二十話 魔城の屋敷
空白に招かれたは良いものの拓とペストは2人で屋敷への道を歩いていた。
空白は、
『この先を真っ直ぐ行けば我が主人の屋敷に着きますので。私は怪我人を連れて一足先に失礼します』
とだけ言って、アンリと気絶していた少女を連れて姿を消した。
『………』
『………』
2人はそれを唖然として見届けていた為にそれ以上の事は聞けず、こうして現在そう遠くない屋敷へ地道に歩いている。
道中、拓はずっと思考を深く沈め考え込んでいた。
それは意外にも空白の事ではなく、アンリと自分についてだった。
拓はアンリの名前を聞いた時からずっと不思議に思っていたのだ。今のアンリはあまりにも弱過ぎる。あんな………。
ーーーあんな少女が絶対悪に魔王を生み出したとは思えない。
「ちょっと拓!着いたわよ!」
「ん?あぁ、そうか。悪いな、考え事してたわ」
ペストに肩を揺さぶられて意識を目の前にまで現れた屋敷に移した。
その見た目は精霊の門があった丘から見えていた通りに雰囲気は暗く、正に魔城と言うような様子だった。
「クククッ!あのお嬢様はとんだファンシー思考かもな」
拓が笑っているのは屋敷に対してではない。視線の先には外壁に着いた表式である。
それに気付いたペストも如何にか笑いを堪えようと手で口を押さえている。
標識の何が面白いのかと言えば、その表式には可愛らしく、【アンリん家】と書かれていた。
2人はそのまま笑いながら屋敷の中へ足を運んだ。




