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ふたりは其の妖祓と申し候―永遠の妖狐―  作者: つゆのあめ/梅野歩
【参章】夜の静けさに攫われて
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<八>若き妖祓の春休み(肆)





(ほん、とうに入院しているのか。ショウは)




 近所では大手と言われている総合病院に到着した朔夜と飛鳥は雪之介の先導により、三階の307号室前に立った。

 病人の表札を確認するとそこには確かに【南条翔】と見知った名が刻まれている。此処は相部屋らしく、他にも名が刻めるように下三つに空白ができている。四人部屋のようだ。


「失礼します」


 雪之介が挨拶をして扉を引くと、四つのベッドが視界に飛び込んできた。 内、三つは空っぽ。日当たりの良い窓辺のベッドのみ占領されている。傍らのスツールに腰を開けているのは幼馴染の母親だった。


 自分達の姿を見るや否や力なく綻んでくる。


「ああ。雪之介くんじゃない。それに朔夜くんに、飛鳥ちゃんまで。来てくれたのね」


 どうやら雪之介は翔の母親と顔見知りらしい。今日も来てくれてありがとうと微笑する彼女の表情は蒼白している。疲労困憊は目に見えていた。


 丁寧に挨拶をする雪之介は、相手を気遣うように病人の容態を尋ねる。母親はかぶりを振り、まったく目覚めないのだと涙声になった。

 朔夜がそっとベッドを覗き込むと、そこには見知った顔が瞼を下ろしている。胸上まで毛布が掛けられている寝巻き姿の幼馴染を目にした瞬間、朔夜と飛鳥は“彼”の異変に気付いたが、それを口に出すことなかった。


(これはショウ、じゃない。形代だ)


 形代とは陰陽師や神主が祈祷の時に、よく使う代物で謂わば身代わり人形だ。

 一般人の目には人に見えても霊力のある人間の目を誤魔化すことはできない。翔の分身人形を目にした朔夜は飛鳥に視線を配る。硬い表情で相槌を打つ相棒により確信を得る。病人は本人でない。紙人形だ、と。

 しかし形代は本人の分身。意識障害による昏睡状態は、本体が何らかの危険信号を送っている証拠だ。

 幼馴染が形代を使用したとは思えないが、こうしてすり替わっている現実には疑問が浮かぶ。翔のスマートフォンを持っている雪之介といい、形代といい、謎が謎を呼ぶ。


「朔夜くんと飛鳥ちゃんが来てくれるなんて思わなかったわ。連絡は殆ど誰にもしていなかったから」


 雪之介が事を知っていた理由は、彼が自宅に連絡をした際、タイミングよく翔の母親が出たからだという。

 どうやら翔の母は雪之介と翔が友人関係であることを認知しているようだ。彼女の疑問に雪之介が答える。自分が連絡をした、と。


「翔くんから、今日は彼等と花見をする約束があると聞いていたので」


「そうなの。ごめんなさいね、朔夜くん。飛鳥ちゃん。折角約束してくれたのに……」


  涙ぐむ母親に気遣いつつ、彼に何が起きたのだと飛鳥が恐々質問する。

 分からないのだと母親は返事した。三日前の夕方から眠りに就き、それから起きないのだと鼻を啜る。


「翔。最近おかしかったの」


 朝にはめっぽう強い子なのに、朝になっても起きることができず登校ぎりぎりまで布団に潜っていた。

 春休みに入ると昼過ぎまで寝ることが多くなり、大層呆れていたと母親は言う。学校から授業中の居眠りをこっそり聞いていたので夜な夜なゲームをして遊んでいるのでは、と部屋を何度も覗き込んだのだが、不可解なことに息子はベッドで寝息を立てている。息子は一日中眠っているようなのだ。

 少し前まで夜遊びをしていたが、それも最近はなくなり、安心していた矢先のこの出来事。あの異常な眠り方は体の不調を訴えるものに違いなかったと母親は悔やんだ。SOS信号に気付けなかったのだと、目元を人差し指で押さえる。


