初任務
俺がこちら側の世界へ来てから約一ヶ月ほどたった。
嬉しい事にロブ爺から見てもこんなに魔法の習得が早いヤツは初めて見たというくらいのスピードで魔法を使う事が出来るようになった。
ある日の晩、家でこんな会話が交わされた。
『もう少しでデントも学校を卒業するし、スバルの魔法の習得も早いから…どうだ、3人でチームを組んで初任務といかないか?』
ハルの提案である。少し驚いた。自分がいくら魔法の習得が早いからって何年間も勉強してきたデントといままで1人で任務をこなしてきたハルと任務に行って足を引っ張ることにはならないだろうか。
『俺は賛成だよ。だってスバルは1ヶ月で魔法が使えちゃうんだもん、そこらへんの天才より何百倍すごいよ!』
『スバルはどうだ?』
迷う…。勿論魔法は使えてもまだ実戦はしていない。考えているうちに黙ってしまった。
『では…自分の心が決まっているならロブ爺に相談してみてくれ。出来るだけ早い方がいいが…まぁ焦らなくてもいいぞ』
不安はあったが少し実践で自分がどれくらいできるかにも興味があった。
『明日確認してくる』
『いやぁ、それにしても楽しみだなぁ。スバルの魔法、俺どんなんかまだ見てないからな』
『デントやハルはどんな魔法を使うの?』
『俺は雷属性、姉さんは風属性で「春風」って呼ばれるくらいここらで名が知れてるんだ』
『すげぇぇぇ!』
『まぁ、それほどでもないがな』
ハルが頬を赤らめて言った。照れている。ハルにもこんな一面があるんだなと思った。
『姉さん照れてる~』
『…うるさいっ!!!もう寝るぞ!!!』
『わー怒ったぁぁぁ、こわぁぁい』
デントがからかうとハルがいつものように枕を持ちデントに向かって投げつける。投げられた枕はデントの顔面に直撃し負けじとデントもやり返す。そして姉と弟のケンカが勃発する。この一ヶ月の間で何度もこの光景を見てきた。俺は兄弟はいないからこんな事はやった事がない。
やってみるか。
足元に転がってきた枕を拾い上げ思いっきりデントに投げつけた。
『おぉ、スバル、お前やんのかぁ?』
そう言ってる合間にハルがすかさず枕を投げつけ、デントは吹っ飛んだ。
あぁ、面白い。
三人で笑いあった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次の日の朝
いつものごとく、ハルにはね起こされ、朝の支度をする。今日はロブ爺になんて言われるだろうか…。
まぁダメって言われたら頑張るしかねぇな。
『行ってくるわぁ!』
今日は二人より早く家を出た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『ただいまぁ』
『おかえりぃ!』
二人分のお帰りが聞こえた。二人とも帰ってるな。
家に上がるなり早速デントが『どうだった?』と聞いてくる。『後で教えるよ。』と軽く流し、夕食の席に着いた。
『いただきます』
ビーフシチューをすすった。温かさが身にしみる。
『あのさぁ、俺ロブ爺に任務行ってもいい?って訊いたらね、まぁ経験あるのみじゃし行ってどんなもんか感じて来い!だって。だから一緒に任務行けるよ!』
『イェーイ!!!』
デントはめちゃめちゃ喜んでいる。
『スバル自身は大丈夫か?』
『まぁ…ちょっと不安だけど二人と一緒だから大丈夫だ!』
『よしっ!!!それでは二人とも明日は私と一緒に仕事場へ行くぞ!』
『やったぜ!ホントこの日をどれだけ待ったことか…』
『ごちそうさま、俺明日に備えてもう寝るよ』
『ごちそうさま、デントも喜んでばかりいないで早く食べて早く寝る!少しはスバルを見習わんか…』
『…はーい』
俺は先にひとりで布団についた。初任務かぁ。どんなのをやるんだろうか。気になって眠れなさそうだ。
でも魔導士だからいつでも死と隣り合わせなんだろうな。それぐらいの覚悟を持たなければ…。明日は頑張ろう!と自分に言い聞かせ眠りに着いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次の朝
いつもより少し早く起こされ支度をするなり早速仕事場へ向かった。仕事場とは役所の事である。そこで任務を選び、目的地に出発するといった流れである。任務にもランクがあり下級任務、中級任務、上級任務、極秘任務がある。勿論俺とデントは初めてなので下級任務しか受けられない。しかし、ハルは中級任務まで受けられるとのこと。十三歳の女の子がひとりで中級任務をこなすのはスゴイことらしい。
『あれが役所だ』
ハルの指さす先にいかにもそれらしい城のような建物があった。門番に礼をして役所の中に入った。
『ここには私たち魔導士だけではなく民間の人も来ているからな、あまり騒がないように』
『は~い』
しばらく歩くとビラのようなものが複数張ってあるボードの前まで来た。
『ここでこの張り紙が任務だ。青が下級、緑が中級、赤が上級だ。極秘任務は黒いらしいが、極秘任務は役所のお偉いさん、つまり街長じきじきに渡されるらしい。』
そう言ってハルが青い張り紙をとろうとした瞬間デントがその手を叩き、緑色の紙を取り行ってしまった。
『コラぁっ!!!デントっ!!!』
デントはこっちを見て口に指をたて静かにとジェスチャーしてきた。
『追いかけねぇの?』
『あいつはまだ下級しか出来ないからな。私の許可がないと中級には行けない』
そう言って青い張り紙を取った。そこに書いてあった依頼は、ストーカーを再起不能にして下さいという内容だった。
『これくらいなら楽勝だろう』
『姉さ~ん、中級許可してよぉ』
すがってきたデントに向けて顔面にハルのパンチが飛んだ。
『勝手な行動は慎め』
『…ば、ばい…』
依頼書には目的地氷の国、ハルジオンの街、〇〇地区…とあった。
『よし、行くぞ!!』
『ストーカーなんかこのデント様がぶっ飛ばしてやる!!!』
そして俺達3人は初任務へ出発した。




