89、結界
厨○病かってツッコミは無しの方向でお願いします。
孫悟空は流砂河に置きっ放しの皆の荷物を運ぶようにと、沙悟浄に頼んだ。沙悟浄はこれを快く引き受け、ついでに水や食料や、沙胡蝶の酔い止めの薬等々も持ってくると言って、はりきって請け負った。次に孫悟空は、東海竜王がなぎ倒した木々を八戒に片付けるよう頼んだ。八戒が片付け終わると、空いた空間が出来た。それは上から見たら、林の中に丸いハゲが出来たような空き地だった。孫悟空はその真ん中に、そっと大きな真珠貝を置いた。この空間に陣を施すためである。
沙悟浄が急いで用事を済ませて戻ってくると、3人は玄奘に真珠貝の傍に立つように頼んでから、太上老君の作である、自分達の武器の如意棒と九本歯の馬鍬と降魔の宝杖を、沙胡蝶のいる真珠貝を囲むように、それぞれの持ち主が手に持って立つことで正三角形を作った。その3つの点をそれぞれの武器が授けられた世界、海中界、天界、地上界に対する結界となすために彼らは術を施し、各自の武器を単体で直立させて結界を完成させた。
結界内にいた玄奘や猪八戒、沙悟浄は気づくことはなかったが、第三者による別口の結界もその時に施されていた。それは水簾洞で知り合った蜘蛛の婆様が沙胡蝶を気に入り、地上にいる全ての自分の眷属達に、沙胡蝶の守護をするようにと命じていたからだ。小さな蜘蛛達はどこからともなく、林の中からやってくると、この陣の周りを細い妖糸でグルグルグルと取り囲んでいき、傍目にはまるで林の中にテントを設置しているようにしか見えないような見た目にしてくれたのだ。これで防御・防音・目隠し・消臭の結界が出来たと孫悟空は胸をなで下ろした。
「どうして消臭が必要なんです、悟空?」
疑問を口にした玄奘に、悟空は真珠貝の傍で、他の3人と円陣を囲むようにして座ってから、先ほどは口に出来なかった、本当の報告を玄奘達に話し始めた。
「実はお師匠様。沙胡蝶のことで、あの場で伏せていた事柄がいくつかあるのです」
あの時、あの場には、仙女や魔力の強い化生や神使をしている化生、さらには東海竜王と、一番沙胡蝶に近づけたくはない海の王がいた。それに遠見の鏡で高見の見物をしている、三界の貴人達の目もあった。あそこで全てを話してしまうと三界全てに、沙胡蝶のことが知れ渡ってしまう。そこで孫悟空は、差し障りがない情報しかあの場では伝えなかったのだ。これから話す情報は、極秘にしなければならないのだと、孫悟空は玄奘達に告げた。何故ならば沙胡蝶の秘密を知れば、三界中の者共が沙胡蝶を求めて争いになる恐れがあったからだ。




