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大学祭は何をする?

「これから暁空大祭に向けての出品作品についての会議をはじめます。1年生諸君はまだ暁空大祭を体験している人は少ないと思うから、大祭についての説明をまずさせてもらうぞ」

 ワル会長が全会員に向けて説明を始めた。


 文化系の部、サークルや会などがこぞって展示や模擬店をするそうだ。

 模擬店に関してはスポーツ系の部なども参加する大規模な祭りらしい。

 演劇部や映画部などは体育館を使って入場料を徴収し、劇や映画を見せるそうだ。

 来場者は誰でも来いと言う方針なので大学関係者でなくても入場できる。

 来年、この大学入学を狙っている受験生なども多く、下見も兼ねて来るらしい。


「ウチの会としては入場料を取って体育館等で出し物をするか、儲け度外視であっちこっちにスクリーンを置いて暁空大祭のレポートを放映するか、はたまた模擬店をするかを今回の会議で決めたいわけだが、誰かこれぞと言う案はないか?」


 ワル先輩がぐるっと会員の顔を見るが誰も何も言わない。

「模擬店にスクリーンを設置してレポートを流せば一石二鳥なのにな」とガオが小声で言ったのだが、あまりに小さな声だったので私にしか聞こえなかったみたい。


 放送協会なのだから本当はテレビ放送みたいにレポートを流したいのだが、それだと会として儲けがないのが玉に瑕なのだ。

 ガオの案は皆がやりたいと思っている事と儲けたいと思っている両方をクリアしていて良い案だと思うけど、ガオ自身はワオ先輩に言う気がない様だ。


「会長!ガオの意見なんですが、模擬店をやってその中にスクリーンを設置し暁空大祭のリポートを流すのはどうですか?」

「「「「おおおお!」」」」


 部室にいるみんなが感心した様だ。

「おう!その案いいな。貰いだ!だけど、ガオ、お前意見があるなら自分で言えよ」

「いえ。俺は思い付いただけで、別に意見と言うわけでは・・・・」

「ちっ!お前は将来の会長候補なんだから、もっと責めて来いよぉ」

「お断りします」

 ガオはどうも放送そのものに興味は無いみたいなんだけど、どうしてこの協会に私を誘ったのだろう?


 結局ガオの意見に皆が賛成して、飲食を提供する模擬店の中に大型スクリーンを2つ用意し、学園祭の目玉等を事前に取材した物や、当日突撃で取材した物をそのスクリーンで流す事になった。


 私とガオは番組作成ではなく模擬店要員とされた。

 と言うか、ガオはアナウンサーかコメンテイターで出演して欲しいと言われたが、顔出出しNGと言い張り、私と一緒に模擬店で給仕や料理を担当する様に言われた。


 料理と言っても冷凍食品を温めるか、乾きものを出すくらいなので、実質飲み物の提供と言って良いだろう。


「ねぇ、ガオって顔出しNGなら給仕もしないの?」

「うん。僕は厨房で洗い物でもするよ」

「なんかもったいないねぇ」と言っていたら、横からワル先輩が「おう、タマ、もっと言ってやれ。こいつが給仕をしてくれれば客の入りは保証されたも同じだ」とチャチャを入れてきたが、ガオは歯牙にもかけず「僕は皿洗いで」と会話そのものをスパっと切ってしまった。


 しかしこの子はどうして放送協会に入ったんだろう?

 顔出しNGって、もったいないなぁ。

 そんな事を思っていたら、「僕は将来コンピューター関係の仕事に就きたいから、顔出しとかは興味ないし、面倒なだけなんだよ」と宣った。


「ねぇ、なら何で放送協会へ入ったの?」

「ん?それは将来タァ~マの仕事に役立つと思ったのと、放送業界におけるプログラミングの在り方を探るためかなぁ」なんて、私では理解できない理由を挙げていたよ。

 まぁ、理由の一つは私の為なんだと言うことだけはしっかり伝わったけどね。


 ガオは他の人たちには冷淡なくらいで、ちょっと心配なんだけれど、私に対しては過保護且つ粘着で、お姉ちゃんとしてはそっちも少し心配なんだよね。

 親離れならぬ姉離れをしないと彼女の一人も作れないよ?

「彼女は間に合っています」とか言い出したガオ、そんな素振りは一切見せて無かったのでいつの間に?と思わず「え?ガオ、彼女いたの?」と素直に聞いたら、可哀そうな子を見る様な目で見られてしまった。


「今の所彼女は面倒臭いからいらない」

「お姉ちゃんとしては早く彼女作ってみたらと思うよ。大学の女子学生たちも落ち着くと思うんだよねぇ~」

「じゃあ、たぁ~まが僕の彼女になってくれる?」

「はぁ~?姉弟で彼氏彼女って悲しすぎるよ」

 そう返したら、「ガ~ン」と言うオノマトペがガオの額くらいの位置に浮かんだ気がする。


「まだ認知してもらえてないのか・・・・」とガオが小声で言ったので、何について言っているのか分からず「何の認知?」と聞くと、またまた可哀そうな子を見る目をして見られたけれど、今度はガオの方がさっさと別の方を向いて、「タァ~マ、模擬店で何を担当するか決めておいで」と会員がワイワイと作業分担を決めている輪の中に押し出された。

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