初会
——本当に面倒くさいな。
わけもわからず二人の弟子の師匠になるなんて、面倒くさがり屋なら誰だってそう思うだろう。隣にいる人が自分の紹介をしているのを聞きながら、名前も見た目も全部嘘っぱちなのに、と夕は思っていた。
——こいつ、あとどれだけデタラメを並べる気だ?事実は証明していた。隣の人は夕の名前や身の上話を、何から何まで実に理路整然とでっち上げていた。
夕は人一倍面倒くさがりな人間だ。肩まで届く青い髪、身長はこの場にいる誰よりも低い。とはいえ、今の女性の平均よりは高い方で、身にまとったグレーのパーカーのせいで中性的に見える。
「夕」というのは偽名だ。今の姿も「能力」で変化させたものに過ぎない。夕がどこから来たのかは誰も知らないし、夕も話す気はない。なぜこの姿になっているのかさえ、説明するのが面倒だから言いたくないのだ。
この世界は確かに地球だ。噂によると、数百年前にある日突然「能力」というものが発見され、当時は「能力者」が異端児扱いされていたらしい。今では「能力者」と普通の人間は睦まじく共存している。「能力」は魔法によく似ている。基本的には一人につき最低でも一つの「能力」を持っているが、天才の中には二つ以上の「能力」を持つ者もいる。
「書」は、見た目そのものが一冊の本だ。現在、世界には十冊の書が出現している。「書」がどうやって誕生するのかは誰も知らない。「書」は使用者を選ぶが、その選定条件も謎に包まれている。一説には、周到に計画されたものか、あるいはその場の思いつきだとも言われている。
「書」の名前は基本的に使用者が決めるが、例外もある。使用者の意思を無視して、自分の名前を自分で決める「書」も存在する。
「成神」とは、一部の人間が死後に神となり、引き続き人世を見守ることを指すらしい。
「夕、聞いてる?」
隣の人が、思考がどこかへ飛んでいっていた夕を揺さぶった。
「聞いてない」
夕の正直な言葉に、隣の人は呆れるしかなかった。夕は自分より背の高い二人の少年を見上げた。左側にいる黒髪の少年は、突然現れた夕という師匠に対して警戒心を抱いているようだ。右側にいる白髪の少年は、これといって表情を変えていない。
「もう一度紹介し直してよ」隣の人の名前は薫。茶髪の短髪で、見た目は20歳くらいのようだが、実はこの男、もう500歳を超えている。
「とにかく、左側が夏凪、右側が粟冬だ。最近『書』に選ばれた子たちだよ」
「じゃあ、なんで僕が師匠になるの? 僕がやるのはおかしいでしょ。あなたが自分で教えればいいじゃない」
「だって、僕は君を信用しているからね、愛しの妹弟子」
「はあ!? 殴られたいわけ?」
夏凪と粟冬は、目の前でじゃれ合う二人を眺めながら、仕方のない様子でため息をついた。
「一言いいか?」
夏凪が膠着状態を破ろうとしたが、夕は手を挙げた。
「あんたは黙ってて。あとで聞くから」
夏凪と粟冬は、夕と薫が取っ組み合いの喧嘩を始めるのを、ただ呆然と見つめるしかなかった。二人がようやく勝敗を決するまでには、それからかなりの時間がかかった。薫がずるをしたのだけれど。
「ずるしたでしょ」
夕は地面から起き上がり、パーカーについた埃を払うと、腕を組んで薫を睨みつけた。
「これ以上喧嘩を続けたら、恐らくこのビルが消えてなくなるよ」
薫は困ったように肩をすくめた。
「じゃあ、言い方を変えよう。この新人二人の師匠になるか、それとも僕を連れて師匠を探しに行くか」
夕は沈黙に陥った。その周囲からは、夏凪と粟冬の鳥肌が立つほどの威圧感が放たれていた。しばらくして、ようやくその気配が消え去った。
「わかったよ、やればいいんでしょ」
夕は諦めて妥協した。
「その代わり、和菓子を奢ってよね。ここでかなり上手くやってるみたいだし、僕が破産するまで食べ尽くしても文句ないよね?」
「君にそれができるならね。あとで鳴佐屋に用意させておくよ。じゃあ、この二人のことは頼んだよ。僕はまだ山ほど処理しなきゃいけない仕事があるんだ!」
薫はそう言い切ると、夕たちを部屋から押し出した。
翻訳ツールを使っているので、間違っていたら教えてください。




