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俺解釈三国志  作者: じる
第八話 歳在甲子(光和七年/184)
123/173

16 改元(中平元年十二月)

 かくして、蜂起から十ヶ月で黄巾は平定された。


 現地の治安維持と回復のため、皇甫嵩は左車騎将軍に昇進した。合わせて冀州牧を領した。軍を解散せず、軍権を持ち冀州を治めるのだ。


 皇甫嵩は帝に奏上した。冀州の飢えた百姓の為、田租を一年免除して頂きたい、と。


 帝劉宏は上機嫌で許した。喜び百姓は歌った。


「天下は大乱、市場は廃虚、母は子をたもてず、妻は夫を失った。皇甫のおかげでまた安らかで居られる」


 だが、農繁期の反乱で粟の作付ができなかった者も多い。前途は多難である。


 十二月。帝は天下に大赦を告げ、元号を「中平」に改元した。


「全て終わったか。皆に褒美を与えねばならんな」


 帝は上機嫌であった。


 全く終わっていなかった。実際ここからが、数多の反乱のはじまりなのである。


***


 ──数年後、楊州は九江郡壽春県。


「ではこの符水をお飲みなさい。腹痛などたちどころに直りますよ」


 農耕の傍ら、ひっそりと巫術を行なう者が居た。


 あまり重篤な患者は見なかったので、名医とは思われていなかったが、近隣住民に親しまれていた。


(我々道家は天下国家などに関わるべきではなかった。身の程を知るべきだったんだ)


 男はかつて、波才と呼ばれ、大賢良師張角の片腕だった。名を変え、ここ壽春に隠れ住んでいた。黄巾の乱で戸籍は焼かれたので姓名を詐称するのは簡単だった。


(大賢良師様にお教え頂いた符術自体は良いものなんだ。これを家業として暮らしていこう。一人でも多くの人を癒して、いつの日か死なせた皆よりも多くを助けてやりたい……)


 それだけが彼の願いだった。


(了)


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