36 叛乱
〇慈愛の母本部。説法会場。夜。
大広間に百人近くの信者が座っている。
壇上に立つ女装した育人。
傍らには千晶と房江が座っている。
育人「諸君!一斉蜂起の時が来た!すべての慈愛の母信者は、この世の害悪、男を根絶するのだ!」
房江「育人様!それはまだ時期尚早です!考え直して下さい」
育人「いいえ!私の力が弱っているのを感じる。やるなら今しかない!」
房江「でも、今、叛乱を起こしてもすぐに鎮圧されてしまいます」
育人「確かに男性に比べて我が信者は圧倒的に少数だ。しかし、警官や自衛官の妻や母親の中には信者が大勢いる。男どもが油断して隣で眠っている時に殺せばいいのだ。食事に毒を盛っていい。男どもはまさか家族に殺されるとは夢にも思っていないだろう」
スマホを掲げる育人。
育人「私は今からすべての信者にメールで命令を送る。『男を殺せ!』と!!」
〇寝室で眠っている夫婦。
妻のスマホの着信音が鳴る。
起き上がってスマホを見る妻。
ゆっくりと台所に行って、包丁を取る妻。
寝室に戻って、眠っている夫の胸に包丁を突き刺す。
〇交番。
深夜勤務の婦人警官のスマホの着信音が鳴る。
スマホを見る婦人警官。
周囲の男性警察官をいきなり射殺する。
〇自衛隊基地。
自動小銃を抱えた女性自衛官数名が宿舎内を走っている。
ドアを開け、眠っている男性自衛官達に向かって小銃を乱射する。
〇繁華街。
血塗れの男性の死体が道路に散乱している。
逃げ回る男性たち。
ナイフを持った女性たちが追いかけている。
〇慈愛の母本部。説法会場。夜。
スマホでTVニュースを見ている育人。
ビル街に大規模火災が起きている様子が映っている。
育人「ハハハハハ!殺せ!殺せ!人間なんか殺しあって滅んでしまえ!!」
狂気じみた高笑いをする育人。
育人「ウッ!?」
育人、驚愕の表情。
千晶が育人の脇腹にナイフを突き刺している。
信者たち「キャアーッ!?」
騒然となる説法会場。
育人、ゆっくりと倒れて横になる。
千晶が育人を見下ろして立っている。
育人「ど、どうして………?」
千晶「あ、あなたがいけないのよ!私の子供を殺そうとするから!」
育人「自分の子供を守るために…俺を殺すのか……」
育人、皮肉な笑みを浮かべる。
育人「母性愛に……俺は……負けたのか…………」
眼を閉じる育人。




