37 エピローグ
〇山奥の集落。
T「一年後」
放置され崩壊が進んだ住居が続く。
汗を流し、小さな畑を耕している千晶。
傍らには大きなバスケットが置いてある。
と、千晶の背後から声がする。
杏奈「ずいぶんと探したわよ。千晶様」
杏奈と拳銃を構えた絵里香が立っている。
千晶「杏奈先生!?絵里香さん!?」
杏奈「千晶様。ご自分の信者たちを見捨てて雲隠れするなんて酷いわよ」
絵里香「まさか、育人の生まれ故郷に潜伏しているとはね」
杏奈「ご存知でしょうが慈愛の母は解体されました。信者のほとんどは、育人が死んだとたんに憑き物が落ちたように元に戻ってしまったわ。未曾有の国家的危機でしたが、なんとか収拾がつき、世間も落ち着きました」
千晶「あなた達ももう育人の呪縛から解放されたのではないのですか?」
杏奈「他の信者と一緒にしないで!私たちは自分の意志で育人にすべてを捧げてて来たのよ!」
絵里香「でも、あなたは私たちから永遠に育人を奪い取ってしまった!許せないわ!」
杏奈「育人の子供はどこよ!?どうせ産んだのでしょ?」
千晶「お願い!あの子には手を出さないで。私はどうなってもいいから!」
絵里香、銃を撃つ。
杏奈「言われなくてもあなたは殺しますよ、千晶様。それとあなたの子供ね」
胸を撃ち抜かれた千晶、地面に横たわる。
畑の傍らに置かれたバスケットに向かって、必死に手を伸ばす。
事切れる千晶。
じっと千晶の死体を見下ろしている杏奈。
絵里香「杏奈先生!いました!」
バスケットの中、毛布にくるまって眠る赤ん坊。
バスケットの中から赤ん坊を取り上げる絵里香。
杏奈「殺しなさい!」
絵里香、銃を撃つ。
杏奈「え、絵里香…!?」
絵里香の放った銃弾は杏奈の胸を貫いていた。
絵里香「あっ…あああっ!!できない!この子を傷つけるなんてできません!!」
拳銃を投げ捨てる絵里香。
前のめりに畑の中に崩れ落ちる杏奈。
杏奈「その子に……触れてしまったのね……」
事切れる杏奈。
赤ん坊、火のついたように泣き出す。
絵里香、赤ん坊を抱きかかえてあやす。
絵里香「おう、よしよし!泣くんじゃないのよ!私がずっとずっと守ってあげるからね………」
絵里香の背後の鎮守の森から不気味な笑い声が響いてくる。
完




