終学
俺の名前は、霜月 澪――しもつき・しずく。
名前だけは、いっちょ前に洒落ている。
けれど、今の俺の生活を知れば、そんなものに意味なんて一欠片もないとわかるはずだ。
俺が通っている学園の名は、終末の学園。
略して、終学。
名前からして終わっている。
学園を名乗るには、あまりにも不吉で、あまりにもふざけた名前だ。
だが、この学園は実在する。
なぜ、そんな学園が存在しているのか。
理由は簡単だ。
普通の学校に通うことができない者たちを集めるためである。
学力が足りないからではない。
家庭の事情だけでもない。
ただの問題児、という言葉で片付けられるほど生やさしい連中でもない。
暴力。
脅迫。
犯罪まがいの行為。
素行不良。
社会から見放された者。
そんな奴らが最後に流れ着く場所。
それが、終末の学園――終学だった。
では、なぜ俺がそんな場所にいるのか。
俺は何もしていない。
悪いことなんてしていない。
問題なんて起こしていない。
ただ、いじめられていた友達をかばった。
本当に、それだけだった。
けれど、その友達は俺を裏切った。
俺をいじめていた連中は、嘘の証言を重ねた。
ありもしない罪を俺に被せた。
そして、いつの間にか俺は加害者にされていた。
嘘で塗り固められた経歴。
世間に広められた悪評。
学校からの追放。
家族からの失望。
誰も、俺の言葉を信じなかった。
誰も、俺を助けてはくれなかった。
そうして俺の人生は、完全に詰んだ。
終学での生活は、登校する前からすでに終わっている。
校舎は荒れ果て、窓ガラスは割れ、壁には落書きがびっしりと刻まれている。
校門の前には、どう見ても学生には見えない連中がたむろしている。
学校の周囲には、まともではない大人たちがうろついていた。
ここは学園なんかじゃない。
社会から弾かれた人間たちの墓場だ。
何度も思った。
なぜ、俺がこんな場所に通わなければならないのか。
なぜ、俺がこんな連中と同じ扱いを受けなければならないのか。
けれど、俺に選択肢はなかった。
ここに通うこと。
それが、俺が生きていくための最低条件であり、最後の条件だった。
もし拒めば、俺は本当に居場所を失う。
学校にも。
家にも。
社会にも。
どこにも、俺の場所はなくなる。
つまり――。
ここに通うことを拒めば、俺はこの世から消えることになる。
だから俺は今日も、終学の門をくぐる。




