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34、檜と楡の回想①

孫悟空と沙胡蝶が飛び出していった後の五宝貝の中の様子です。

 孫悟空の分身の片言の伝言に、五宝貝の店内は、また混乱に陥りかけた。話し合いをしようとした鉄扇公主は泣き始め、五宝貝の7人兄弟はズンと落ち込み、暗い顔つきとなった。沙悟浄も沙胡蝶殿が溶けてしまわれたのか……と男泣きし出した。その中で玄奘だけは冷静だった。


「悟空が助けると言ったのだから大丈夫のはずです。だから私達は今出来ることをしましょう」


 玄奘は沙悟浄から預かった芭蕉扇を鉄扇公主に返した。どうしてこれが?と、驚く鉄扇公主に経緯を簡単に説明し、謝った。鉄扇公主は、元はと言えば自身が罪を犯したことが発端なので謝罪はいらないと返し、三蔵法師と名乗った玄奘に再度深く謝罪の言葉を述べた。


 鉄扇公主は芭蕉扇を受け取ると、自らの仙術を纏わせた芭蕉扇を一度緩やかに扇いだ。すると、あれだけ濡れていた店内が一瞬でカラリと乾いた。次に玄奘は鉄扇公主に玉面公主の入浴の世話を頼んだ。玉面公主が自分の悪臭で顔面蒼白だったためだ。鉄扇公主はこれを快く引き受け、縛られたままの玉面公主を仙術で浴室に運んでいった。その次に玄奘は五宝貝の人間5人に猪八戒の世話を頼んだ。どうも瓢箪に入っていた酒が、筋斗雲とともに外に出て雨になったらしいとわかったので、八戒の酔い覚ましをお願いした。5人は八戒に水を飲ませ、額を冷やしたりと、かいがいしく世話を焼いてくれた。


 意外なことに檜と楡の双子も彼らと義兄弟となった5人の人間も、邪眼である八戒の目を見ても、何の反応も示さなかった。正気を取り戻した八戒は驚いた。


「こういう仕事をしているからこそ、そういう自分にとっての初めては、自分の大切な人としたいから大事に取っている」


 7人兄弟は口を揃えて、そう語った。歓楽街一のホストクラブ五宝貝の北斗七星と呼ばれる売れっ子ホスト7人兄弟は、()()()()()()でも超一流のホストと評判が高い。平均年齢18才の彼らは仕事では、言葉や目線、仕草で、次々と女心を(とりこ)にしてきたが、私生活では手をつなぐことにも躊躇(ちゅうちょ)するような純情青春男子達だった。


 玄奘は沙悟浄に牛魔王の監視を頼み、檜と楡と向き合った。檜と楡による三蔵法師への試練を受けるためである。

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