307.栢森嵐花のキモチSS ③
「あぁ? 池谷と沖水だけで南中に行きやがっただぁ? ったく、何のために秘密裏に苦労したと――」
「池谷さよりは放っておいても、沖水……いえ、鮫浜はそろそろ動くのでは?」
「諦めの悪い女だな、鮫浜のご令嬢もよ! みなとはあたしがもらうって宣言しといたのに、通用しない相手とか、厄介すぎんだろ!」
「お嬢はどうされます?」
「んー……どうせ、あの二人は中に入れないだろうし、様子見ってとこだな」
「では、南中女子寮の彼女らにもそのように……」
「好きにさせときな! エヴァ……はどうでもいいが、ユウには自由にしろって言ってある。最後にもらうのはあたしってことも伝えてあるしな」
高洲湊……みなとは、あたしにとっては最後の希望。
留年になってまで教育を施した前の男は意気地がなく、結局あたしの男にならなかった。
だがみなとは、栢森だろうと鮫浜だろうと、特に恐れることなく接して来る初めての男だ。
不思議と女……それも特殊な女どもに好かれて心移りばかりする奴だが、言うことは聞くし、あたしの身体にも物怖じしない。
お膳立てを周りから固めているに過ぎないが、みなとは気付くはずも無い。
「あはははははっ! もうすぐだな、みなと」
「楽しそうですね、お嬢。お嬢のモノになるんなら、拒むことは無いでしょう」
「楓子もそう思うだろ? あいつはあたしの舎弟でもあるからな! 舎弟が栢森の男になるってのは、不思議なことじゃねえはずだからな!」
「……しかし、肝心の高洲湊の気持ちはどこにあるのでしょうか? お嬢の愛情をきちんと感じているのです?」
「何を当たり前のことを……」
そうは言ったが、みなとの奴からは本音が聞き出せていないままだ。
わざわざ西下から転校させたルリも、結局役立たずだったし、池谷だけが得をした感じか。
あたしが動くのはそれからか。
みなとが好きな女はあたしのはずなんだ……あたしも、みなとが好きなんだからな。




