十六話 紅い月と湖
拓の掛け声と共に二人は門に向かって飛び込んだ。
―――ビィィィィィィィイ!!
入る瞬間、甲高い音が耳に届き拓は思わず両手で耳を塞いだ。
「クッ!」
だがそれも一瞬で終わり、先程までの森とは明らかに違う開けた場所に飛び出た。
そこは魔境を見渡せるほど高い崖の穂先だった。
拓は立ち上がり辺り一面を見渡す。
上を見上げれば黒く暗い夜空に星が点々と光り、紅い満月が一際輝いている。
左右を見れば右には広い湖、左には刺々しい木々が聳え立っている。
だが此処で周囲に有るべきものが無いことに気が付く。
即ち――――
「あれ? ペストの奴は何処だ?」
辺りを見回してもペストが居なかった。
「あ」
突然、拓が声を上げる。
どうやら何故かは思い当たるらしい。
そして背後の門に再び戻る。
再び甲高い音を耳にして森に戻る。
頭を押さえつつ森の地に足を着ける。
「拓!どういう事よ!」
振り向けば門の向こうに腰を下ろしている、いや、正しくは尻餅を着いているペストが居た。
「あ~、悪い説明忘れてた。この精霊門は門に向かって魔力を繋げなきゃ入れないんだよ。飛び込むだけじゃぁ入れないんだよなぁ」
おどけた様子もなく言う拓に、ペストは肩を震わせて立ち上がる。
「先に言いなさいよ!!」
「だから悪かったって、あんまり五月蝿いと嫌われるぞ?」
「なっ!?」
尻餅が恥ずかしくて赤くなっていたペストの顔が更に赤くなる。
完全に怒ってらっしゃるようだ。
「本当に悪かったと思ってるよ。だからもう行こうぜ?あっち結構いい場所だったぞ」
「分かったわよ。門に自分の魔力を繋げればいいのよね?行きましょ」
やっと怒りを呑み込んでくれたペストを先に促し二人は再び門に飛び込んだ。




