第21話 計画通り
「な……ちょっと待ってくれ! それは……それは一体どういう事なんだ!? ツバサちゃん!?」
シュタインさんと一緒に戻ってきた一人が、突然声を荒げる。
僕が何かしてしまったのだろうか。だが、特に何かをした覚えはないのだけれど。
「その眼鏡……あぁぁぁっ! 眼鏡っ娘いいなぁ。眼鏡を掛けると、女の子は更に可愛らしさが二割増す」
「あ、眼鏡の事ですか。これは、通り掛かった方が暗闇対策だって言って、プレゼントしてくれたんです」
「通り掛かりの人からのプレゼント!? ううむ……確かに、その赤縁眼鏡もアリだ。だけど、ツバサちゃんには縁無し眼鏡の方が良いと思うのだが」
いや、赤縁でも縁無しでも、別にどっちでも良いです。
さっきの人も眼鏡が好きみたいだったけれど、眼鏡一つでそこまで拘らなくても良いんじゃないかな。
「待って。さっきは助けてもらった恩があったから何も言わなかったけれど、はっきり言ってツバサちゃんの可愛い顔に眼鏡って邪魔だと思うの!」
「何を言う! 眼鏡を掛ける事で知的なイメージを与える事も出来るし、眼鏡のデザインによっては不思議キャラを印象付ける事だって可能だ。それに眼鏡を外すと美少女という、お約束だってあるではないかっ!」
「眼鏡を外すと美少女……って、古っ! 知的なイメージ云々はまぁ分かるとしても、今時そんなキャラなんて殆ど居ないわよっ!」
「なん……だと……。俺が若い頃は鉄板キャラだったのに」
あー、昔のアニメを観てると、時々そういうキャラが出てくるよね。
熱く語るオジサンの年代なら、そういうアニメとピッタリ合いそうな気はする。
何にせよ、僕としては防御効果があるから身につけておけば良いと思うけどね。
「俺は眼鏡の有無でツバサちゃんの可愛らしさが変わるとは思わないが、普段コンタクトレンズの女性が眼鏡を掛けていたりすると、見慣れない見た目でドキッとしたりする気持ちは分かるな」
「それはつまり、シュタイン殿は眼鏡肯定派という事ですな?」
「いえ、シュタインさんはツバサちゃんに眼鏡が不要と言っているのよ。ねぇ、そうでしょう?」
何これ。僕の眼鏡でどうでも良い討論が開かれているんだけど。眼鏡を掛けるか掛けないかって、そんなに大事な事なの!?
それより、さっきシュタインさんが言っていたギルドスキルの方が重要だと思うのだけど。
シュタインさんはギルドレベルが上がっているはずと言っていたけれど、そのギルドレベルもどこで確認出来るのだろうか。
とりあえずステータスウインドウを開き、ギルドメンバーの情報が表示された辺りを見てみると、『天使護衛団』という項目を発見する。
おそらく、暗闇状態の時にメッセージが表示されてたのだろう。そこには、レベル4と記されていた。
「えっと、シュタインさん。ギルドの名前の所に、レベル4って表示されているんですが、ギルドスキルってどうやって取得するんですか?」
「ギルドレベル4っ!? この短時間でっ!? だがギルド創設直後の低レベル時はレベルが上がり易いとはいえ、この短時間でレベル4まで上がるだろうか」
僕の言葉に、眼鏡討論に巻き込まれ掛けていたシュタインさんが、驚きの声を上げる。
もしかして、このレベル4っていうのは関係の無い数値で、ギルドレベルは別の場所に書かれているのだろうか?
だけど、他にギルドの情報やレベルが記載されている所が無いし、やっぱりギルドレベルと思って良いのかな?
「あの、レベル4って凄いんですか?」
「まだこのゲーム自体が始まって一週間強だから、それなりにはね。ギルドの情報は、プレイヤーの情報と違って公開されているんだけど、今現在一番レベルの高いギルドでも、ギルドレベル8だからね」
「なるほど。ちなみに、その一番レベルの高いギルドって、どんなギルドなんですか?」
「『聖母の癒し』っていう名前のギルドで、大半が廃課金プレイヤーだって噂だよ」
名前からして、ヒーラーが多いギルドなのだろうか。
アコライトの二次クラス、プリーストやエクソシストが沢山居るギルドかな? それとも、調べてないから知らないけれど、アコライトの三次職も沢山居るとか?