「ちゃんと向き合っていれば、息子の体調不良にだって気付けたのに。私ったら怒ってばかりで」


 「おばちゃん」朔夜は眉を下げる。

 気丈に振る舞っているが精神的に参っているのだろう。大事な一人息子すら守れない親が何処にいるのだと彼女は嘆きを口にしていた。他に子供がいない分、その悲しみは底知れないのだろう。


 仰向けになって眠っている病人がうめき声を上げる。

 心臓を飛び上がらせる朔夜と飛鳥を余所に、「翔?」起きたの? ベッドに駆け寄った母親が息子の顔を覗き込んだ。病人は眠ったままうわ言を漏らす。「や、くそく」だから行かなきゃ。行かなきゃ……と。

 次いで、出して。ここから出して。苦痛を浮かべる翔がうわ言を繰り返し、腕を持ち上げ毛布を握った。うんうん唸り、額に汗を滲ませる彼の両手首には包帯が巻かれている。聞けば両手足首が火傷したように腫れ上がっているらしい。

 時々こうしてうわ言を漏らしては苦痛を述べるのだと彼の母親は、落ち着きを取り戻した息子の腕を毛布に戻してやる。


「翔はとても怖い夢を見ているのね。口にするうわ言は苦しみばかり。早く目覚めさせてあげたいのだけれど……でも朔夜くんや飛鳥ちゃんの約束は心待ちにしていたのね。意識がない状態でも約束を口にするなんて、相変わらず二人が大好きなんだから」


 それは昔から変わらない一面だと苦笑し、母親は再三再四、見舞いに来てくれた朔夜達に礼を告げた。

 きっとすぐに目覚める。明日には退院して自宅で療養を始めるから、ちょいちょい見舞いにも来てやって欲しい。大好きな友人達が何度も足を運べば息子も目覚めることだろう。そしたらまた仲良くしてやって欲しいと頼む母親は自分に言い聞かせているようにも見えた。


 数分間、翔の母親と会話した三人は病室を退室することにした。長居しても向こうの気に気を遣わせるだけだ。

 ベッドから離れると入れ違いで翔の父親が入って来る。仕事を早めに切り上げてきたのだろう。背広を着たまま早足で病室に入って来る彼は、訪問者達に軽く挨拶をすると妻の下へ。


 息子の容態を尋ねる父親に母親はかぶりを振り、昨日と変わらない旨を伝えていた。

 落胆の色を見せる彼の父親は淡い期待を寄せていたのだろう。両膝を折るとうわ言を漏らす息子の頭を撫で、「傍にいるからな」だから早く目を覚めて欲しい、毛布の下から右の手を探る。それを握りしめて、手の甲を額に当てた。

 涙を誘われたのだろう。母親が嗚咽を漏らし、「原因も分からないなんて」両手で顔を隠している。



「どうしてこんなことに。翔、お願い、ねえお願いだから」



 お邪魔虫はとっとと退散した方が良いだろう。


 静かに病室を後にした三人は建物を出るまで誰一人口を開かない。

 ようやく口が利けるようになったのは、病院を出て近場のコインパーキングを過ぎろうとした時だった。それまで口を閉ざしていた朔夜が、「ショウに何が起きているんだい」と雪之介に問い掛ける。

 長話になるだろうと必然的にコインパーキングに足先を向けた妖の後を追いながら、朔夜は話を続けた。


「あれはショウじゃない。見た目はショウでも、僕達の目には誤魔化すことはできない……ベッドに寝ていたのは形代だ」


「そうだね、あれは翔くんじゃない」


  足を止めて暮れた空を仰ぐ雪之介に何故幼馴染が形代と摩り替わっているのかと尋ねた。それに対して妖は何も答えない。

 いい加減に黙秘はやめてくれと顔を歪め、焦燥感に駆られる朔夜が声音を張ると背を向けて空を仰いでいた妖が視線を此方に流してくる。


「僕が今、言えることはひとつ。あの形代は翔くん自身で、本体もああやって苦しんでいるということだよ。早くなんとかしてあげたいけど、僕には手も足も出ない」


 心配で仕方がないと吐露する妖の言葉は何一つ、答えになっていない。

 眼光を鋭くする朔夜を余所に、「翔くんを救いたい。だけど僕じゃ救えない」友達なのに何もできない。それが悔しいのだと雪童子。本当に友人なのか。瞠目する二人に雪之介は寂しげに笑う。続いて彼はこう疑問を投げた。妖と人間が友人関係ではダメなのか、と。


