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六角形の都市は攻め込むのはもちろん、一度足を踏み入れれば逃げ出すことすら難しい造りになっている。
東西は深い森に覆われ、どんな罠が張り巡らされているのか分からない。
北は海。
海岸までは切り立った断崖が続いている。
船を借りるどころか、海へ降りることすら容易ではないだろう。
残る南は、我々が入ってきた唯一の出入口だが、関門には警備兵が常駐し、通行人の検閲を行っている。
もし魔法師たちが既に連絡を回していたら、あの関門を無事に通り抜けることはできないだろう。
となると………、
「南北は避けた方がいいだろう。残るは東西になるが、セテリアはここより東の地だったな」
「そうだ。東の森を突っ切るか?」
ベリルの言葉に首を振る。
あのとき何人かの魔法師が、殿下と挨拶を交わしていた。
もし、奴等に情報が渡っていれば厄介だ。
「近道は東だ。だが、もし彼等がこちらの目的を把握しているのなら、東を重点的に固めてくるだろう」
「迂回にはなるけど、確実なのは西のルートってことね」
「なるほど。それなら、なるべく早く行動に出た方が良さそうだな。フェルジス、周囲に敵の気配はあるか?」
「う〜ん…。出入り口に監視がいるね。裏から出た方が良さそうだ」
「よし。それなら準備が整い次第、裏口から出よう」
ベリルの声を元に各々が出立の準備を進めた。
・・・
「ここだ」
声を顰めて、裏口から出る。
周りにはまだ気づかれていないようだ。
「このまま一気に西まで進もう。落合場所は作戦通りに」
細く暗い裏道を列になって進む。
敵がどれだけいるかは把握できない。
下手に戦力を分散するよりも、まとまって行動した方が安全だろう。
迷路のように続く裏路地を、曲がっては進むを繰り返す。
道端には、倒れた魔人の姿が幾人も見えた。
ふと、上空から何かが急速に近づいてくる。
どうやら、気づかれてしまったようだ。
「来るぞ」
ベリルの声と共に、長いローブを纏った男女が現れる。
「こんばんは。いい夜ですね」
「そんなに急いでどこに行くんだ?」
二人はプカプカと浮きながら、こちらを見下ろしている。
「そこを退いてくれ。邪魔だ」
ベリルの冷たい声に、二人がヨヨヨと悲しんだフリをする。
「おやまぁ…。挨拶をしただけですのに」
「なんて冷たい異邦人なんだ…。ランカ」
「もちろんよ」
二人は杖を取り出すと、こちらに杖先を向けた。
ふわりと髪が浮き、詠唱が始まる。
魔法師の嫌なところは、射程範囲外から攻撃してくるところだ。
「ベリル」
「ああ、行こう」
盾を構えて、彼等に急速に近づく。
魔法の発動に詠唱が必要なら、その前に落とせばいい。
地を強く蹴り、詠唱を唱える男に向かって盾を振り落とした。
ダンッッッ
鈍い音と共に、男の肩と杖が砕ける。
痛みに悶える男の側面を続けて殴り飛ばす。
ローブを纏った男は、壁に体を打ちつけるグダリと動かなくなった。
手を翳して呼気を確認する。
生きてはいるようだ。
隣を見ると、女の方も既に鎮圧済みだった。
「行こう」
ベリルの声に立ち上がり、また暗い路地裏を進む。




