35、檜と楡の回想②
引き続き、檜と楡の話です。
「檜、楡、大変だよ!今度の僧侶は子どもなんだ!でね、その子が危険なんだ!!皆で助けに行こう!」
いつもと違い、慌てふためいた様子の5人の兄弟達が、接客をしていた双子のところに飛び込むように走り寄ってきた。歓楽街の中で最も評判の悪いイカサマ博打の噂のある賭場を経営している胡散臭い札付きの悪人と有名な男が、真っ白な旅装束を着た僧侶を連れて歩いているというのだ。
その噂を店に来た女性客から聞いた5人は、噂を確かめるためにいつものように店を抜け出して、詳細を調べてきた。なんでも路銀に困って日雇いの仕事を探していた僧侶に、賭場の経営者が声をかけ、自分の食堂で皿洗いの仕事があるからと勧誘し、店に案内しているとのことだったので、5人は本当に僧侶なのかを確かめるため、噂となった人物を見に行った。
強面のM字ハゲの大男に連れられて歩いていたのは、とても美しい少年だった。その頭の真珠色のハゲさえなければ、お忍びで旅人に変装している貴族の子息か小さな王子様にしか見えないくらいに気品漂う美しい姿勢で歩いていた。強面の大男は端から見ても丸わかりなくらいに機嫌良く、少年を見つめて照れた様子で何やら話しかけていた。
少年は真珠色のハゲを大切そうに撫でながら、笑顔でそれに答えている。すると強面の男は、顔面に火が付いたかのように赤くなりながらモジモジしだし……。歓楽街を歩く二人の姿を大勢の者達が驚きの表情で遠巻きに眺めている中、5人は不安を感じずにはいられなくなってしまったというのだ。
今回の三蔵法師候補の僧侶は、いつもとは違い、まだ子どもだった。本物かどうかはわからないけど、この歓楽街で行う試練を受けるには十数年は早いだろう、幼すぎる子どもである。子どもを連れて歩く、この評判の悪い大男が子どもを気にいっていることは明白で、そしてここは大人が欲望に狂う歓楽街だった。大男が何か良からぬことを子供にするのではないかと心配になり、小さな少年を何とか助けられないかと思っているのだと、5人の必死の訴えに双子も慌てて了承した。
だが、しかし……。皆で子供の救出に向かった賭場で、7人の兄弟達は思いもしない奇跡を目撃することになった。