まぁギルド同士で戦う訳でも無いから、あまり気にしなくても良いか。
何はともあれ、ギルドレベルが上がっているっていう事は、バードのスキルみたく、ギルドのスキルも取得出来るはずだ。
ステータスウインドウのスキルメニューを見てみると、ギルドスキルという項目が増えていた。
「シュタインさん。ギルドスキルポイントというのが三十あるんですけど、とりあえず要員拡張っていうスキルのレベルを上げれば良いですか?」
「そうだね。要員拡張のレベルを一つ上げる毎に、ギルドメンバー枠が六人増えるらしいから、とりあえず取れるだけ取っておけば良いと思うよ」
シュタインさんに言われた通り、ギルドスキルポイントを、要員拡張に全て注ぎ込む。
バードのスキルとは違い、レベルが上がる毎に必要なスキルポイントが五ポイント増加するみたいで、五、十、十五と要員拡張をレベル3にした事で、ギルドスキルポイントがゼロになった。
「要員拡張をレベル3にしました。えっと、だから、これで……初期の十二人に十八人増えて、三十人までメンバーが入れるって事ですね」
「そうだね。だから今風の塔へ来ているメンバーを全員加盟させる事が出来るようになったから、一先ず呼び戻そうか」
「呼び戻す……あ、GMコールですね」
アオイから教えてもらったGMコールというスキルを、ギルドスキル欄から使用すると、レスキューコールを使用した時と同じようなメッセージが表示される。
『GMコールのメッセージ欄に載せる内容を3秒以内に言ってください』
「えっと、ギルドメンバーの皆さん。ギルドレベルが上がりましたので、一旦戻ってきてください」
そう言って、暫く待って居ると、続々とギルドメンバーたちが率いるパーティが戻ってきた。
「おいおいおい。ギルドでの狩りって凄いんだな。小一時間程度の狩りで、めちゃくちゃレベルが上がったんだけど」
「俺も俺も。風の塔の一階だぜ? 正直、そんなに強いモンスターでも無いのに、レベルが上がる上がる」
「俺、この時間でレベル60になったから、後は条件さえ満たせば、三次クラスに転職出来ちゃうぜ。ツバサちゃん、俺もっと活躍するからね!」
ギルドメンバーたちが沢山レベルが上がった一方で、メンバーの上限に引っ掛かり、加盟出来なかった人たちが早く入れてくれと催促している。
その人たちを、シュタインさんが全員ギルドに加盟させ、一気にギルドメンバーが二十二人まで増えてしまった。
改めてギルドメンバー全員の情報を眺めていると、だいたいの人が三つくらいレベルが上がったみたいだ。
コージィさんなんて、一気にレベルが七つも上がり、レベル37となっている。
「……しかし、早くも全員がギルドに加盟する事が出来たのは嬉しい事だけど、それにしても早過ぎる。普通はもっと時間が掛かったのに」
「シュタインさん? 普通は……って、随分詳しいですね」
「まぁね。ツバサちゃんと、ツバサちゃんに集まる僕たち中年プレイヤーを纏めるには、ギルドを作るのが一番かなって思って、いろいろ調べたからね」
「あ、そう言えば、ギルド設立を提案した時点で、課金アイテムを用意されてましたよね。それって、もっと早くからギルドを作ろうって考えていたって事ですか?」
「あはは。まぁ実を言うと、初めて会った日から考えていたんだよね。ツバサちゃんをギルドマスターにしたギルドの事を」
随分と話がスムーズに進むと思っていたら、どうやらシュタインさんが僕の知らない所で、いつの間にか計画を進めていたらしい。
それなら、事前に一言くらい教えてくれても良かったのに。
内心そんな事を考えていると、
「想定よりもかなり早くなってしまったけれど、じゃあ次の段階へ移行しようか」
シュタインさんが気になる言葉を口にしてきた。




