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始まり、あるいはその終わり

 葉から透かして見ると、太陽の輝きがよく分かり、太陽そのものの輪郭も分かる。この輝きこそ真実で、普遍的な人類共通の輝きだ。 

僕は昨晩、母から頼み事をされた。郵便局に荷物を届けに行ってほしいとの事だ。その荷物を明日までに急遽送らなければいけなくなったのだが、母はどうしても休めない仕事があり僕が代わりに届けに行く事になった。興味ないが、親戚や友人宛のお菓子だろうと思っているが、そんな物に緊急性があるだろうか?もしかすると爆弾や暗殺用の毒薬かもしれない。では母と二人暮らしだ百貨店を用意しよう。その静かな百貨店の地下二階で、カラカラと鈴を鳴らす音がした。ケーキ屋の店員が値引きセールを始めていた。僕は精巧に作られた《物》を見ている。見ることは認識と物質のささやかな関係である。それは実際には段ボール箱だが、僕には素材や用途とは別に、ただ物として認識を持っている。僕を含め、人間が生命として存在するが、それはあくまで《僕ら、世界、あるいは一つのの解釈》の身勝手な実態であり、段ボール箱は呼吸や鼓動までは分からない。しかし、段ボールにだって僕を理解する義務はあるだろう、なぜなら同じ世界で共通の空間に有されている僕と段ボール箱は存在として確実にこの世界で酸素を吸い、《生きている》のだ。僕は今、この手記の「生きているのだ」という部分に、二重山括弧を書いたが、これは高校時代に教わっていた女性の国語教師のあまりに細かく、しつこい作文指導の結果である。 

 その先生の名前をJとしよう。彼女には僕が個人的に作文指導を依頼し、僕が書いた下手な小説(官能的でなタイムスリップ小説で、江戸時代の小説のコラージュでもある)を何時間もかけて忙しいにもかかわらず読み、二十点以下の低い点数をつけた。Jは行き過ぎた体罰で逮捕されたが、彼女は今でも刑務所で尿を垂れ流しながら作文指導の真似をしていると三面記事にあった。彼女は今でももあの頃も脳内充足の為に作文指導をする。悲しいが、僕はただ偏執者に何度も指導を依頼した。  

 僕はケーキ屋の店員に郵便局の場所を尋ねた。しかし、場所が分からず結局、帰った。 

家にはセールスマンの男がいた。彼は僕を待っていたようだ。

 セールスマンの男は青田と名乗った。黄色い歯についた汚れが光って気持ち悪い。 

「すみません。こちらのビデオを見ていただけますか?」

 「女は赤い自転車を漕ぎながらゴミ袋を次々と放り投げた。僕は怖かった、世の中がこんなに精密なのにくだらない原理で動いていると思わなかった。「私はあなたを尊敬しています。しかし、あなたがしてきた犯罪はもちろん許せません。ですが、一つの利害のためにあなたと手を組む」 

「君は何者だね」 

「犯罪者?あるいは馬鹿」 

「普通は信念か、職業を言うものだ」  

この意味不明の音声が流れる静止画のビデオだった。

僕は青田を無理やり突き返した。やれやれ、大変だ。僕は大学で工学を専攻していた。インターネットにおけるファイル保存における、デザイン設計という卒論を書いた。だからITとかプログラミングとかAIには人一倍詳しい。今でもAIを作って遊んでいる。先日、chanbeyという翻訳AIを作り、これのファイルをSNSで無料公開した。すると、四十万人以上が使用してちょっとした話題になった。使用者のチャット履歴、全体の使用回数を記録している。もちろん無断だ、こうすれば最低四十万人の個人情報と思考が分かる。僕はこうして情報を盗んでちょっとした犯罪をするつもりだ。今はそのために釣り糸に言語を垂らして、情報を釣っている。  

青田め。しつこいやつだ。僕を脅すな!この野郎、馬鹿な野郎だ。くだらないよ、しょせんは三下だ。僕はくだらない罠から解放され、段ボール紙を広げながら絵の具をそれに塗りつけた。 

 僕は高校時代に死神に会ったことがある。そいつは身長二メートル二十センチくらいの紫の装束をまとった大男だった。そいつは僕の首根っこを掴み、「お前は死ぬ、死なねばならぬ。しかし、生を取り戻す機会はある。十年、猶予をやる。もしお前が十年の間に世界最悪の独裁者になれば助けてやる」と言った。  

 昨日までの僕は立場こそ頼りないが、自信のある紳士だった。しかし、頼りなさを自覚してしまい、惨めな小男になりさがった。 

 ひょっとすると青田と母は同じ秘密結社に所属しているのかもしれない。二人は僕を利用して敵対組織壊滅のための工作をしているのかもしれない。 

 まったく読む価値のない駄文である。新聞を書くのに文才は全く必要ないらしい。 

 よく出来た罠だが、僕は嵌まらない。 

 


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