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1M「ハローワーク行こ」

 お食事券と汚職事件って、おんなじ言葉なのに全然違うよね。


 あはは……と乾いた笑いをしながら、そんな現実逃避をしていた私は、土下座する両親と兄を見ながら、胃薬を取り出した。

 確かに、この家族に振り回されることはあったけど、まさか、ここまで私の運が悪いと思わなかったぜ……ハハハ。



 私、山田 蛍(やまだ ほたる)、24歳は、本日会社が倒産し無職になったと同時に、家族に1200万円の借金があることが発覚しました。



「ほんとに、ほんっと~にごめんね!ほーちゃん……!」

「でも、全然そんな人には見えなかったんだ!まさか、連帯保証人になったら、借金を押し付けられた挙句、逃げられるなんて、思ってなかったんだ……」

「ほだるぅぅぅぅううう!!兄ちゃんが不甲斐ないばっかりに……ごべん、ごべんねぇぇぇぇええええええ!!!」


 泣き虫な兄を泣き止ませる為に、兄の背中をポンポンと子供をあやすように叩きながら、ため息をついた。


 元々、お人好しで人を疑うということを知らない私の家族は、私が生まれた時点で、騙されていないのが奇跡と言えるぐらいの考えなしだった。

 怪しげな宗教に入れられそうになるわ、訪問販売に来た人たちの商品は全部買おうとするわ、オレオレ詐欺なんて、何十回とひっかかりそうになって、振り込むギリギリでいつも私が止めていた。

 他の家庭よりも明らかに数が多いため、確実に我が家は、そういう人たちの格好の獲物として認識されていただろう。


 そんな家族だったが、私はそれも含めて家族が好きだったし、私も家族には結構迷惑をかけていたから、おあいこだと思って、借金とかしたら、私が頑張って返せばいいと思っていた。

 2人とも、ちゃんと仕事について稼いでいたし、兄も、普段は何も考えていない泣き虫のくせに、自分の好きなことになると途端に真面目になってきちんと稼いでくる人だったから、そうそう借金なんてしないと思ってた。

 ……そう、思ってたんだけど……。


 ……さて、唐突だけど、家族のことだけでなく、私のことについても語ろうと思う。

 私は、山田家の長女としてこの世に生を受けたわけだけど、小さな私の些細な冗談でも全て真に受ける両親と兄を見て、幼いながらも“あ、この家族は私が守らなきゃ”という使命感に駆られていた。

 その使命感のお陰で、今の今まで、騙されずにすんでいたんだけど……。


 そんな私だったけど、一つだけ、どうにもならないことがあった。

 ……私は、とっても不幸な人間だったのだ。


 ジャンケンをすれば必ず負け、鳥の真下を通れば必ず糞を落とされ、数量限定の物を海に行けば私の目の前で売り切れる。

 そして、人を見る目というか、全てにおいて見る目がないらしく、私がいいなと思ったものは大体不良品だし、好きになった人はほとんどクズだ。

 ほんと、そんな不幸でしかない娘を、笑顔で“しょうがないなぁ”と言って迎えてくれた家族には、感謝してもしきれないと思ってる。


 そんな私でも、頑張って商業系の高校に入学し、そこで次々と資格を取っていき、高校卒業と同時にとある企業に就職した。

 ……した、のはいいけれど、やっぱり私は、見る目というのがないらしい。


 そこは、ブラック企業だった。


 休憩時間と称されていた時間は、ただの仕事時間で、お昼ご飯は仕事を片手に食べるのが普通だった。

 3年間続けたけれど、残業中に倒れて、そのまま会社で朝を迎えたときに、もう無理だと悟った私は、引き止める先輩たちを無視して、辞表を出した。

 そしてようやくやめることの出来た私は、ハローワークへ行き、次の職を探した。


 次に私が就職したところは、ブラックでもなく、いたって普通のところだった。

 そこで私は、会計係を任されたんだけど……なんど計算しても、数字が合わなかった。

 調べてみると、ところどころ、不自然に数字を合わせたようなところが、帳簿から見つかった。


 その会社に就職してから一年目は、それがなんなのか、それをしているのが誰なのかを突き止めることに勢力をだし、二年目と三年目は、それの証拠集めをしていた。

 ……そして、会社の偉い方々が、汚職に手を染めていることが発覚した。

 その事実を、証拠まで集めてしまった私は、糾弾役は正義感の強い方に任せ、今日という日を迎えた。


 ……その結果、汚職が発覚し、我が社は倒産した。


 きちんと帳簿を計算していったところ、大赤字であることがわかり、結局、倒産してしまったのだ。

 けれど、私の資格は結構多いし、簡単に職が決まるだろうと思っていた。

 ……思っていたところで、これだ。


 知り合いの連帯保証人になったところ、1200万の借金を押し付けられて逃げられた家族を見ながら、今度は深い溜息をつく。

 家の物は全部差し押さえられて、仕事道具もない状態だから、返済するためのお金を稼ごうにも、稼げない状態らしい。

 ちなみに、結構前からやばかったらしいが、私に言わなかったのは、私に迷惑をかけたくなかったかららしい。

 ……こうやって、私の家に来て泣きついている時点で、意味ないと思うんだけどな……。


 とりあえず、現状としては、仕事のできない家族3人と、無職の私。

 借金は1200万円で、3ヶ月いないに返さなければならない。

 ……あー……そういや、差し押さえられた家のローンってどうなる……いや、考えるのはやめよう。



 ……とりあえず、明日ハローワーク行こ。




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