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俺解釈三国志  作者: じる
十一話 崩御(中平六年/189)
173/173

6 帰還

(この人はなんでこんな大事を私に教えたのだ?機密を守れないのか?)

 

 諸葛瑾は帰宅した劉表から「それ」を聞いて最初にそう思った。同時に


(この人はなんでこんな大事をもっと早く教えてくれなかったんだ?)


 とも思った。


「陛下の病が結構重いらしくてな。跡継ぎの件もあるから、しばらく帰って来れないかもしれない。済まないね、子瑜君」


 劉表はそう言ったのである。


 諸葛瑾は劉表の前を辞すると、劉表の邸宅を抜け出した。


 夕焼けの洛陽市街を諸葛瑾は走った。これ以上日が落ちたら大道を通れなくなる。劉表のところへ戻れなくなる。構ったことではなかった。行き先は勿論、琅邪の国邸である。


 義息の呼び出しに出てきた諸葛玄に諸葛瑾は耳打ちした。


「義父上。帝、御不予だとの事。上計殿を辞させるならお急ぎを。喪に服する事となると抜けにくくなります。後継争いも起きましょう。上計殿の身に危険が及ぶやも。お早く!」


***


 諸葛瑾を載せた車はゴトゴトと東に向かう。義父、諸葛玄の脇に乗せられた諸葛瑾は、車が来た方向へ振り返った。


 高く聳える洛陽の城壁が見える。


(もう、きっとここに戻ってくる事はないんだろうな)


 どうやら自分の容姿は中央官としては通用しない。


(容姿ではなく、中身を評価してくれる所で世に出たいな)


 それが元服したばかりの少年、諸葛瑾の嘘偽りない希望だった。


(了)



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