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第十四話 悪役聖女の贈り物 ※ユースティア視点

 

「大聖女様。お荷物です」

「あぁ、ありがとう」


 お気に入りの侍女──フランに荷物の到着を告げられ、私はほくそ笑んだ。

 バルコニーから部屋に戻り、フランに誰もいないことを確かめさせる。


「誰も居ません。ユースティア様」

「よし。ほら、あなたもこっちに来なさい」


 フランが持ってきたのはお姉さまのトランクだ。

 元・大聖女であり先々代大聖女である母からすべてを受け継いだ女の荷物。

 母の形見は私が見つけ次第回収しているけれど……あれが全部だとは思えない。


「絶対に何か隠しているはずよ」

「はい。荷物もかなり重いです」

「そうよねっ?」


 ふふ。これは楽しみだわぁ。

 あの根暗女、一体何を隠していたのかしら。


「さっそく見ていきましょ♪」


 私は宝箱を開ける子供みたいな気分でトランクを開ける。

 そこには予想通り、きらきらとした宝石箱のような光景が広がっていた。


「わぁ……」

「これは、すごいですね……」


 目が覚めるような美しいドレスが入っていた。

 大聖女だった母のものだろう。

 白いレース生地に金糸が入っていて、手足のところに刺繍が入っている。


 広げてみると、それはもう見事な出来栄えだった。

 背中には神聖術を使いやすくするための魔術陣まで刻まれていた。

 このドレスを一枚作るだけで、どれだけかかるのだろう。


「あの女、こんなものを隠していたなんて!」

「見てくださいユースティア様! こちらに宝石が!」

「まぁ!」


 それは見事な宝石の数々だった。

 ドレスの下に入っている宝石箱、大金貨二十枚、どれも聖女が持つには過ぎたる品物だ。


「ふふ。あははははは! やっぱり隠してたわね!」


 まさかこんなにも隠しているだなんて思わなかったわ!

 姉の荷物はほとんど私が検閲していたはずなのに、どこに隠していたの?


「わぁ。これ、ピンクブラッド……ものすごく希少な宝石ですよ。産出地が限られていて極一部でしか手に入らないっていう……」

「確かに深くて綺麗な桃色ね。でも、私好みじゃないかな」


 桃色というと、どうしてもあの女の瞳を想起してしまう。

 視界に入っているのが気に入らなくて、私は手を振った。


「フラン。私はソレ要らないからあげるわよ」

「ほんとですか!?」

「えぇ。今回、お前はよくやってくれたもの」


 フランは大聖女付きの侍女として私によく尽くしてくれている。

 大聖女の仕事をサポートしてくれてるし、気に入らない姉を追い落とすためにずいぶん力を貸してもらった。このあたりで褒美の一つでも与えておいたほうがいいと思う。


「ありがとうございます! ユースティア様に一生ついていきます!」

「うん。それより見てよ! コレ、大聖女の極秘文書じゃない?」


 間違いなく姉の字で書かれてた書類がたくさん入っていた。

 ……あの姉、やってくれたわ。

 たぶん、私に引き継ぎしていない、独自のノウハウを隠し持っていたのよ。


 自分が大聖女として仕事をする時はこれにメモして知識を蓄えていたのね。

 そしていざ自分が戦場に送り出されることになったから、私を追い落とそうと企んだ……その策が裏目に出ているとも知らずに!


「このお金があれば色々出来そうね」

「間違いないですね」

「まずはパーティーを開きましょう。この前、アレのせいで台無しになったから、王太子殿下を招いてダンスをするわ」

「いいですね! ユースティア様ならどんな男性でもいちころですよ!」

「ふふ。当然よ! おっほほほほほ!」


 まさかこんなにも収穫があるなんて思わなかった!

 最高の気分だわ。今ならお姉さまに感謝してあげたいくらい!


「ユースティア様。早速着てみますか?」

「そうね。ドレスも着るけど……この知識も使ってみたいわ」


 私は顎に手を当て、


「次に大聖女としての御役目があるのはいつだったかしら」

「来週ですね。儀式のあと、隣国の公爵家が主催するパーティーに出る予定です」

「ヴォルフガング将軍のところよね…………あった!」


 お姉さまが残した文書の中にヴォルフガング将軍家の記述を見つける。

 まぁ! 将軍家の痴態も書かれているじゃない!

 これ、上手く使えば将軍家の弱みを握れるんじゃないかしら?


「なんて書いてあるんですか?」

「ダメよ、フラン。これは大聖女しか見れないやつなの」

「なるほど。まさに、ユースティア様に相応しい書類ですね」

「ふふ。分かってるじゃない♪」


 大聖女としてのドレス。

 煌びやかな宝石、平民が一生かかっても届かない巨額の財産。

 姉が蓄えた大聖女としての知識、ノウハウ。


 これを使って、私は一生贅沢をして過ごしてやるんだから!




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