「翔くんは僕の大切な友達だよ。付き合いこそ浅いけど、彼とは意気投合した仲。そして叶わぬ願いを持つ者同士。翔くんから君達のことはよく聞いていたよ。彼が大切にしたい人達だということも。そして大切だから離れたくなくて、大切だから離れたい存在だということも」


 本当に君達は思われているのだと雪之介。

 交互に指をさすと、「翔くんが大事かい?」今更にして意味深長な質問を投げた。

 そういうことを聞きたいのではない。聞かれたいのではない。幼馴染の身に何が起きているのかを知りたいのだ。妖は真相を知っているだろう。目が物語っている。あまり焦らすようだと強硬手段に出ると朔夜が脅しを口にした。

 右から左に受け流す雪之介は、そういう脅迫は良くないと指摘し、自分が案内できるのは此処までだと二人に告げた。


 これから先は二人でどうにかしてもらわないといけない領域だと肩を竦める。


「翔くんのことは君達に任せよう。翔くんを救えるのは君達しかいないから。僕はもう一人、救いたい友人がいる。君達に近付いた一つの理由は、その友人の情報を得たいから」


「お前の友人?」


 一体何の話だと朔夜が吐き捨てる。

 お前の友人なんて知らない、そう毒づくと、「白狐を解放して」彼は僕の大切な友人だと雪之介が目を細めた。


「妖祓の下に白狐がいることは分かっているんだ。君達の家にいることも把握している。白狐は今、何処でどうしているんだい?」


 なるほど、雪之介はあの妖狐の情報を得たいようだ。

  答える義理はないと素っ気無く返せば、「彼は人間を愛している」手荒な仕打ちは彼を傷付けるだけだと吐き捨て、一刻も早く白狐を解放するように忠告してきた。白狐が捕らえられたことは既に赤狐の耳にも入っている。赤狐も人に対して手荒な真似はしたくない。

 しかし、同胞が人の手に落ちたことをのうのうと許すような頭領でもない。 虎視眈々と白狐の奪還を狙っている。


「どうして白狐を捕縛したの?」


 まさか宝珠の御魂を狙ってのことじゃないだろうね? だとしたら、一妖の僕としても見過ごせないと雪之介は下唇を噛み締めた。

 先ほどまで飄々としていた態度が崩れ、焦燥感を露骨に放っている。彼も自分達と同じで焦っているのだろう。幾度も白狐を解放するように告げる雪童子に、それはできないと朔夜は冷たく返した。

  今の白狐は気が狂ったように暴れている。鬼門の祠の瘴気に当てられたせいなのか、目覚める度に結界を破ろうと身を投げているのだ。

  冷静を欠いた白狐をどうして解放できるのか? 相手に尋ねると、初めて雪之介が声音を張った。


「彼は気なんて狂っていない! パニックになっているんだ! ワケも分からず、妖祓に捕縛されて結界に閉じ込められてしまった。その状況に恐怖して暴れているんだよ! 少し考えれば分かることでしょう? ……瘴気に当てられた? 白狐はちょっとやそっとじゃ気狂いなんてしない。宝珠の御魂を持つ妖だからね」


 暴れているのは混乱しているからだと雪之介は顔を顰めた。

  新たな南の神主が混乱し、状況に恐怖している? それでよく南の頭領が務まるものだと朔夜が毒言すると、「僕等にだって心があるんだ!」恐怖だって抱くし、混乱だってすると妖は食い下がる。


