第三十四話 いざ、出陣
さて、問題の一つである『雲隠れ』の魔法薬作りの素材だが。
風系統の『霊水』×3瓶。
陰性の魔法植物『白の実』×5、『花雲』×2。
陽性の普通植物『日の草』×3。
素材は割りと少ない。
これで大体試験管3本分。つまり3回分だな。
俺たちは五人パーティーだから、最低でも行き帰り分で10本は欲しいな。まあ、荒っぽい戦闘になるだろうし、無くしたり割ったりすることを踏まえて念のため予備として5本ほど多目に作っておくか。
一応、収納魔法でしまっておけばそういうことはないが、念には念を、だ。
幸い素材は市場で簡単に手に入るものだし、値段もそこまで張らない。人数分と予備を作っても予算を越えることはないだろう。
あと街に出るついでに、もう一つの買い物も済ませておきたいな。そろそろ物が揃ってる頃だ。
術式付与ローブ×5(メンバー全員装備)。
魔法銃×2(立花レーナ装備)。
魔法銃の弾×200(立花レーナ装備)。
魔法銃のマガジン×5(立花レーナ装備)。
変わり身の指輪×5(メンバー全員装備)。
魔力ブーストの指輪×5(メンバー全員装備)。
魔力の鋼糸(如月・ミーティア・秋人装備)。
煙玉×10(海藤光示装備)。
水系統―――鋼の霊剣×3(ラルフ・ド・ラルーシュ装備+予備)。
水系統―――水石の盾×3(ラルフ・ド・ラルーシュ装備+予備)。
土系統―――砂竜の鱗の盾×3(イメルダ・ギド装備+予備)。
投擲ナイフ×30(如月・ミーティア・秋人装備)。
火の石×10(海藤光示装備)。
隠れ蓑のテント×2(メンバー全員用)。
火系統ホーラの腕輪《収納魔法付与》×2(海藤光示&立花レーナ装備)。
水系統ホーラの腕輪《収納魔法付与》×1(ラルフ・ド・ラルーシュ装備)。
土系統ホーラの腕輪《収納魔法付与》×1(イメルダ・ギド装備)。
「はい、これで頼まれてた物が全部ね」
伝票を片手にテーブルに並べられた道具を読み上げたサベルジ武具店店主代理―――テルノアは、呆れたようにため息を吐いた。
「はぁ、ねぇ、あなたたち戦争にでも行くつもり?」
「まあ、似たようなもんだ。取りあえず代金はこれな」
「はいはい。まったく、よくこれだけお金持ってたわね」
俺が渡した封筒には三百万ゴールド入っている。魔法薬を売って作った金の7割だ。
テルノアに伝票で提示された金額より多目に入れてある。
随分と無茶な依頼しちまったからな、手間賃だ。
釣りはいらねーぜ、とか言ってみたいが今回はテルノアへの感謝の意なのでこのセリフはまたの機会にとっておこう。
「わりぃな。一日そこらでよく揃えてくれたよ」
「ええ、うちはツテがいっぱいあるからね」
俺は早速、購入物を収納しに掛かる。ああでもない、こうでもないとどこに何を収納するか考えながら、最終的にはあとで全員に聞こうと途中から雑にあちこちへ放り込みはじめる。
バタバタとしてて申し訳ないなとか思ってると、それを見ていたらしいテルノアがうつむきながら、
「なんか、楽しそうで、いいな………」
そう呟いた。
その声はどこか寂しそうで、儚げで、本来は俺たちと同じ輪に入っていたはずの彼女の本音だと思うと、俺はどう反応して良いのか分からなくなった。
何か言ってやるべきなのか、どんな言葉をかけるべきなのか、今の俺には答えを出せない。
彼女が選べなくなって、自分が選べたはずの道を、選ばなかった俺には。
魔法から逃げ出した、俺には。
今さらのように魔法に関わっている、俺には。
その道を失った彼女が何の感情を吐露しようと、何も言えないのだ。
「ねぇ、コウ君………」
黙々と収納作業を続ける俺に、今度はハッキリとテルノアが声をかけてきた。
「………なんだ?」
咄嗟のことですぐに返事が出来なかったが、俺の問い返しにテルノアは疑問を抱くことなく言う。
「昔みたいな無茶は、しないでね」
…………ああ、
「………分かってるよ」
俺は深く頷きを返して、サベルジ武具店を出た。
装備は揃った。
魔法薬の補填もある程度の目処はついてきた。
明日には魔法薬『雲隠れ』も人数分と予備分が完成する。
体力回復・魔力回復用魔法薬も念のため30ずつくらい用意し、あとは罠用の爆発系の魔法薬が20、麻痺・毒系の魔法薬が10、その他補助用の魔法薬もいくつか作った。
一応は一日で行き来できるはずなんだが、食糧も三日分くらい持っていくか。もしもってこともあるしな。
「これで装備の方はほぼ準備万端だな」
あとは、これらを全員が完璧に使いこなせるか、か。
使いこなせても攻略できるかはわからねぇけど。
ともあれ、いよいよ明後日には出陣だな。
朝。
まだ朝日も昇っていない頃に、俺は家を出た。
昨日はチームのみんなに装備を配ってそれぞれ自分に馴染ませることに時間を使った。
実戦的な模擬戦もやったし、全員が装備の感触を掴むのにそう長くは掛からなかったが、所詮は付け焼き刃に違いはない。
いつボロが出るとも分からないのも怖いが、装備があるのと無いのとでは生存率が段違いだ。中でも今回は特に良い物を用意したんだから、使いこなせなかったとしても全員の危険度は下げれたはず……………………たぶん。
……………………………ホントに大丈夫か?
「意外と心配性だよね、コウジ………」
「まあ、コウジさんはこう見えて慎重派だからな」
タチバナと秋人が何か言ってやがるが、俺はそれどころじゃねぇ。
良いのかホントに。大丈夫なのか?
「おい、コウジ。此処まで来たんだし、いい加減腹くくって行こうぜ」
「そうそう、作戦とか装備の使い方とか、昨日散々チェックしたんだし」
ラルフ、そしてイメルダもさっさと行こうと催促してくる。
しゃーねー、じゃ行くか。




