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いのちのパン屋さん〜二回目の光〜  作者: 地野千塩


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タラントとコインパン(1)

 木崎希衣は、絵が描くのが子供の頃から好きだった。気づくとチラシの裏に絵を描いているような子供だった。


 今ではよく覚えていないが、絵を描いている時、天使が側にいる気がした。自分と似たような子供の姿の天使で、希衣が絵を見せると、天使たちはニコニコ笑っていた記憶がある。天使を描いた絵も残っている。


 両親はクリスチャンだったので「天使見えるとかって普通だよね、うちの教会にもいっぱいいる」というノリで、特に不思議がられる事はなかった。日曜日に連れていかれた教会学校でも、天使の事で盛り上がる事もあった。


 ただ、学校に入ると、だんだんと見えなくなっていった。同級生や先生に言うと、「精神病?」とヒソヒソされる事も多く、だんだんと恥ずかしくなったというのもある。教会にも行かなくなり、普通の高校生になった。


 今は穂麦市にある聖マリアアザミ学園という元々ミッションスクールの高校に通っている。希衣はクリスチャンでは無いが、両親の勧めもあったし、制服が可愛いお嬢様学校だったので、受験した。


 部活は漫画研究会にはいった。美術部でもよかったが、怖そうな先輩がいるのがネックになった。それに絵は、イラストの方が好きになり、ネットで投稿する事も多かった。SNSにイラストを上げると、そこそこ評判がいい。特に漫画のキャラクターの絵は、いいね!がかなりつく。ヲタクというほどでもないが、漫画やアニメ関連の仕事につきたいと考えていた。イラストレーターになるのが夢だった。


「希衣、SNSみたよ! すごいじゃん!」


 ある日の昼休み、隣のクラスにいる織田春歌に声をかけられた。春歌は友達だった。というか幼馴染だ。両親に連れられていった教会で仲良かった子だ。彼女も天使が見えるのですぐに仲良くなった。よく天使の絵も描いて春歌に送っていたのも思い出す。今の春歌は、普通の優等生っぽく、おそらく天使など見えていないだろう。


「え? SNSみたの?」

「うん。すごい、いいね!いっぱいついてるよ。才能あるんじゃない。才能というかタラント」

「タラント?」


 久々に再会した幼馴染は、耳慣れない言葉を使っていた。


「タラントって何?」

「廊下で話すのは、長い話だね。まあ、いいか」


 そう言って春歌は、自分の教室に帰っていった。


「タラントね」


 希衣もそう言いつつ、自分の教室の机に戻る。そういえば、この言葉は聞き覚えがあった。


 子供の頃、教会で牧師が日曜学校で紙芝居をやっていた。聖書にある例え話を紙芝居にしたものだった。


 ご主人様と、使用人が何人か出てくる話だ。使用人はご主人様からお金を貸付けられる。タラントは、聖書の世界のお金の名前だった。貸付られたお金、タラントに応じて儲けを出した使用人もいる一方、臆病になり、タラントを全部隠してしまったものもいた。


 ご主人はこの使用人に怒り、タラントを没収。仕事をしている使用人にさらにタラントを与えたという話だった。


 最後に牧師は「神様から与えられているタラントはみんなにあるから、土に埋めずに神様や隣人の為に使おう。結果が全てではなく、とにかく行動しよう。このタラントは、人間に与えられた才能の例えと神様への忠誠を表現しています」と言っていた。


 牧師が描いた絵がとても下手だったので、この紙芝居の内容は覚えていた。


 春歌は、自分に絵の才能があると言いたかったのだろうか。そう思うと、少し嬉しくなってくるが、いまいち自信はない。ネットには自分より絵が上手な人がたくさんいる。イラストレーターも狭き門と言われていた。


 絵を描く事は楽しいけれど。


 周りのクラスメイトは、大学に進学したり、専門学校に行くことを決めているものも多いそうだ。


 そう思うと、希衣は自分の夢が合っているのかどうかも自信がなくなってきた。

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