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いのちのパン屋さん〜二回目の光〜  作者: 地野千塩


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タラントとコインパン(2)

 土曜日、希衣は自宅の部屋で絵を描き続けていた。手書きで描く事も多いが、今はパソコンを使う事も多い。パソコンは、祖父母に買ってもらった。「希衣の絵を描く夢が叶うように」と。


 そこまで応援されると、やる気は出る。本当は勉強をするべきだが、休みの日は絵を描いている事が多かった。


 今日春歌と話したせいか、天使と少女の絵を描いてしまった。少女の周りに、小さな天使がいっぱいいる絵だった。自分でも明るく、繊細な雰囲気が出た気がする。さっそくSNSなどネットにアップする。フォロワーには、すぐいいね!がついたが、今日に限っては、批判的なコメントも届いていた。


「天使とかってキモい」

「なんか見ていると頭が痛くなってくる絵なんですけど」

「こっちみんな!」

「メンヘラぽい」


 それだけでなく、男性からと思われるエロ系のコメントも届き、思わずブロックしてしまった。こんな事ははじめてで、思わず深いため息が出る。プロのイラストレーターでも、アンチはいると聞いていたが、この絵に何か不快な要素でもあったのだろうか。少し修正などもしてみるが、気分は重い。


「あ、春歌からだ」


 春歌からSNSにメッセージが届いていた。春歌は本名でSNSをやっているようだった。聖書を引用した画像を投稿している事が多いようだ。


「すっごい良い絵だった。たぶん、神様からのインスピレーションを受け取った絵だよ。タラントすごい! でも、こっちの神様って案外嫌われてるから、アンチコメントも届くだろうね。この世は神様も濡れ衣着せられて、殺されるような世界だし、気にしないで。悪く言われたら、逆に喜んで絵を描いてね」


 励ましてくれているのは、わかったけれど、イマイチ納得はできない。確か春歌もクリスチャンだったと思うが、希衣にはピンとこない話も多い。インスピレーションとかもわからない。ただ、好きなように絵を描いただけ。


「あれ? パン屋から色々なんか来てる」


 春歌もコメントを閉じると、福音ベーカリーというパン屋のアカウントからいいね!や投げ銭も届いていた。SNSでは応援したい人のギフトカードや小銭などを遅れるシステムがあった。投げ銭という。


 福音ベーカリーは、近所にあるパン屋らしい。クリスチャンが運営しているのか、パンの画像とともに、聖書の言葉が引用されていた。タラントの例え話の箇所も引用されている画像があった。コインパンという新製品ができたらしい。一見、丸いミルクパンだったが、コインパンと名前をつけて売っているらしい。確かに遠目ではコインの形に見えなくもないが。


 そんな画像を見ていたら、パンを食べたくなってきた。


 ちょうど両親も出かけていたし、時間もちょうどお昼だった。たぶん、新しくできたパン屋だろうし、投げ銭やいいね!をくれたのも嬉しかった。


 アンチコメントが来て気が滅入ってはいた。こういうコメントが届くと、全部消した方がいいんじゃないかと思ったりするが。


「まあ、パンは美味しそうだし」


 希衣はパソコンの電源を落とすと、身支度を軽く整えて、財布とスマートフォンだけ持って家を出た。

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