26、陸の国の者と海の国の者
孫悟空目線です。お話が重複しますが、ご了承ください。
瓢箪の中は大量の酒で満ちていた。酒好きなお節介爺様の持ち物らしい持ち物だなと孫悟空は冷静な頭で思った。沙胡蝶は鱗の力で直ぐに水面に向かっていった。僅かな鱗と頭に被せられた真珠が、この瓢箪から沙胡蝶を守ってくれるはずだ。孫悟空が脱出方法を考えるまで、そこで待っていてくれと孫悟空は声が届かないところにいる沙胡蝶に願った。
名前を呼ぶ声に応じたため、深い所まで吸い込まれていく孫悟空は、沈みながらも冷静なままだった。目を開けて瓢箪の中を見ながら、脱出の方法を思案していく。如意棒を巨大化させるべきか?それとも蜂にでも変化して、奴らが開けるのを待つ方がいいのか?いくつかの方法を考えていた孫悟空は、再び潜ってきた沙胡蝶に気づけなかった。
水中の奥深くに引きずられるように沈んでいく孫悟空の目の前に、いつのまにか沙胡蝶がいる。沈む孫悟空に抱きついてきて、驚く孫悟空に沙胡蝶は優しく微笑んだ。面食らったような表情の孫悟空の両頬を沙胡蝶の両手がしっかと包み込んだ。驚く孫悟空が沙胡蝶に話しかけようと唇を開けようとしたら、沙胡蝶の制止の言葉と共に、柔らかく小さな唇が孫悟空の唇に触れた。ピッタリと唇を当てて、空気を孫悟空に送り込んでくる。
陸の生き物である俺を助けようとしてるのか?俺に空気を与えるために潜ってきたのか?と目を見開いたままの孫悟空に、沙胡蝶は微笑んだまま、自身の頭に手をやった。沙胡蝶は自分のための頭の真珠を孫悟空のために、躊躇いもなく外した。孫悟空の頭にそれを乗せると、沙胡蝶はにへらと笑顔になった。
海の国の者であるはずの沙胡蝶は、水の中で息ができるけれども、強い酒には免疫が無かったようで、あっというまに沙胡蝶は孫悟空の前で酒精に飲み込まれていった。
次回も孫悟空目線です。よく主人公が気を失っている気が……(汗)




