1 会ってしまった異世界人
>>>デルタ 1967年2月10日
雪が激しく降っている。
私たちは灯りを失えば、簡単にその雪に飲み込まれそうだった。
???「焚き火」
「焚き火がなによ?」
???「消えるから薪を持ってきて、馬鹿でも分かる」
「あたしがバカって言いたいわけ?」
火は消えそうな程に弱かった、消えたら自分も寒い。
仕方なく薪になりそうな乾燥した枝を取ってくる。
???「デルタ」
「なによ、おばさん?また小言?」
???「8歳差よ、引き算できないわけ?」
「うるさいわね、でもあんたがイライラしてる原因なら検討がつくわ、誕生日にコンシーラーでもプレゼントしてあげようかしら?」
???「こんなのが未来では聖騎士団長とか、聖人とか呼ばれてるなんて、未来は世も末だね」
「は?あたしが?あんたついにボケたんじゃない?ご自慢の未来予知もその程度になったの?アイネ」
焚き火の炎の赤い色が滲む。
景色は白に溶けてゆく。
、、夢だったか。
昔の記憶だ、思い出したくないやつの思い出したくない言葉。
あいつは本当に小言が多く鬱陶しかった、少し未来が見えるからって何でも知ってるかのように偉そうに、私と8歳しか変わらないくせに。
本当に人の神経を逆なでするのが上手なやつだった。
でもそんなアイネは死んだ。
あの会話をした日からすぐだった。
一体この溜まった鬱憤は誰で晴らせばいいわけ?
あんたお得意の未来予知で教えてよ。
???「ねぇ、デルタ!」
「???」
???「私よ私!」
この声、金髪の誰かさんを鮮明にイメージする。
「シャーロットお嬢様じゃない」
シャーロット「お嬢様ってやめなさいよ、スラムのお嬢様ってなんか恥ずかしいじゃない!」
「となると、ボスか、」
旧支配者の血、ロイヤルブラッド、お嬢様、ボス、廃都市で偉いって意味じゃ同じよ。バラエティがあっていいじゃない。
シャーロット「ボスならいいわよ、かっこいいじゃない」
「まぁわかる、で、どうしたの?シャーロット」
シャーロット「それがね、Jから面白い話を聞いてね!廃都市を抜けたとこの林に不審者がいたらしくて!」
「不審者て、」
不審者ってそんな喜ぶものかしら。
シャーロット「そうよ!不審者!まぁそんな面白そうなこと聞いたら私たちで行くしかないじゃない、Jには私が見に行くと言ってあるわ」
「なるほどね、どうせ今日は暇だし、楽しそうじゃない」
まあ最初から何であっても行くつもりだったけどね。
灰色のシャツに着慣れたズボン、
適当に服を着て外に出る。
いや寒っ、そういうノリじゃないわ、上着は着よう。
シャーロット「そういえば私デルタの隣の607に住むことにしたのよ!」
6、、7って、、奇妙な流行にちょっと遅れて流されたわね。
「あぁ、でも606と607の間の壁大穴空いてるけど大丈夫?」
階段を降り終えた、そろそろ老朽化してそうね、この階段。
シャーロット「なにデルタ?私が寝てる間に侵入でもするの?」
「まさか」
まあまた引っ越したくなったらいつでも引っ越せばいいからね、それが廃都市のいい所だと私は思う。
シャーロット「それにしても小さめなこの建物だけでも1階に7部屋ずつで6階建て、つまり42部屋あるのよね、一体この街から人が消える前はどれだけの人がいたのかしら」
私たちが隣国に悪魔と罵られるようになったり日々クソみたいな目に遭うようになる前、“偉大”な天帝がくたばってなかったその時は余程豊かだったってわけ?
シャーロット「うんうん、今日も空がきれいだね」
結局そんなことを考えていても仕方がないのよ。こうやって早朝の青とも水色とも言えないような、不思議で綺麗な空の色を見たりすると、少し得した気分になる。そういうのの方がよっぽど有益じゃない?
シャーロット「ってあそこにいるのってもしかしなくてもそうよね?」
ん、絶対そうだ。
そこには赤い髪をした女の子がいた。
「…」
シャーロット「…」
うん、事実を言うとそれ以外に大した特徴はない、歳は多分私たちと同じくらいで、顔が可愛め、身長は私がこれくらいだとしたら、ってこれくらいじゃなんの目安にもならないわね。
シャーロット「こんにちは」
不審者「え?ん?あ、えと、こんにちは?」
こういうのはシャーロットに任せるわ。
(任せた。)
私は視線で全力で伝える。
シャーロット「まぁ、単刀直入に聞くわ、あなたはなんでこんな所に?ここは外の人間が来る観光スポットとしてはあまりオススメできないけど。」
不審者「それが、、バスケの試合してて、ドンってなってゴンっていったらパッて目覚めて、ここに、、、うぅ、ぶつけた腰が痛い、」
私はシャーロットと無言で見つめあってた、お互いに無言で解説を求め合ってた、しかし解説のできる人はいなかった。
「ばすけってなによ?」
不審者「なにって、スポーツ、かな?」
シャーロット「そのすぽーつってなにかしら?」
不審者「スポーツって、確かにスポーツってなんだろうね、いざ聞かれると、、ってソクラテスの真似?わたしをからかわないでよ!」
そくらてす?
不審者「もしかして、ここ日本じゃないの?でも言語は通じるし、」
日本?
