第71話 暗殺者の妨害
それは、突然だった。
ファルメルの街を出発して、王都へ向けて馬車を走らせていた時だった。唐突にランパさん達の方から声が掛かった。
「おい! 何か騎馬っぽいのがこっちに来るぞ!」
「え! どこの騎馬かわかりますか!」
「わからん! 数は6騎、全員顔を隠している!」
「6騎! 暗殺者の可能性は?」
「まあ! あるだろうな! どうする!」
「このまま進みましょう! ギャリソンさん! スピード上げて下さい」
「畏まりました」
馬車に併走しながら、騎士バンガード殿はランパさん達に声を掛けた。
「ランパ! アコース! コズン! お前ら様子を見て来い! 俺は馬車を離れる訳にはいかねえ!」
「わかった! アコース! コズン! 用意はいいか!」
「はい!」
「準備オーケーです」
ランパさん達が6頭の騎馬の様子を見に行ってくれた、何事も無ければいいが。
様子を見に行ったランパさんが突然攻撃された。
「うお! なにしやがる!」
どうやらギリギリで回避できたようだけど、相手は間違いなくこちらを攻撃してきた。顔を隠しているところをみると、どうやら暗殺者だろう。もう王子の事がバレたのか、何処から情報が漏れたんだ。
今はそんな事はどうでもいい。6頭の騎馬がこちらに攻撃してきたって事が事実だ。
なら、やるしかない。
「皆さん! 戦闘になりました! 迎撃行動を! サーシャ、弓で攻撃!」
「わかった!」
「いいですね、馬車から降りずにやりましょう、ランディウス、王都までの距離は!」
「もう少しで王都です!」
ファンナが身構えながら言った。
「結婚式まであと2日、まさかここで王子の妨害に出てくるとは、ギア・ドコス伯爵は本気で王子を王都に行かせたくないみたいですね」
「そうだね、あたいは霧を出す魔法を使うよ!」
「お願いします、とりあえず馬車に座っていましょう、王都まで行けば暗殺者達も手が出せないでしょうから、バンガード殿! 護衛願います!」
「おう! 任しとけ!」
ランパさん達が見事な連携で4頭の騎馬の足止めをしている。凄いな。
残りの2頭が馬車に近づく、その内の一人が吹き矢を使った。
「あまい!」
俺は鉄の盾で吹き矢の矢を弾く。
今の一撃、間違いなく王子を狙っていた。すばやさ5にしておいて良かった。咄嗟の動きができた。
「ジロー! やっちゃっていいんだよね!」
「はい!相手は暗殺者です、返り討ちにあう事ぐらい想定していたでしょうからね」
「じゃあいくよ!・・・そこ! 狙ったわよ!」
サーシャの弓が暗殺者の一人を倒す。こちらに来ているのは残り一人。
「おっと! 俺の事も忘れて貰っちゃ困るぜ!」
バンガード殿が槍を使って暗殺者を攻撃。見事に馬から暗殺者を落とした。
走っている馬から落ちたんだ、タダでは済むまい。
ルビーさんが霧の魔法を使って残り4頭の騎馬を撹乱する。俺達の乗った馬車は霧がうまく隠してくれている様だ。
残り4頭の騎馬が見当たらなくなった。
ランパさん達もすぐに合流してきた、みんな無事のようだ。
「すまん、足止めだけで精一杯だった」
「いえ、よく護衛してくださいました、ありがとうございます」
「ジロー様、速度はこのままでよいのですかな」
「はい、お願いします、ギャリソンさん」
まだ安心は出来ないからね、いつまた襲ってくるかわからないからね。
「皆さん、警戒態勢のままでいきましょう」
「あいよ」
馬車は速度を上げたまま、王都まで突き進んでいく。
「すみません、みなさん。私の事で危険な目に会わせてしまって」
「気にしなさんな殿下、こんな事は冒険者やってれば幾らでも起こる事さね」
「ルビーさんのおっしゃる通りですよ、私なんか何もしてませんから」
「ファンナさんはいざって時に強いですけどね」
「いえいえ、そんな・・・」
「なにはともあれ、もう少しで王都だ、しっかり護衛しますんで安心してくだせい殿下」
「頼りにさせて貰います、バンガード」
「ま、この私に任せなさい、無事に王都まで護衛するわ、そうよねみんな」
「そうですね、エミリーさんの言う通りです、一応警戒は怠らない様にしますけどね」
「あ、もうそろそろ霧が晴れるよ」
ルビーさんの魔法の霧が少しづつ晴れてきた様だ。
霧が晴れるとそこには、4頭の騎馬が待ち構えていた。
「ギャリソンさん! 突っ切って!」
「わかりました!」
なんて事だ!待ち伏せしてやがったのか、どうりで静かな訳だ。暗殺者達のすぐ脇を俺達の馬車とバンガード殿達がすり抜ける。突然の事で暗殺者達も慌てているようだ。この隙に通り過ぎる。当然暗殺者達が追ってきた。今度は後ろから追われる形になった。
「まずいよジローさん! 奴ら速度を上げてきたよ!」
「ギャリソンさん! もっと速度を上げて!」
「これが精一杯でございます!」
「ランディウス! 王都まであとどれくらいだ!」
「もうまもなく!」
「よし! このまま突っ切れ!」
ここまできたら後は馬に頑張って貰うしかない。頼むぞ、馬。二頭立ては伊達じゃないだろう。
街道をもの凄い速度で馬車が走ってゆく。
暗殺者達の馬も追いすがってくる、王都はまだか。
バンガード殿達も戦うのをやめて逃げの一手だ。
このまま王都の門衛の所まで引き連れて行けば、奴らは手出し出来ないだろう。
「見えた! 王都の城壁だ!」
「よーし、このままの速度で行きましょう」
「畏まりました」
俺達の馬車はそのままの速度を落とさずに王都ザンジバルの城壁の門の所まで来た。
遠くの方から門衛が大声でこちらに呼びかけた。
「おーい! 止まれー! 検問だー!」
「ミレーヌ伯爵家のものです! 追われております! 押し通りますぞ!」
そのまま検問官を素通りして、王都の城壁を抜ける。
よし! 王都に入った。後ろを振り返る。
暗殺者達は城壁の検問官達に取り囲まれていた、よし。
「なんとかなったね、ジローさん」
「そうですね、ルビーさん」
ようやく王都入りできた、よかった。
「ギャリソンさん、速度を落として下さい」
「畏まりました、ジロー様」
ふう~やれやれ、ようやくザンジバル王国の王都まで来たか。
さて、これからどうしたもんかな。
おじさんちょっと疲れたよ




