九話
拓が放った言葉がこの場に居る全ての人に驚愕を与えた。
そこに例外はなく、魔王も目を見開いている。
ペストも驚いてはいたが、直ぐに冷静さを取り戻し無表情になる。
他は数十秒の呆気に取られていたが、ハッとし、魔王に武器の長槍を向ける。
最も驚いていたのは正体を看破された魔王本人だった。
魔王は人質として王の肩に手を掛け、拓を睨む。
「何でバレたのか、興味深いから参考までに教えてもらえないかしら?」
冷や汗を流しながら尋ねる魔王だが、拓はその質問に逆に驚いたように魔王をみる。
「え、本気で言ってんの? もし本気で言ってんなら、お前が魔王であるかすら怪しいんだが······」
そう挑発する拓の身体は僅かに震えていた。
しかし、その震えが恐怖だと勘違いする者は居なかった。
何故なら、拓の顔が完全に相手を馬鹿にしている顔だったからだ、単なる挑発であった。
「ハーッハッハッハッハ!! 駄目だ、堪えられん!」
前兆はあったものの、拓は王室に響く声で爆笑し始めた。
勿論魔王は顔を真っ赤にして肩に震わせている。
この震えは誰見ても怒り以外にあり得なかった。
「貴様ッ!! 何がおかしい!! もう良い!! 皆殺―――」
「ペストちゃーん」
魔王の周囲に目で確認できる、黒いエネルギーが集まり、魔王の姿が見えなくなっていた、が。
拓の一言に声で応えず、ペストは行動で応えた。
ペストが黒い風を吹かせたのである。
そして、ペストの元に戻ってきた風が運んできたものがあった。
それを誰もが呆然としていた。
黒いエネルギーが無くなり、魔王を見れば首から上の物が無くなっているのだから。
「は~い、皆さんお疲れまさでした~」
拓の気が抜ける一言で、この魔王騒動は締められたのであった。




