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74、孫悟空の報告③海の王の謀略について

「白蘭が命と引き替えるように出産した赤ん坊は産声を上げた一瞬だけだが、春香天女の芳香を放ったことで海の王は、ある謀略を思いついた」


 幽体の海の王は悔しそうに身じろぎしたが、幌金縄はビクともしなかった。そんな中、孫悟空の報告は続いていく。


「一瞬で芳香が消えてしまった赤ん坊が、また芳香を放つかはわからない。成長した赤ん坊が白蘭のように、また同じ芳香を放つようなら、番として契る前に己の逆鱗を飲ませて、同じ竜族として永遠に囲みこみ、芳香がなければ、芳香を持つ者が生まれるまで子々孫々に渡って、永遠に子を作らせようとしたんです」


 竜王の逆鱗は2度生え替わる。一度目は子どもから大人に変わったとき。二度目は自分の番に自分と同じ寿命を与えるために。


「竜王の鱗は逆鱗以外なら、何の病気にも効く難病の特効薬になりますが、逆鱗は持ち主の望みを叶えてくれる薬になるんです。海の王は一度目の逆鱗を、不実の恋を叶える惚れ薬に変えたんです。このことは、そこの東海竜王がよく知っていますよ。甥っ子の尻ぬぐいに追われていましたからね」


 孫悟空の言葉に東海竜王は、ついに両手で頭を抱えた。先ほどから収まらない頭痛がさらにひどくなってきたらしい。


「2度目の逆鱗は()()()()()()()()()に、どんな生き物だろうと、()()()()()()()()()()に、竜族に変換すると同時に竜王を宿せる体になる。つまり性別に関係なく、逆鱗を飲んだ番は後継者を生むための特別の子宮を宿せるようになるんです」


 つまり白蘭の処女を奪う前に逆鱗を飲ませれば、永遠に春香天女の芳香を放つ妻を得られたのに、処女を失うと芳香が消えることを海の王は知らなかったため失敗してしまったと知った海の王は、今度は自分の血を引く我が子を、春香天女の身代わり……もしくは春香天女の身代わりを生ませるための道具にしようと考えたのだ。あまりにおぞましい考えに、林にいた者達は絶句してしまった。


「何故、俺が海の王の謀略を知っているかというと、海の王の傍にいる腹心と呼ばれる鮫の化生3人に聞き取りをしたからです。海の王は寵妃の白蘭が亡くなった日、珍しく後宮から出て、宮殿の執政室に来たと彼らは言っていました。寵妃が亡くなり、お悔やみの言葉をと声をかけた3人の家来に対して海の王は、『人間と竜人の混血の()を味わってみたいから、赤ん坊が成人したら私に知らせよ』と命令したそうです。普段から後宮以外の場所にいる王の言葉は、右筆係(ゆうひつがかり)と呼ばれる記録者が質問することなく、そのまま記録するのが海の国の宮殿のしきたりだが、海の王のあまりの下劣な命令に3人は、思わず聞き返してしまったそうです。その時、海の王は自分の思いついた謀略に興奮状態だったのでしょう。3人にベラベラと己の謀略を話したというのです。3人は、あまりのおぞましさに震えながらも王の命令故従わなければと、その言葉を一言一句(たが)うことなく震える字で書き連ねて、記録簿に命令された日時も記録していました。海の国の民は王が何もしないので、その他の者が実に勤勉に働いているようですね。おかげで調査が楽に出来ました」

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