132.危険につき転校を言い渡される
「湊くん、キミは危険だと判断した、したから。だから、しばらくバイバイ」
あの日、俺は鮫浜あゆに告白して彼女とすることが出来た……はずだった。
俺の強引な行動に加え、さよりにも告白をしてしまったのは、言い逃れる事の出来ない真実。
鮫浜あゆの中では、彼氏となった平凡すぎる男であっても、動揺させられてはいけない。
そんなことを思ってしまったらしく、あらゆる権力を行使され俺は彼女から隔離を命じられた。
彼女が彼女に戻った日から、早数か月。
4月となり、学年も上がって春となってしまった!
「――で、何でお前まで転校させられてるんだ? 何かしたのか?」
「愚問ね。あなた、忘れたのかしら? あゆが見ている前で、偽の告白をしやがっ――してくれたわよね? たとえ偽であろうと、あゆが見逃すとでもお思いかしら? そうだとすれば、つくづく弱いとしか思えないわ。それと、お前じゃないわ!」
「いや、合っている」
「は? あなた、頭は正常かと思っていたのだけれど、イカレ野郎だったとでもいうのかしら?」
鮫浜あゆに言い渡された俺は、学園からそこそこ遠い普通っぽい高校に飛ば――来ている。
俺がしでかしたことなので仕方ないと諦めているが、何故かさよりも転校を共にして来た。
「それはこっちのセリフだ! 言っとくが、ここはさよりというわがまま娘が通じる学園じゃないんだぞ? そこで俺が『さより』などと呼び捨てしてみろ! 一気に拡散されて住所とか身バレすることになるぞ」
鮫浜の力を持ってすれば、そんな拡散は未然に防ぎそうだが……
いや、転校させられてしまったのと、勝手について来たらしきさよりとでは扱いが異なるか?
「ふふ、それこそ望むところだわ! 湊とわたくしが公式に付き合っていることが分かれば、こっちのものだもの!」
「いや、駄目だ」
「何でなのよ! 言い訳をいいなさい!」
「言い訳を言うのか……何か言葉のチョイスが間違いすぎているが、まぁいい。お前の妹さん……姫ちゃんがその高校に通うことにしたのは覚えているのか?」
「――あっ」
「姉のくせに知らされていなかったわけじゃねえだろ? そこでさよりと俺が付き合っていることを知ったら、せっかく姉として認められてきたのが一気に崩れることになるんだぞ? いいのか、それで」
さよりの妹にして、俺のことをずっと片想いしてくれている綺麗な妹ちゃん。
彼女は俺らが通っている学園に入学して、後輩になることを決めていた。
しかし直前になって、鮫浜のいる学園に行きたくないと言い出したらしい。
その真相と心の行方は謎だが、まさか転校先にいる後輩の子が、さよりの妹だとは思いもしなかった。
「よ、よろしくないわね……そ、そういうことなら、あなたとわたくしは他人だわ!」
「いや、最初から他人なんだが……」
「う、うるさいわね! 他人であろうとなかろうと、湊とわたくしの将来は安泰って決まっているの! だから今は他人になるのがベストなの! いいったらいいの!」
なんという駄々っ子属性なんだ。
将来が安泰というのも、社畜の親父さん次第になるわけだが。
俺たちは鮫浜と関わっている間、しばらく甘ったるい恋愛脳になっていた。
俺はそれなりに冷めているが、さよりは恋愛体質になってしまったらしく、隙あらばそういう発言をするようになってしまった。
「とにかく職員室に乗り込むぞ」
「ふ、ふん。あなたに言われるまでも無いことね」
「何も口を出すなよ? 俺とお前は間違いなく他人だ! 呼び捨てで呼び合う幼馴染でもないからな?」
「当然ね!」
かなり不安すぎるが、同じクラスになるわけでもないはずなので、最初だけでも機嫌を良くしておく。
『高洲湊くんと池谷さよりさん……ですね。学年が上がる時期に揃って転校とは、お二人は知り合い?』
「将来を誓い合――」
「他人です!」
油断大敵すぎる残念な女、それがコイツだ。
『他人……それもそうですね。では、クラスは同じクラスになります。我が校は転校生が少なくありませんし、本当は学年が上がるはずだった女子……あ、いえ、個性的な子が多いので仲良くしてくださいね』
今かなり先行き不透明感を出して来た気がするが、本当に普通の高校で合っていますか?
「ほ、ほほ……高洲湊とやら、よろしく頼むわね」
「はっはっは、お前大丈夫か?」
「お前って言った! お前じゃなくて、わたしは――」
「池谷さよりさん、よろしく」
「ひゃい……よ、よろしく」
鮫浜あゆに近付けたと思っていたら、見えない権力……権力チートで転校させられちゃった訳だが。
その期間がどれくらいのもので、ついでについて来た池谷と、そこに通う池谷妹。
彼女たちと、全く知らない高校の同級生と俺は果たして、上手くやっていけるのだろうか。
何にしても鮫浜あゆの彼氏……男となるには、俺はまだまだ近くなれなかったということみたいだ。




