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ガオのモテ度

「タァ~マ、今日、僕ちょっと遅くなるから。これでも食べながら待っててね。絶対、待っててよ」と、5時限目と6時限目の間の休憩時間に颯爽とウチのクラスに入って来て、キャーキャー言いながら1m以内に詰めよろうとする女子生徒を気にも掛けず、一直線に私の机まで来て、チョコレートとビスケット、キャラメルの箱をドサッと置いて行った。

 どれも私の大好きなお菓子だ。

 校内では手に入らないので、昨日の夜の内に11号館の食料品店で購入して用意してたのかな?

 だってこの昆布のお菓子は今やあそこくらいでしか手に入らないと思うし・・・・。


 ガオが教室から出ると、ウチのクラスの女子の大半が私の机のまわりに集まり、「あれがガオ様の好きなお菓子なのね」とか言ってる子がいるけど、これ、あくまで私の好物だからね。

 まぁ、ガオもいつも一緒に食べてるから嫌いじゃないと思うけど、ガオの好物は芋けんぴや大学芋だよ?

 ちなみにナオはポテトチップスだよ。

 あいつらは芋っ子なんだよぉぉぉ。


「ねぇ、タマさんはガオさんの幼馴染なんだよね?」と今更聞いて来なくても皆が知っている事を確認してくるこの赤毛の女の子の意図は何だろう?

「うん。幼馴染で弟みたいなもんだけれど、私はガオへの伝言とかプレゼントを渡すのはやってないから」

「うん。それは知ってる。有名な話だからね。って言うか、小学校の時、ガオ様って女の子と付き合った事ってあるの?」

「あ、それ、私も聞きたい~」

「私も~」

 ここぞとばクラスの女子が参戦して来る。


 これはガオの過去を聞いて、もし付き合った子がいたらその子の特徴を教えてもらいたい。ひいてはその容姿に似せたいって事かな?

「私が知る限り、付き合った女の子はいないけど、確実なのはガオに聞いた方がはっきりするよ」と逃げた。


 私の答えに不満なんだろうね。

 ガオの好みが分からないままだから。

 でもさぁ、もしガオに元カノが居たとして、あんたたちはそれを受け入れられるの?

 ぜぇぇったい、その子、イビリ倒しそうじゃん?

 怖い怖い、触らぬ神に祟りなしと早々に話題をぶった切って、次の授業の教科書を机の中から出したりして、忙しさを装う。


「A組のララがガオ様に告って撃沈してたよね?」

「え?何時?」

「一昨日の放課後」

「え?一昨日ならB組のワカって子も告ってたはず」

「えええ?どっちも顔は良い子だよね。顔だけはっ」

「先週は2年生の美人で有名な先輩が告って速攻断られてたよ」

「ねぇねぇ、ガオ様って入学してからどれくらい告られたんだろう?」


 忙しそうにしている私は姦しい女子の輪から逃れる事に成功したと思ったのに、件の赤毛が「ねぇ、ガオ様の中学での告白された回数って聞いてない?」と真剣な顔で聞かれたよ。

 大体、ガオは誰に何時告白されたとか一切報告して来ないから、私は全然知らないよ。

 A組のラなんちゃらも、B組のワなんちゃらちゃんも、2年の先輩の事もたった今知ったよ。


「知らないです。そういう報告は一切してこないので・・・・」と逃げた。

 もう本当にガオ案件に私を巻き込んで欲しくないよ。

 今、私を取り囲んでいる女子以外にも、遠くの席に居る子たちも、結構耳をこっちに向けて神経を研ぎ澄ましてるのが丸わかりだ。


 これってもしかしたらミソとかが入学して来たら、この騒乱が掛ける2になるのかな?

 面倒臭いなぁ。


 放課後の美術室は部長がちょこっと顔を覗かせるだけで、ほぼほぼタマズルームになっているので、遠慮なくガオの貢ぎ物、お菓子を食べまくってやった。

 今描いている絵は人物画ではなく静物画で、なんか面白みが無いので、もったり、だらりと描いている。

 だって、アルマイトのバケツの前に辞書と黒板消しって、どういう構図?

 部長が勝手に並べてくれて、「今回のテーマはこれね」と置いて行ったんだよ。

 

 繋がりの見えない物体をただ並べただけの絵に、誰が感銘を受けるのか?

 ありえねぇ~と思いながらも、もったり絵を描いていたら「タァ~マ、お待たせ~」とガオが美術室に入って来た。

「帰ろうよ」と勝手に画材とかの片付けを始める。

 

「あ、お菓子、食べ切ったんだぁ。タァ~マパパに怒られない様に少し遠回りして帰る?」と、ガオはいつも穏やか。

 ウチのお父さんに怒られるって言うのは、夕飯が入らない程お菓子を食べたからだ。

 まぁ、しょうがないね。ちょっぴり遠回りして帰ろうかぁ。歩けば多少はお腹減るかもね。


 ガオと並んで今日は繁華街の方を通りながらちょっぴりウィンドウショッピングをする。

 でもねぇ、誘惑が多いのよ。

 お肉屋さんのコロッケ、お惣菜屋さんのさつま揚げ、八百屋さんのりんご、あああ、おいしそうだぁ。


 私の食指が食べ物に向いている事を察知したらしいガオが、めずらしく雑貨屋さんへ私の手を引っ張っていく。

 中には同中の女子が結構いて、ガオが店内に入ると「キャァキャァ」と騒ぎ始めた。


「タァ~マ、キーホルダー買わない?」とキーホルダーが掛けてあるラックの所へ連れて来られ、何かの毛で作られているのかポワポワのポンポンの奴とか、プラスティックの中にカワイイマスコットの絵が描かれているのとかを「これはどう?あれは?」と次々にガオが指差すけど、私が気に入ったのは光る骸骨の奴。

 白色のと緑のと薄い黄色とピンクのがあったんだけれど、5人組だからなぁ。

 5色ないのかな?ってラックの奥の方も覗いていたら、「タァ~マ、骸骨のがいいの?こっちのワンちゃんの方が良くない?」と如何にも女の子が好きそうなキーホルダーを指さして来る。

 

 私の骸骨推しは変わらず、私には白のを、ガオには黄色のを買ってくれた。

 そう、ガオが買ってくれた。

「ナルたちのは?」って聞くと、「5色揃ってないから、5色になったら買う」とのこと。


 それからしばらくウチの中学校の女子は光る骸骨のキーホルダーを付けている子が多くなった。

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