「どうも君は妖を能無しの化け物と見ているようだけど、君と僕。何が違うの? 同じ手足があって、目と口があって、こうやって対面して会話ができる。僕は妖力を、君は霊力を持っている。共通して友人を心配する心を持っている……ね、一緒でしょ? 白狐も同じだよ。容は人でなくとも心を持っている。人を愛したり、妖を愛しんだりする心がある」


 低俗な妖が妖祓の手を煩わせているようだけど、人の世界にだってそういう輩はいる。反対に善意を持つ妖がいる。善意を持つ人がいるように。

 「白狐は僕と同い年だ」閉じ込められたらパニックになっても仕方がない齢だと雪之介は目を伏せる。

 今、彼がどうしているか、心身傷付いていないか、とても心配なのだと雪童子。それだけ大切な友人なのだと言い切り、君達の幼馴染と同じ立ち位置にいるのだと眼光を鋭くする。白狐を解放して欲しい。それが自分の望みであり、願いだと雪之介。


「翔くんを想う君達と同じように、僕も白狐を想っている。白狐を解放して……だけど君達にそんな力はなさそうだ」


 妖祓の様子を見る限り、簡単にはできそうにないことも承知している。


「だからせめて」


 白狐にこれを呑ませて欲しい、学ランのポケットから紺の巾着袋を取り出し、此方に投げてくる。

 大慌てで飛鳥がキャッチした。中身を紐解けば、ビー玉ほどの玉が三粒入っている。ガムボールのようなそれは黒光り帯びていた。飛鳥がそれを取り出し、「これは?」と雪之介に尋ねる。

 「薬だよ」今の白狐は妖力が異常なまでに乱れている。それを呑めばきっと妖力も安定し、自分で操ることができるだろう。


「白狐がどういう状況に置かれているのかは自分の手で突き止めるよ。そして分かり次第、僕は、僕達は彼を迎えに行く。それまでは君達が白狐を看てもらいたい。僕の条件を呑んでくれたら、このスマートフォンは君達に託す。このスマホはきっと翔くんに辿り着く鍵になると思う」


 幼馴染の真相は教えられない。けれど情報を与えることは可能だと雪童子。

 真相に辿り着くのは自分達の手でやれと言っているのだ。随分と舐められた条件を突きつけられたものだが、ここで雪之介の条件を突っぱねても先に得るものはないだろう。


「それを手にすれば本当にショウのことが分かるのかい?」


「うん。ただし、真実はきっと残酷だよ。君達の想像を絶するほどに。真実を知って、それでもなお翔くんを友人だと思えるか、僕には不安が残るけど」


 相手の戯言には目を伏せるとして……さてどうするべきか。思案に耽る朔夜を待たず、「分かった」私がその薬を呑ませると相棒が返事した。驚きかえってしまう。飛鳥に視線を留めると、彼女は助けてもらった借りを返したいだけだと唇を尖らせる。

 不本意ながらも白狐には助けてもらった。白狐を解放することはできないが、薬を呑ませることくらいなら容易いと飛鳥。


 それに翔の情報も欲しい。自分は雪之介の条件を呑むと告げ、巾着袋の口をきつく縛った。

 だからスマートフォンを渡して欲しい。彼女が手を差し出すと、雪之介はマジマジと飛鳥を観察する。嘘偽りのない瞳に思うことがあったようで、ゆっくりと彼女に歩み、持っていたスマートフォンを彼女の掌に置いた。

 冷え切ったスマートフォンに飛鳥が頓狂な声を上げてしまう。

 微かに雪之介が頬を崩し、眼鏡のブリッジを押した。「僕は雪の妖怪」スマホが冷えきってしまったのはご了承願いたいと肩を竦めてくる。


「必ず白狐に薬を呑ませてね。信じているから。ああ、それともう一つだけ。情報を得るなら画像フォルダを開けるといいよ。そこに彼の隠された真実が入っているから」


  数歩、後退すると雪之介はゆるやかに妖力を放出し始める。

 自分を軸に寒々とした風を吹かせる彼は氷の結晶を生むと一気にそれを雪に変え、小さな吹雪の嵐を呼んだ。思わず、目を瞑る二人の耳元に雪童子の声が響く。



“どうか彼を傷付けないで。きっと君達が傷付くことになるから。どうか妖を見くびらないで。妖も人と同じ喜怒哀楽を宿した、哀れで不器用な生き物だから。――真相を掴んでも、変わらぬ君達でいますように”



