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『琉偉』と『過去』


琉偉は夢の中にいた。


昔の見慣れた風景ふうけいだ…


「ん?あれ?俺…何してたんだっけ??確か…変な世界に行って風俗ふうぞく行って何かにバレて殺されそうになった夢??…リアルだったな…」


布団ふとんに座り夢の中の出来事を思い出そうとする琉偉。


(なんか…長い夢だった様な…もう思い出せないな)


「あっ!ヤベーーっ!先輩せんぱい集会しゅうかい観に行かないと!」


『当時中学生』の琉偉は土曜の夜の日課にっかである暴走族ぼうそうぞく集会しゅうかいを寝過ごす所だった。


必死ひっし自転車じてんしゃぐ琉偉。


そこに…合流ごうりゅうする1人の少年。


「琉偉!遅いぞ!…もうそろこの道を通るはすだぞ!」


「悪い!夕方寝たら夜まで寝てた!!…先輩…まだかなぁ?来年は俺たちも単車たんしゃで走りたいな!!『友也ともや』!」


琉偉が友也と呼ばれる少年に軽く謝り、単車で走る自分を想像そうぞう心震こころふるわせる琉偉少年。


「…俺の方が免許めんきょ取るの早いから俺の方が先だな!琉偉!」


友也が琉偉に白い歯を見せて笑って言う。


「そしたら…俺が免許取るまで後ろに乗せてくれよ!友也!」


「おう!当たり前だ…任せろよ!琉偉」


2人はグレた親友しんゆうだった。



だが、ある時そんな友情ゆうじょう暗雲あんうんが立ち込める。


「話ってなんだよ?…友也…テメーまさか女出来たか??中学で童貞どーてー捨てる気だな!?」


友也に話があると電話で言われ、深夜しんやのコンビニに呼び出された琉偉は勘繰かんぐって友也に言い寄った。


「ばっか!ちげぇーよ!……あのさぁ…実は俺…引っ越しするらしい…だから地元じもと離れるっぽい…」


突然とつぜんの話だった。もうすぐ中学生を卒業そつぎょうという時、友也は親の事情で引っ越す事を琉偉に伝えた。


「…は?…マジかよ!?……どこに引っ越すんだよ?」


琉偉はショックで言葉少なめに友也に問う。


「実は……隣街となりまちだ!はっ!ビビったろ??……だから、まだ俺ら遊べるな!!」


「…おい!マジでショックだったんだ!!……返せ!…あの時の俺のピュアハート返せ!クソ友也!」



友也はおどけて琉偉が半ギレで叫ぶ。


「琉偉!!………ありがとな!」


「なんだよ!気持ち悪りぃな!」


「いや…マジで!」


友也は少し泣いてる様に見えた琉偉だった。



友也が隣街に引っ越して半年が経った…だが、親友からの電話はかかってこなかった。




「くっそ!アイツ引っ越してから1回も連絡してこない…ってか連絡先すら教えない…どーなってんだよ!クソったれ!…『ゴン』…!!」


琉偉はどうしょうもない苛立ちで自分の部屋の壁を殴る。


「おい!クソガキうるぜーぞ!!」


隣の部屋から怒号どごうひびく。


(ヤベー隣の住人のチンピラオヤジがキレた!)


「はぁ…このボロアパートやだなぁ…」


琉偉は生まれた時から裕福ゆうふくな方では無かった。


琉偉が7歳の時、父は母を捨て、他の女と居なくなった。


母は酒とくすりはまり家には寄り付かなくなっていた。



琉偉は『家族かぞく』を知らなかった。



(明日、隣街に行ってみようかな?暇だし!)