シャーロット「国?ここは国じゃないわよ」
「日本は異世界にある国の名前ね」
不審者「え?」
シャーロット「異世界にある国?つまり、あなたは異世界人?」
シャーロット、飲み込みが早い。
不審者「異世界転移?ねぇ、教えて、どんな世界なの?剣とか魔法とか使ったりするの?」
…
シャーロット「…剣と魔法、、そうね。」
異世界人の彼女から見たら私たちの世界はどんな世界なんだろう。
どんな世界と聞かれても、私たちにとっては普通の世界、としか答えようがない。
剣と魔法、今はもっぱら銃とアーツって感じね。
シャーロット「そういえば聞くの忘れてたわ、あなたのことはなんて呼べばいい?」
見事な話題の転換ね、異世界人なら無駄な心配をかけるような話を最初にはしたくないからね。
不審者「えっとね、梶わ、いや絵名、エナって呼んで!」
体感だけどエナが隠し事をしてるようには感じない。
とりあえずエナが異世界人って線が濃厚になればなるほど安心できるわ。
隣の炎帝の国イルメナスが侵攻のために偵察を送ってきてるって線もあるわけだし。
シャーロット「エナね、よろしく、私はシャーロットでこっちはデルタ」
「よろしく」
エナ「よろしく!」
シャーロット(あれ?デルタなんか今日は初対面の相手なのに態度が柔らかいじゃない?)
絶妙な声の大きさで耳打ちしてくる。
う、うるさいわね。
私だって初対面全員に噛みつかないといけないコミュ障ってわけじゃないんだからね!
エナ「それで今こそ試さないといけないことがあるの!異世界転移と言えば、チートスキル!私はなにかあるのかな?」
シャーロット「そうね、言いずらいけど、ある時は感覚で分かるというか、、」
シャーロットが言い方に配慮してる間にエナは自分で気づいたらしい。
エナ「うん、、無い。」
露骨に悲しそうな顔をするわね。
エナは球体の物を地面に投げる、それは跳ね返ってエナの手に戻る、そしてまた同じ動きを繰り返す。
シャーロット「ねぇデルタ、これなんか見覚えがあるような」
「そう?」
シャーロット「私の記憶が正しければ、砲弾の訓練で使ってたアレよ!」
アレか、
エナ「砲弾?これはボールだよ、じゃ説明になってないか。」
エナは難しそうな顔をしながら少し考えた。
エナ「ざっくりいうと高いとこの輪っかにこのボールを通して遊ぶ、それがバスケットボール!」
私たちの使い方はやっぱり間違えてたみたいね。
そのバスケットボールがあったあの建物には確かに高いところに輪があったわ。
エナ「あれ、でもなんでボールを見たことがあるの?」
シャーロット「確かになんで廃都市に異世界のものがあるのかしら」
要は異世界人が関わってんでしょ。何もこの世界に来た異世界人はエナだけじゃないだろうし。
「そういやエナ、一緒に廃都市まで来ない?」
まぁエナにほかに行くとこもないだろうし、それに万が一、エナが炎帝セラフィーナの工作員なら廃都市で身近において炎の国への情報伝達を阻止するのが最善の一手になるし。
シャーロット「自分から人を誘うなんてデルタも成長し、、、、」
エナ「いきたい!ぜひお邪魔しまーす!」
エナと被ってシャーロットがなんて言ったのか聞こえなかったけど、、まぁいいわ。
「あと、はい、これあげる」
エナ「銃!?どうやって出したの?手品!?」
「使い方は分かる?これであの鳥を狙って撃ってみて」
エナ「射撃やったことないけどまぁやってみるか、、」
思ったよりも早くドンと銃声がした。
弾丸が空を切った。
初めてとは思えないくらいに撃つまでが早い、しかも撃った反動をものともしない、筋がいいわね。まぁあとはエイムね、初めてじゃかすめもしな、、
何かがポトッと落ちる音がした、私はその音を予想してなかった。
エナと私とシャーロット「え、当たった!?」
初めてで躊躇もなく?
、、、
まぁやるじゃない、転移の時に身につけたのかもね。
ここでも最初から命中させたのなんて私とJくらいだし。
シャーロット「すごいじゃん!この世界では銃は必需品だから、銃の扱いに長けてるのはかなりいいことよ!」
エナを連れて廃都市へ向けて歩き出し、廃都市が見えたところでやはりエナは廃都市が自分のいた世界とかなり似ていると言った。
例の異世界人はこの廃都市に関わってるって程度じゃ無いって事ね。天帝その人だったりして。
でもまあ今はそれより大事なことがある。
「エナ、今日は私のうち泊まる?」
エナ「えー!いいの?」
シャーロット「あ、ずるいじゃない!」
ふふっ、やってやったわ。
といっても、私は万が一が心配だし、まだ隣国のスパイじゃない確証はないし?まぁつまり、私はいいことをしてるのね。うん。決して妹ができたみたいで可愛いからとかじゃないわ!
廃都市の夕焼けはいつも通り綺麗だ。
この日がいわゆる普通で何もない日常と呼べる最後の日になるとその時の私は知らなかった。
こんな台詞を後から思い返す時に吐いてみたいものだけど、
あいにくアイネの奴のせいで私は知ってるのよね。
食のために傭兵として汚い仕事をやりつつも、ある程度何かと決まったわけでもないやりたいことをルールのないこの廃都市でやる、こんな普通の日常に私は満足してる。
そしてそれは何かしらの要因で今日で最後になる、せめて何が起こるのか一連の流れをアイネがくたばる前に言ってれば、、全く人に余計な心配だけ抱かせておいて何があるのかは教えませんって、本当になんなのよ。
主人公の名前書くたびに赤点だった物理を思い出して辛い。