 体の芯まで凍りそうな風がふっ、と止む。

 恐々目を開けるとそこには静まり返ったコインパーキングが飛び込むばかり。雪之介の姿は消えていた。吹雪にのって去ってしまったようだ。さすがは雪の妖怪である。


 結局翔と形代の関係は教えてくれなかった。

 本体の居場所くらい教えてくれても良いのに、不親切な妖だと朔夜は不機嫌に鼻を鳴らす。

 視界の端に眩しい光が刺さった。早速飛鳥が翔のスマホを起動させたようだ。いそいそと画面をタッチする飛鳥は、自分の携帯はガラケーだからイマイチ使い方が分からないと眉を下げる。それは朔夜も同じだが父がスマホを使っているため、飛鳥よりは知識がある。彼女の手からスマホを取り、適当に画面をタッチする。


 まずはメールを開いてみる。

 そこには自分達が先ほど送ったメールが、その下には【錦雪之介】のメールがずらっと羅列している。友人とは本当のようだ。大層仲が良いようで、内容を読めば泊まりのことや遊びの予定を立てる文面が飛び込んでくる。

 朔夜はついつい面白くないと思ってしまった。休みの期間は必ずといっていいほど自分達に執着していたのに。“自分達の存在”を忘れているかのように、雪之介とメールを頻繁にやり取りしていた。


 メールを閉じる。ここに得られる情報は無さそうだ。

 次に雪之介が指定した画像フォルダを開けてみることにした。驚くべきことにいくつものフォルダが羅列されている。その中でも【ギンコ】と表記されているアルバムは多い。試しに【ギンコ①】と表記されているアルバムを開く。

  目を瞠ってしまった。そこにはあの夜、白狐を庇った銀狐が写っていたのだから。欠伸を噛み締めている銀狐の画像をスライドさせれば、カメラを覗き込む銀狐が、更にスライドさせると自分にカメラを合わせ銀狐と共に写る翔の姿が。

 どの画像も銀狐で一杯である。どうして幼馴染が銀の妖狐と共に……それだけではない。【みんな①】というファイルを開くと欠伸をする猫又やブイサインを作る雪童子、見知らぬ巫女、甚平姿ののっぺらぼうの姿、からかさお化けにぬらりひょん等が映っている。


 写メにはアプリで加工したものもあった。

 半開きとなっている眼をこちらに向けているキジ三毛猫。その猫を抱いて照れている巫女、彼女の足元にいる銀狐の写メ。順に【猫又ばあちゃん】【巫女キツネ】【アイドルキツネ】と文字が入力され、面白おかしげに写メを工夫していた。

 翔は彼等を妖と認知している。いつも下校を共にしていた猫のことですら、猫又と理解している。


 おかしい。おかし過ぎる。幼馴染は一般人だ。なのに猫又、妖狐、雪童子と続け様に妖と繋がりを得ているなんて。


 朔夜は二月からの翔の様子を思い返す。

 ある日、突然落ち込む素振りを見せた幼馴染。妖に狙われた彼は、ある日を境目に自分達と距離を置きたがった。それはまるで避けているようにも思える行為。その態度に我慢できず、原因を追究すると今は言えないとはぐらかされてしまった。

 お喋り好きだった彼が聞き手に回った。なんでも腹を割って話してくれていた態度が嘘のように誤魔化す態度へ変わってしまった。飛鳥への好意すら諦めようとして合コンに赴くようになった。


  毎日のように猫又と過ごしたがる翔、幼馴染に対して曖昧に笑う翔、雪童子や妖狐と繋がりを得ている翔。



 まさか――。



「ショウは知った? 僕達が妖を祓う人間だと、知ってしまった……?」



 朔夜の出した結論は夕風に乗り、静かに消えていった。



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