十九話 瞬間的な勝敗
「んじゃ、今度は俺のターンだ。魔王」
アンリに強く見据えられても動じることがない拓に対し、その後ろではペストが冷や汗を流していた。
実際にペストはこの四人の中で最も実力不足だ。守りでは遅れを取らずとしても、それだけでは拓の邪魔になるだけだ、と理解しているからこそ後ろで手も出さずに静観を決め込んでいた。
ペストに守られている女性は未だに目を覚ます様子はなかった。
その様子を一瞬だけ横目にした拓は改めて敵視してくるアンリを見る。
だが正直なところ拓にはアンリに対してはさして興味が無かった。確かに悪神と言う存在は災厄とも呼ばれ、世界の試練と言っても差し支えない存在なんだが、この少女、アンリは悪神としてまだ成熟していない。この少女は言わば悪神の卵だ。それではペストの防御壁すら破れない。
だが、それに比べて隣で笑みを浮かべている空白と名乗る執事の男はとんでもない化け物だった。その存在はハッキリとはせず朧げにしか認識出来ない。それは拓には2度目の遭遇だった。過去に似たような存在に出会っているのだが、その時は何とか難を逃れた。
だが、同時にそれは空白からは逃げることしか出来ない、寧ろそれすら出来ない可能性があると言うことだ。
その事実から歯痒いものを感じると共に、空白に攻撃の意思がないことに安堵していた。
そして拓は攻撃に移る。
その姿を音無く消した。
「………クッ!」
アンリは顔を渋めたが、冷静に気配を捉えるために集中する。
「足りないな」
だがそれですら捉えることが出来なかった拓はアンリの、正に鼻先と近距離に姿を現した。
そのまま膝を持ち上げてアンリの腹を蹴り上げる。
「カハッ!」
やはり残念だと思いつつ拓はその勢いを利用して空白に向けて蹴り飛ばす。
「ハッ、一丁上がり!」
空白はアンリを受け止めて満足そうにしている。
「フフフ、やはり貴方は面白いですね。では此れよりお嬢様お休みさせにお屋敷に戻ります。良ければ貴方達をご招待致しましょう。ついでに其処で気を失っている少女も休ませれ良いでしょう」
そして拓達は思い掛けない招待に預かったのだった。
今回はセリフ少なかった気がするけど、
まぁ何でも良いかな。
次回も宜しく!




