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98、猪八戒は、沙胡蝶に本音を述べる

「どうかお願いします、八戒さん。考え直すようにと玄奘様を説得してください」


 沙胡蝶の声掛けに、猪八戒は苛立たしげに答える。


「だからね、お師匠様は君に打算的に旅の同行を頼んでいるの!純粋な好意ってか、無償の奉仕の心からの申し出とかじゃ、全くこれっぽっちもないからね!お師匠様の信仰心は勿論本物だし、彼は立派なお坊様だけど、魂の随から脳筋の武道家なのも本当なんだ!基本いつでもどこでもいつまでも戦いたい人なの!ホントだからいい加減に気づいてよ!弱っちい見た目で可愛いだけの君はね、そのまんま世間の”三蔵法師”のイメージぴったりで妖怪達の餌なの!もう観念して大人しく守られててくれないかな?俺だってそう!君の育て親の海の魔女に、俺の目を治してもらいたくて、君に恩を売ろうとしているだけなんだ!沙悟浄だって君のことを、何でかわかんないけど、まるで生き別れの実の兄弟か、って位肩入れしてるし、悟空の兄者なんか本人無自覚の俺のモノ扱いだからね!絶対逃す気なんて彼らないからね?俺もそう!君が嫌でもウンというまで説得するよ!だから何の遠慮もいらないの!君は黙って俺等に利用されていればいいのさ!」


 頭を片手でガリガリと乱暴に掻きながら、猪八戒は一気にそれだけの言葉を沙胡蝶に放った。全く。このお人好しの少年は、何とかして三蔵法師を説得しようとして俺を味方につけようとしているが、それは無駄なんだから、さっさと了承して早く旅を続けさせろ……そう思っての荒ぶった口調で沙胡蝶を諦めさせようとしたら、沙胡蝶が大きく丸い目を、さらに丸くしてポカンと猪八戒の顔を見上げていた。


「目?八戒さん、目がお悪いのですか?」


 キョトンとしている沙胡蝶に、八戒は長い前髪をひっつかんで後ろに流して、素顔を幼子に晒した。沙胡蝶は八戒の魔眼に何の反応も示さないとわかっているので、八戒に躊躇はなかった。


「ほら、俺の瞳の中をよく見てみろよ。下品なピンクのハートの虹彩が見えるだろ?これを海の魔女に治してもらいたいんだよ!」


 八戒は自分の魔眼の説明を出来るだけ淫猥(いんわい)なモノにならないように気を付けながら話をした。見た目は4才、中身は16才の少年に話すには、ちょっとアダルト気味な内容になるため、若干の羞恥の感情を押し隠しつつ、八戒の前世と今世の苦労話も説明した。どれほど八戒が魔眼で苦労し、苦しめられてきたことか!だからこそ沙胡蝶を守ることで海の魔女に治してもらえるのならとの打算も理解してもらって、何の引け目も感じずに大人しく旅に加わってもらうために全てを話し終えた。……すると何でもないように、沙胡蝶は言った。


「その瞳なら、今すぐに私でも治せますよ」


 何の力みも感じられない穏やかな声だった。

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