ただ生まれ変わっただけだなんて、そんなことなかった
「ねえさま!こっち!」
アレクにそう言われて、少し離れたガゼボの方を見ると、
王子とレジーナ嬢がお話をしているようだった。
王子の顔をよく見ると、まるでこれから食べられる動物のような顔をしていた。とても可愛い。
今はそんなことを考えている場合ではなかった。
ただ、レジーナは私たちより上の爵位である。どうしたものか・・と考えてる間に、
「ヴァン様!」
アレクは、爵位が上の人たちが話しているとこに割って入ってはいけないなどと、気にしていないようで、二人の元に駆け寄っていった。
「アレク!」
王子はアレクを見ると涙目になり、アレクのそばに駆け寄った。
もうこれは私も出ていくしかない
「大変失礼致しました、アルテシオン様・・幼い弟は交友のある王子が心配になり、飛び出してしまったようでして。」
「いえ、この場は子供たちだけの交流パーティーですもの・・気にしないで」
さすがはあのレジーナだ。アレクたちの一個下の5歳であるだろうに、
とても大人びている。
ただ、まだ子供っぽい部分もあるのか。言葉ではそう言いながら、涙目になってアレクにかけよる王子を見て、少しだけ拗ねたような表情を見せた。
あれ、もしかして・・この子もかわいい?
実は、物語はもうすでに婚約したところから始まっていて、
そのころはもう、王子は彼女に劣等感を感じて、不仲だった為、
この頃の二人はまだ知らないのだ。
もしかして、この二人の関係を変えていけば、
物語は変わるのではないだろうか。
よし、一か八か試してみよう・・
「アルテシオン様、私フォンクライスト家長女のライザと申しますわ。
ご挨拶が遅くなって申し訳ありません。」
「先ほどから私のことを知っていらっしゃったのですね。アルテシオン家長女のレジーナですわ。以後お見知りおきを」
私は近くにいたアレクをじっと見つめた。
挨拶しろという圧である
「あ、アレクシス・フォンクライストです!よ、よろしくね!」
おい、敬語を使え!
ちゃんと挨拶出来たのはえらいけど、敬語がないことは後で注意しよう
「フォンクライスト令息、フォンクライスト嬢ですね。覚えておきますわ」
よし、今しかない。
「じ、実は・・王子は引きこもりなので、女の子と話すのに慣れてないんです!だから、緊張しているだけで、慣れれば大丈夫なのです!」
「え・・ライザねえさま!!」
王子は顔を真っ赤にし、手で顔を覆いショックを受けたように落ち込んでいる。
「そ、そうです!王子はちょっと暗いとこあるから!可愛すぎる女の子と話して困っちゃったんだよ!」
「あ、アレクまで・・」
王子はますます顔を赤くして、今にも泣き出しそうになっている。
まずい。
さすがに言いすぎたかもしれない。
正直これは、賭けでしかない。王子と仲がいいと言っても不敬罪に当たる発言である。
「……なるほど」
それまで黙って王子の様子を見ていたレジーナ嬢が、ぽん、と手を叩いた。
「つまり、王子は女の子に慣れていらっしゃらないのですね?」
「そ、そうなんです!」
私はここぞとばかりに頷いた。
「では、私とお話をすることから始めればよろしいのですね」
「……え?」
王子が顔を上げた。
「私なら、同じ年頃の女の子ですもの。すぐに慣れていただけると思いますわ」
「いや、別に……」
「殿下」
「……はい」
王子は別に、レジーナと仲良くはしたくなさそうだったが、レジーナの圧に負けたのか素直に小さく返事をした。
案外この二人は、すれ違ったしまっただけで気が合うのではないだろうか。
気が合うというより、この時点の王子は言う事を聞かせやすい引きこもりとも言うかもしれないが・・・
「王子!来週王子が我が家にいらっしゃる時、アルテシオン様もお呼びしたいのですが宜しいでしょうか。アルテシオン様はご都合いかがでしょうか。」
「えーー」
私がそう二人に話かけると、王子は不満そうにそう言ってくる。
それに私は全力で無視を決め込む。
一方、レジーナ嬢は嬉しそうにはにかみ
「勿論伺わせて頂きますわ」と言ってきた。やっぱり私の目に狂いはなかった。




