クラブ活動で学校中の羨望の的(虚)
中学校に入学したら是非やりたい事があったんだぁ。
むふふふ。
それはクラブ活動なんだよね。
勉強大嫌い人間の、いや、ゲフンゲフン、勉強は好きなんだよ。うん。でも、勉強が私の事を嫌っていると思うんだよね。
だから、勉強をしても良い成績を取った事がないんだよ。
勉強に振られているんだよ。
そこへ行くとガオなんて別段勉強している様に見えないのに、1歳年上の皆に混ざっても学年1位を軽々とキープしているんだよね。
これって地頭の違い?
何か可愛くないっ!
まぁ、勉強の事はいいや。脇に置いておこう。
私の中学での目標はクラブ活動で皆の注目を浴びるくらい活躍することだからね。
入学したばかりの私の頭の中には水泳大会で一位を取って学校中のみんなにもてはやされている図や、油絵を描いてコンクールに優勝し、全校朝礼で先生に名前を呼ばれ、みんなの前で褒められている図だったりする。
後で分かった事だけど、中学校の美術クラブでは油絵なんて描かせてもらえないんだよね。
せいぜいが水彩画だ。
この時点で私の妄想は実現不可能だった・・・・。
どのクラブにしようかなぁ~。
新入生向けのクラブ紹介が体育館で行われたのは入学して1週間が経った時だった。
このイベントは強制参加じゃないので、体育館の席は自由に座って良い。
私はもちろんガオと一緒に座った。
だって、友達がいないからねっ!!グスン。
「文化系、体育系、どっちにしようかなぁ~」
「タァ~マは運動神経が無いから、文化系にしといたら?」
うぉ~い。
優しい言い方していても、内容が頂けないよ!ガオめ!
「そういうガオはどのクラブにするの?」
「僕?う~ん、バスケとか科学クラブ、写真クラブもいいかなぁ」
「か・科学クラブ・・・・。授業じゃないのに勉強したがる奇特なのはガオくらいじゃないの?」
「いや、タァ~マ以外は結構みんな勉強を楽しんでるよぉ?」
「んんん?そんなバカなぁ」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった私を見て、ガオがクスクス笑う。
私達幼馴染と一緒の時以外笑わないガオが笑うと、体育館に居た女子学生みんなが頬を染めて溜息を吐く。
ちょっとだけ気分良いんだよね。
みんなが羨むイケメンの笑顔が私にだけ向けられているという優越感が心地よい。
これぞ女の本懐。
だけど、これが彼氏とかだったら恰好がつくんだけど、ただの幼馴染じゃねぇ~。
まぁ、私達の年齢で彼氏彼女がいる子は殆ど見掛けない。
いや、嘘はいけない。
私が知る限りでは殆どではなくゼロだ。
だから別にいいんだもんねぇ。私に彼氏がいなくても。
それにガオにしても、ナルにしても弟の様なもんだからね。
家族を褒められて嬉しいっていう気分でもあるんだよね。
将来、私に彼氏が出来たとして、お相手は『チキン野郎はふて寝でもしてろ』って言う映画に出ているルタ様がいいなぁ。
決してイケメンでは無いけれど、おちゃらけていてもどこか芯が通っている感じがカッコいいんだよね。
演技の幅があるからか、任侠映画にも良く出ていて、三下役とかも十八番にしている実力者だ。
「なに?」
ガオが妄想にふけっている私を見て、おかしそうな顔をしている。
「何って何?」
「いや、だから、タァ~マが変な顔してたから・・・・」
「ちょっとぉ!女の子に向けて変な顔なんてNGワードだよっ」
「「「クスクス」」」
私たちの周りに座って居た女の子たち、ってか、私たちの周りは四方4列先まで女子生徒で固められていて不自然なまでに男子生徒はいないのだが、その女の子たちに嘲る様に笑われてしまった。
これもガオのせいだからね!
いらん恥をかいちゃった。
気を取り直して舞台上で進められているクラブ紹介に集中する。
「タァ~マ、どのクラブにするの?」
だぁ~かぁ~らぁ~、それを決める為に今ここにいるんでしょ?って言いたくなるよ。
ガオは昔から私の意識がガオから逸れると、話し掛けたり、手を引っ張ったりして気をガオに向ける様に仕向けてくるんだよね。
これって実母も継母も側にいなくて、2軒の中で唯一の女性である私に母性を求めてるってことかなぁ?なんて思ってたんだけど、一度それを家の夕食の席で言うと、全員に腹を抱えて笑われちゃったよ。
ナルなんて、「タマが女の子?ププ」っと宣って笑われた。
くそぉ~。
普段優しくて意地悪しない癖に、あの日は思いっきり意地悪されたよ。
ナルのくせに。
はっ!また脇道に逸れてしまった。
どのクラブにしようかなぁ~。
料理はダメだね。
お父さんは上手だけど、私の料理の腕は壊滅的。
試食する人の命のためにも、料理クラブは無しだね。
裁縫もだめ。もちろん勉強系の科学クラブなんて無し無し。
水泳は泳げないし、走るのは遅いし、う~ん。
下手でも大丈夫な事ってどれだろう?
価値観が統一されていないもの・・・・。
あっ!芸術。
音楽はダメだ。合奏したら周りに迷惑を掛けちゃう。
なら、絵?
美術クラブなら下手くそでも誰にも迷惑を掛けないで済む。
その時点で、最初の妄想とはかけ離れてるんだけど、もうあんまり悩みたくないから美術クラブに決定。
ガオはスポーツクラブにすると言って、坊主にしなくちゃいけない野球は避けて、バスケットボールにする事にした様だ。
「タァ~マ、美術クラブでも良いけど、帰りは僕と一緒だから遅くまで残れる様にしてね」なんて甘えてくる。
まぁ、私も一人で帰るより、ガオと一緒に帰る方が楽しいからそっちのクラブが終るまで待つのは問題ナッシングなのだ。