そして、この選択が琉偉の人生を変える。



「初めて来たけど、結構けっこう栄えてんな…まぁ、まずはヤンキーの溜まり場ゲーセンからってのが常識じょうしきだよねぇ…」


琉偉は親友、友也を探しに来ていた。


駅前えきまえのゲーセンはココが1番デカイな?…おっ?早々にヤンキー発見!…行くか!」



琉偉は入り口にたむろする同じ歳ぐらいの3人組に声をかける。


「なぁ?少し聞きたいことがあるんだけど?………敵意はないから教えてよ!」


「あ?この辺じゃ見ない奴だな?何が聞きたいの?」


3組の1人、金髪のヤンキーが琉偉の話に応える。


「半年ぐらい前に『相沢 友也』って気合きあいの入った奴がこの街に引っ越してきたと思うだけど何か知らない??」


「…ぷっ…なんだよ…あのバカの知り合いかよ!」


金髪の男は、琉偉の親友を馬鹿にしたような言葉を吐いた、その言葉を聞いた琉偉の行動は早かった。


「ああ??誰がバカだよ!?ちょーしくれてんじゃねーぞクソヤロー!!『ドス!』『ガン!』


手前に座って琉偉と話してた金髪を左脚と右拳2発でノックアウト。琉偉は喧嘩けんかには自信があった。


「おい!いきなり何すんだテメー!!『ゴン』」


立ち上がる寸前の肥満体系パンチをKOする。


「お前は…チョットツラかせ!ちゃんと喋れば殴らないから!な?」


1番ヒョロそうな奴の胸ぐらをつかみ手際よく拉致らちる。


琉偉は中々のわるガキだった。



「なぁ?さっきの話の続きを教えてくれよ?」


ゲームセンターを離れてヒョロ男を駅のトイレに連れ込み尋問じんもんする琉偉。


「お…俺が知ってるのはぞくの単車をパクってバレてスゲー金を請求せいきゅうされてなんでもやらされてる奴、って事しか知らない!!」


「はぁ?なんだよ…それ!おい!それいつの話しだ!?」


琉偉がヒョロ男の胸ぐらを掴む。


「苦しい…離してくれ!言うから離して!」


琉偉はヒョロ男を突き飛ばす。


『ガッシャーン』ヒョロ男はトイレの脇にあった掃除用具そうじようぐに突っ込む。


「おい!クソヤロー早く言え!!」


琉偉は血走った眼を全開に開いて相手を萎縮いしゅくさせる。


「はっ…半年ぐらい前に回った話だよ!!もう知らない!…勘弁してくれ!!」


頭を抑えてヒョロ男は震える。




琉偉は頭の中で思考していた。



(族?この辺の族は天神隊てんじんたいぐらいしかないだろう…マジでやべーな…あそこのOBはヤクザ就職率80%って先輩が言ってたな…とにかく友也を探さないと!)


琉偉は先輩から関わるなと釘を刺された事のあるチームだと知っていた。



(もうこの辺のヤンキーどもは仲間がやられて警戒けいかいしてるはず…どうする…)


その時『ヴィィィィィン』『ヴィィィィィン』琉偉の携帯のバイブが鳴る。


(知らない番号?)


「はい…誰ですか?…」


「琉偉?連絡遅くなってごめん!俺だ!友也だよ!」


「お前!マジで心配したんだぞ!!どこにいんだよ!?俺は駅から…」


「そのまま逃げろ!!琉偉!早く!『オイ…クソヤロー』……おい!クソガキ!よくも俺の後輩をシメてくれたな!無傷でこの街から逃げれると思うなよ!琉偉君??ツーツーツーツー…」



電話口から聞こえたのは、久々に聞く親友の焦る声と途中から変わった悪意あくいの声だった。


「なんなんだよ!友也…待ってろ友也!一回地元戻って先輩達を連れてきてやるからな!俺の力じゃ友也を助けられない……ごめん!すぐ戻るから!!」



通話の切れた電話に叫び急いで駅に走る。


だが後に、この行為を琉偉は一生後悔する。





「本当にすみません!!先輩!友也がマジでヤバイんです!!助けて下さい!」


琉偉は地元の暴走族の先輩がたむろする公園に助けを求めに来ていた。


「はぁ?お前…天神隊はマズイって言ったろ!!しかもその後輩シメちゃったならお前が悪い訳じゃん?……詫び入れてやられて来いよ!」


「お前、馬鹿かよ!俺らを巻き込むなよ!」


「っーかなんでテメーらなんか助けなくちゃいけないんだよ!!」


先輩達は友也を助ける気は無かった。


「……分かりました。すみませんでした…」


「まぁ…殺されはしないと思うけどな!」


「頑張れって友也の馬鹿ばかに伝えてくれよ!」



琉偉は足早にその場を後にした。


(………全員クソヤローだった…自分の後輩を助けない先輩がいんのかよ!クソ!こうなったらマジでやられる気で詫び入れるか…??でも、それじゃ友也が助かるかわからない…おまわりなんかに行ったら友也も俺も相手もパクられる…どうすりゃいい…?)


