーベントに変身した一に負けます」
「ほほう」
視線を一身に集める太郎さんは戦況を打開、苦戦する一はチート能力を使う。
一の変身した太郎はレベルキャップの開放を使い、レベルをMaxにする。
これぞ日本人に与えられたチート。レベルの上限Max。名無しもあるじ様もできるのだが、人間サイドは二人ともできない。
商人の試験とは名ばかりに、名無しもあるじ様も、歌子さんや太郎さんに教えたがっているチート。
40レベルの上限がなくなりMaxになるとすべてのステータスがSランクになる。どうしても、修得してほしい。
「十よ」
「はい?」
「一は変身を一回までと言うておった。反則なのじゃ」
「ええ、彼女は反則を犯します」
私の思い浮かべた未来で一は負けそうになり、禁を破り、太郎さんのトラウマのアーベントに変身する。そして、殺しにかかる。もちろん本当に殺してはいけないのでエピックが止めに入り、事なきを得るのだが、最終的に太郎さんの負けになる。なぜなら、
「なぜなら、太郎さんはチート能力を修得できなかったからです」
「ほほう。どうすればいいのじゃ?」
『画竜点睛を知る』未来改変が起きる。
「――応援してください。『太郎もレベルMaxになれる』と」
「のじゃ!」
あるじ様は頬張ったポップコーンを飲みこみ、体を前に出して太郎さんに叫んだ。
「太郎もレベルMaxになれるのじゃ!」
私はあるじ様に伝える。
「改変完了です。お疲れ様です」
「のじゃのじゃ」




