最終回『ふたりでメガネっこ!』その3
戦いが終わり、穴の彼方で次第に暮れていく空を見つめながら、私たちは仰向けに転がっていました。変身はすでに解けていました。勝利の余韻を感じながら、私は風太郎の手を握っていました。
「疲れました」
「……だな。あ、そうだ。門限大丈夫か?」
「なんとかなります。ね、ネルネさん。バーニア付きの服着てますよね」
ネルネさんにつかまって家まで帰れば余裕です。よね?
「『空を自由に飛びたいくん』なら、壊れた」
「はい?」
その珍妙な前の機械は、まさかとは思いますが、あのバーニア付きの宇宙服のことですか?
「いや。だからさっき柱にぶつかって、壊れた」
あー、と風太郎が納得したような声を出します。何か、風太郎と二人にはわかる出来事があったということでしょうか。ネルネさんが、心配するなと言いました。
「でもネルネ大丈夫だ! ネルネじょうぶ」
「私は! 大丈夫ではないかもしれません!」
大急ぎで起き上がりました。
再び変身します。グラス2で十分です。これなら多少変身できる時間も伸びるはず。家まで変身して帰るしかありません。
「帰りますよ!」
「帰るか! グラスアップ!」
行きに降りてきたエレベーターの竪穴を、三角飛びで地上まで登っていきます。
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「た、ただいま戻りました」
家に帰ると、床の間に明かりがついていました。
「また門限ギリギリか。燈」
父の声に、私は意を決して進みます。床の間の光の中へ、堅く拳を握りながら踏み込みました。
「パパ。わた……私たちが今やっていることは、私たちが、どうしても今やりたいこと……なんです」
頭を深く下げます。
「どうか、少し目をつむっていてください」
父が、深く息を吐きました。
「……昔、友人の進路に口を出して大喧嘩になったことがある。私は反対していたが……結局あいつは、自分で何とかしてしまった。……応援できていれば良かったと、今でも思うことがある」
父の過去が、うっすらと見えた気がしました。
「お前のやりたいこと、今は止めない。だが目を瞑るのも限度があるぞ。……無理だけはするな」
「……はい」
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最終回『ふたりでメガネっこ!』その3
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数週間が経ち、夏の気配が近づいてきていました。
ネルネさんとあの後再び地下洞窟を調べに行きましたが、そのようなものはどこにもありませんでした。私たちが最後のビームで開けた穴だけが、謎の大穴として林の中に残っていました。
学校では、姫乃さんという同級生がいたという事実がきれいさっぱり消え去っていました。そのことを誰も気にも留めていないようです。
旧神社で、私たちは今後のことを話し合いました。
「それで、ネルネはどうするんだ?」
「ねーねのことを調べる。メガネグラスも。何かわかる、かもしれない」
ネルネさんは、私たちの変身アイテムも今一度詳しく調べることにしたようです。
「じゃあ、しばらくはメガネでの変身はお預けですね」
私が残念に思い言ったところ、風太郎が呆れたように笑いました。
「敵がいないんだから、変身する用事自体ないじゃんか」
「そうとも限りませんよ! ちょっとした人助けに役立つかもしれないし、それにいつ敵が現れてもいいように、トレーニングだってしたいですし」
「あかり! いいこと言う! 研究大事」
風太郎の前に立って、元から持っていた普通のメガネを押し上げました。
「グラスアップ!」
「……何?」
「『ひかる』メガネっこ! メガイインチョー!」
困惑する風太郎に笑いかけました。
「私、すごく感謝してるんです。風太郎が見てくれていると、私は自信をもって私でいられる……! だから、これからもずっと、私を見ていてくれませんか?」
風太郎が顔を赤くして、頬をかきました。
「それは。……言われなくても。ずっと隣にいるつもりだから」
そう言ってくれるってわかっていても、緊張ってするものですね……!
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「あー、今日は転校生がいます~」
朝の会で、先生が唐突に言いました。
「デジャブなんだが」
風太郎が困り顔で言いました。引き戸が開き、少女が入ってきました。
モデルのようなスラリとした長身。黒く艶やかな長髪。そして透き通った琥珀色のフレームのメガネ。
「では挨拶をお願いします~」
「ごきげんよう、皆様。わたくし、姫乃コハクと申します」
「姫乃さんは海外から来たばかりだそうです。みなさんいろいろと……あれ、姫乃さん?」
姫乃さんが、私の席の前に歩み寄ってきて微笑みました。その様子を窓の外から少し大きめのバッタが見つめていたのですが、それは風太郎だけが気がついていたようです。
「また会えましたわね! イインチョーさん♡」
私は苦笑いしながら、この先の波乱に不謹慎にも胸をときめかせていました。