琉偉の瞳に薄っすら光が差す。


「やるっきゃねぇー…待ってろ!友也…」


琉偉はナイフをポケットに忍ばせる。



駅を降りてすぐにヤンキー達に止められる。


「おい!お前さぁ昼間この辺で暴れたろ?話あるからチョット付き合えよ?」


派手はでな格好の不良ふりょうが琉偉に話しかけ駅から連れ出され駅裏の公園に行き、15人程のヤンキーがたむろしてる所に琉偉は連れてかれる。



「ゆうさん!コイツっすか??」


「おい!お前、内藤 琉偉だな?相沢 友也のお友達の内藤 琉偉だよな?」


話掛けてきたのは、チンピラ丸出しで刺青を見せびらかした20歳ぐらいの長身の男だった。


「俺の可愛い後輩をお前がやってくれたんだってな??他元たもとの人間がよぉ!」『ドスっ!』」


琉偉のみぞおちに蹴りが飛ぶ。


「ゔっ!!オエ!オエーっ」


その場でひざをつき胃袋いぶくろの中身をその場にぶちまける。


「うわぁ〜マジでお前ら汚いわ!!お前の親友もそこの便所べんじょ反省はんせいしてる所だよ!見たい?」


「オイ!見せてやれよ!ハハ!またコイツゲロ吐くぞ!」



男は笑いながら琉偉を蹴りたくり他の男に琉偉を引きずらせ公園こうえんの公衆トイレまで琉偉を連れてく。


多目的トイレの前に連れてこられた琉偉は嫌な臭いに気づいていた。



「親友とのご対面!!うわっ!マジ臭い!」



そこには全裸で後ろに手を縛られて血と大便と小便まみれの友也が寝そべっていた。


「……と…友也??…」


「………見ないでくれ…なんで戻って来たんだよ…ちくしょう…ちくしょう…」



琉偉が声をかけ友也は声を震わせながら泣いていた。


琉偉の中で何かが音を立てて崩れて行った。


「マジでヤバイだろ?なぁ?コイツ、スゲーついてねぇーんだよ!…コイツ半年ぐらい前に俺の後輩の単車パクろうとしてんのバレて150万の借金を背負ったんだよ!そんで、ひったくりやら売人やらやらせて、ようやく借金返せる所だったのに急に現れたバカが全部台無しにしたんだよな?相沢くん?くっくっくっくっ!マジでついてないわー!」


