1
思い出すのは、赤色の景色。
我が家は焼き払われ、街の至る所から悲鳴と怒声が響く。
何者かに追いかけられる恐怖を味わいながら、必死で足を動かした。
黒く上がる煙と、燃え盛る街、街中に飛び散る赤黒い液。
脳裏にこびりつく赤は、年月がどれだけ経っても薄れることはなかった。
・・・
パチパチと上がる火の粉を見つめる。
周囲に魔物の気配はなく、ただ仲間の呼吸音だけが聞こえた。
「ダルカン、見張り変わるよ」
華奢な男がひょこりと姿を表す。
シーフのヤイラだ。
隣にぽすりと座ると、まだ幼い両目が鎧越しにこちらを覗く。
「交代の時間はまだだろう」
「もうすっかり目が覚めちゃって、眠れそうにないんだ」
彼が首を振るたびに、綺麗に整えられた黒髪がサラリと揺れた。
その顔には、少し疲労が浮かんでいる。
「そうか…。旅は、辛くないか」
「まあね。でも、俺は戦闘員ではないし。問題ないさ。君は?前線だと怪我も多いだろ」
「辛くはない。お前達の役に立てているのなら、それでいい」
「……君、見た目とのギャップが凄いよね。もっと傍若無人で恐ろしい男なのかと思ってた」
「そうか」
「とにかく。君はこのチームの要だろ?ゆっくり休んでもらわなきゃ。ほら、早く寝なよ」
「すまない。あとは頼んだ」
促されて身体を起こすと、ガチャリと鉄の塊が音を立てる。仲間を起こしてしまわないように、ゆっくりと移動した。
木の幹にもたれて目を閉じる。
火が弾ける音と共にダルカンは眠りについた。
・・・
2年前、あの男に誘われてから、ダルカンの生活は一変した。
仲間と共に国を巡り、ときおりダンジョンを潜る。
お宝を山分けしては、酒場で皆と語り合った。
勿論、人が集まれば、仲違いなど煩わしいこともある。
しかし、背中を預けられる仲間がいることは、ダルカンにとってそれ以外に幸福なことだった。
・・・
賑やかな声に、思考が浮上する。
既に数名起床しているようだ。
ムクリと身体を起こし、川に向かう。
少し歩くと、水が流れる涼やかな音が聞こえてきた。
「おはよう、ダルカン!今日もいい身体してるな」
既に先客がいたようだ。
戦士、ナルクは人の良さそうな顔でニコリと笑う。
……凍った川に上裸で浸かりながら。
その端正な顔に似合わない筋骨隆々とした肉体は、鎧をつけたダルカンと比べても見劣りしない。
彼は日に焼けた腕を動かし、楽しそうに水浴びをしている。
外の気温は、マイナス10度を下回っていた。
「…寒くないのか」
「はははッ!筋肉が全て解決してくれるからな!お前もどうだ?」
「遠慮しておこう」
男を避け、川の上流を目指す。
少し離れた先に、まだ凍っていない綺麗な水を見つけた。
周囲に、人の気配はない。
兜を外すと、冷水で顔を洗う。
透明な水が肌を冷やし、一気に目が覚めた。




