59、悟空、追求される
孫悟空が小さくなった沙胡蝶を連れて五宝貝に戻ると、孫悟空が予想していたとおりに五宝貝に来ていた玄奘が、沙胡蝶と話したいからと人払いを求めた。なので孫悟空は檜が用意したクッションに沙胡蝶を座らせた。すると、それを待っていましたとばかりに、その場にいた檜と楡に孫悟空は両脇を抱えられて、玄奘と沙胡蝶に、自分達の声が聞こえない場所の席まで引きずられていった。ちなみに檜と楡や、八戒と悟浄そして孫悟空は化生故、少し離れたところにいる玄奘達の会話は、何の問題も無く全て聞こえていた。
「悟空の兄貴、俺の目を見て」
うっとうしい長い前髪をかき上げた八戒が、目を見開いて孫悟空を凝視してきたので、孫悟空は何をそんなに起こっているのかと訝しげに睨みつけた。八戒は普段はわざと間延びした口調で喋り、玄奘の闘争本能刺激させないようにしつつ、自分達、化生……妖怪と呼ばれる存在に慣れさせようと思っているようだが、八戒自身も元々、自分の邪眼によって、少々やさぐれた性格となっていて、怒りっぽくて直ぐに素の口調に戻ってしまうから、キャラがブレまくりなので、もう素に戻せばいいのにと孫悟空は思っていた。
「うん、まだどちらも未体験だね。良かった、あの子の貞操が汚されていなくて。信じてたよ、悟空の兄貴」
「嘘吐くな!魔眼まで使って思いっきり疑ってたくせに!」
八戒は半眼になって、孫悟空を見る。
「だって悟空の兄貴、仕方ないよ。元々匂いのない沙胡蝶の頭の先から足の先まで、ベッタリ悟空の兄貴の匂いがついていて、おまけに沙胡蝶の呼気まで兄貴の匂いがしているんだよ?他の化生にも丸わかりなほど、濃い匂いがつくほどのことを沙胡蝶にしたんじゃないかって疑うのは当然でしょう?」
気づけば化生達の皆が目が据わっていて、ジワジワと皆が孫悟空ににじり寄ってきた。沙悟浄はごつい顔をグイッと近づけて言った。
「悟空の兄者。拙者は、はるばる海の国から拙者を頼ってくれた沙胡蝶殿を守れなかったことを悔いておる。だから正直に話してほしい。瓢箪を出てから、ご自分の家に籠もって沙胡蝶殿に何をされたのです?」
檜と楡も孫悟空に詰め寄ってきた。檜が先に問いかける。
「さっちゃんが縮んでしまったことは僕らの落ち度だ。後でキチンと、さっちゃんに謝るよ。償いもする。でも、それとこれは別。ねぇ、悟空君?君、溺れて溶けたさっちゃんをどうして、この場で直ぐに助けなかったの?」
「そうだよ、ここなら人手も多いし、直ぐにさっちゃんを助けることが出来たはずだよ!……なのに、どうしてここから離れなければならなかったんだい?確かに、ここには人間の客もいたから、さっちゃんが縮んでしまったことを見られるのは、まずいことは、わかるんだけど、君は仙術の天才だろう?僕らだっているから、見られないように皆で協力することが出来たはずだよ。……それとも僕らにも見られちゃいけないことが、さっちゃんにはあるの?」
楡の言葉に内心の動揺は表に出さずに、孫悟空は努めて冷静を装った。
「何のことだよ?何が言いたいんだ?」
「……もしかして、さっちゃんは女の子なの?」
皆がシンと静まり、孫悟空の返答を待った。
沙胡蝶の秘密がばれてしまうのか!?