チンピラ男は面白ろ可笑しく語る。


琉偉は右のポケットに手を突っ込みナイフを強く握る…



「相沢くんはお前の代わりに治療費ちりょうひ払うって言って家の場所言わないからあそこでクソまみれになってる訳!わかったかな?クソガキ!?」


『サクッ』『サクサクッ』」


琉偉はポッケからナイフを出して楽しそうに友也を侮辱する男の腹を刺した。力一杯…憎しみを込めて何度も…


「はぁ?痛い!!マジかよ?お前……マジかよぉ!!!!」


『バタン』男は自分の血を見て気を失った。


男の腹からドボドボと血が流れる。


「こっ…コイツ人殺しだ!!ヤバイ!逃げて救急車!!早く!」


「でも…お巡りも来ちゃうぞ!?どうする!!」


公衆トイレの中からヤンキー達は逃げ出した。


琉偉はその場に立ち尽くし一言も口にしなかった。


友也はそれを見つめていた。


やがてサイレンが鳴り救急車とパトカーが大量にに駅裏の公園に集まる。


琉偉は逮捕された。



パトカーに乗せられる琉偉を泣きながら友也は見つめていた…琉偉は最後まで一言も発しなかった。


内藤 琉偉…15歳、殺人未遂さつじんみすい情状酌量じょうじょうしゃくりょうで1年の少年院送致。


相沢 友也…16歳、事件の被害者ひがいしゃで強制的に犯罪はんざいをさせられていたという言う事で不起訴。



琉偉に刺されたクズは九死に一生を得て助かる。





内藤 琉偉…16歳。


「お世話になりました。」


「じゃあ、行こうか。」


琉偉は少年院を退院した。


唯一ゆいつ肉親にくしんの母は迎えには来なかった。


施設しせつの職員に引き取られる琉偉。


「これから施設に向かうけど…これは君にとって凄く辛い話になると思う。気を強く持って聞くんだよ?」


施設の職員はゆっくりと、丁寧ていねいに不安を煽るように琉偉に向けて口を開く。



あの事件の2週間後の話だった。


留置所から出た友也はその足でビルの屋上から飛び降り、短い人生を終わらせていた。



「内藤くん?…内藤くん??気をしっかり持って!!内藤 琉偉君!!」


職員の男性は魂が抜け、糸の切れた人形みたいな琉偉の肩を揺さぶっていた。



(なんでだ?…なんでなんだ?…俺が余計よけいな事をしたからだ!!俺が…友也を自殺に追いやった…なんで、なんで俺が生きてる!?なんで俺はあの時、すぐに助けに行かなかった!!チクショー…チクショ…)



琉偉は涙が枯れるまで泣き続けた。



施設に3ヶ月入所した後、ようやく自宅に帰れるようになった琉偉は帰り道で今は居ない親友とのある『約束』を思い出す。




(あっ…友也と一緒に暴走族の集会を見ていた陸橋りっきょうだ…懐かしいなぁ…あの時、友也は言ってくれたよな?……なぁ?覚えてんかよ?友也……)





「なぁ?友也!俺らって1人っ子じゃん?兄弟っていいよな!」


夜の陸橋で柄にもない事を言う琉偉。


「なんだよ琉偉?気持ち悪いぞ!」


「いや…そうじゃなくて!不良ふりょうの世界って兄貴アニキとか子分こぶんとか兄弟きょうだいとか親父おやじとか言ってなんか、家族感出してんだろ?なんかいいなぁって思っただけだ!」


琉偉は照れながら友也に会話の補足を入れる。


「じゃあ…俺たちはこの不良の世界の兄弟だ!!忘れんなよ!兄弟!……なんか…めっちゃ恥ずかしいな!」


友也も照れながら琉偉に笑いかける。


「ありがとう…友也!約束な!絶対俺はお前を裏切らないし見捨てない!これからもよろしく!兄弟!」


「おう!約束だ…兄弟…」


琉偉は最高の笑顔で友也に『約束』を告げた。







「と…友也…ごめん…ごめん…ん?アレ?」


(?夢?って誰かが頭を撫でてる?)


琉偉はガゼルの大宿、最上階の大部屋の豪華なベットの上で寝ていた…ファーランに頭を撫でられて。


「お気づきになられましたか??何か…お飲み物をお持ちしましょうか?」


ファーランは静かに、そして優しく琉偉にささやく。


「なんか…昔の夢を見てた……あぁ…?俺…泣いてたのか??」


「…夢にうなされてたようです…もう落ち着きましたか?無理をなさらず、もう一度目をつむって下さい。」


ファーランはそう言ってまた琉偉の頭を撫でる。


「なぁ?ファーラン…1つ聞いていいか??」


琉偉は目を瞑ったままファーランに問う。


「はい…どんな事でも。」


ファーランの声は、いつも以上に優しかった。



「俺さぁ…どうしょうも無いくらい怒ると頭の中で声がするんだ…この世界に来て2回も声を聞いてる。初めはファーランが居た所の宿屋の店主をぶん殴った時…二度目はあのスキンヘッドの冒険者の時だ…アレが何か知ってるか??」



琉偉が感じていたのは頭の中で響く声と怒りと憎しみに取り憑かれた時に纏う黒い霧だった。



「……これは私の母から聞いた話です。」


ファーランは静かな語り出す。



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