生意気生徒会長 St. Valentine's day 1
生徒会室に来た二人は、飛島さんの方へまっすぐ歩く。
「桜ちゃん。お疲れー」
「飛島、お疲れ」
「お、お疲れさまです」
突然の会長と武山さんの態度に戸惑う飛島さん。
助け舟を出した方がいいだろうか。
いや、もう少しだけ見守ろう。
「桜ちゃん、今日は何月何日?」
「えっと、2月14日・・・です」
「何の日か、わかってんだろ?」
「え、えーと・・・」
見守ろうとしたけど、ダメだ。
この二人は飛島さんに無理やりチョコレートをもらう気だ。
座ってる飛島さんを上から見下ろして。
これじゃ後輩いびりだ。
「・・・バレンタインデー?」
「せいかーい」
「ちょっと会長!武山さん!!」
「「はい、チョコレート」」
・・・は?
飛島さんの前に、大きな紙袋が二つ、
どすんと置かれた。
目を白黒させている飛島さん。
驚いて声も出せないようだ。
「か、会長・・・これは?」
「あ、臣ちゃんも食べる?バレンタインのチョコ。今年もいーっぱいもらっちゃってさ」
「食いきれなくて捨てるより、女子にやったほうがいいだろ?」
「・・・なるほど」
要は先輩たちは、
チョコをもらうのではなく、あげる気だったようだ。
「ささ、桜ちゃん。好きなだけ食べて」
「ありがとうございます。でも・・・」
「でも?」
「会長たちのために用意されたチョコを、私が食べるなんて」
紙袋を手で押し返そうとする飛島さん。
でもすぐに戻された。
「優しいねー桜ちゃん。でもね・・・」
「モノには限度ってもんがあるんだよ。俺たちだけで食べきれる量か?これ」
「・・・・・・それなら、いただきます」
二人の押しに負けて、
飛島さんはそのまま紙袋を受け取った。
「あれ?」
ふいに会長が僕の方を見る。
「臣ちゃんも食べたい?チョコ」
「結構です」
笑顔で言う会長に、
僕はピシャリと言い返した。