ERROR 07 異常個体
ゴォォ……
低く重い唸りが、下水路の奥から響く
「……来るな」
ルクスは剣を構えた
ヴェルカはじっと奥を見ている
次の瞬間
ズルリ、と巨大な影が現れた
「……でかっ」
現れたのは、異様に肥大化したダークハウンドだった
体は通常の数倍
筋肉が不自然に膨れ、皮膚が裂けかけている
すぐに鑑定
⸻
〈ダークハウンド(変異体)〉
レベル:8
⸻
そして
⸻
〈ERROR〉
過剰強化:全能力+300%
状態:崩壊進行中
⸻
「……強化されすぎて壊れかけてるのか」
「強い」
ヴェルカが一言
次の瞬間
変異体が消えた
「っ――!」
視界から消えたと思った瞬間、真横から衝撃
ルクスは床を転がる
「ぐっ……!」
速すぎる
体勢を立て直す前に、再び影が迫る
「ルクス」
「まだやれる!」
ギリギリで身をひねり、爪を避ける
だが浅く肩を裂かれる
「チッ……」
血が滲む
「ヴェルカ、まだ出るな」
「なぜ」
「試したい」
短く答える
ヴェルカは一歩引いた
「……了解した」
⸻
変異体が唸る
今度は正面から突っ込んできた
「来い」
ルクスは視線を逸らさない
全身に走る“ヒビ”を観察する
多すぎる
だが一つだけ、明らかに濃い歪みがある
(あれが核だ)
だが
そこに触れる余裕がない
「なら――」
突進を引きつける
ギリギリまで待つ
「今だ」
横に滑り込む
すれ違いざま、腕を伸ばす
だが
「……届かない!」
一歩分、足りない
変異体が急停止し、振り向く
速い
「チッ」
再び襲いかかってくる
今度は連撃
回避が追いつかない
「ぐっ……!」
腹に一撃もらい、吹き飛ぶ
壁に叩きつけられる
「ルクス」
「まだ……いける」
立ち上がる
呼吸が荒い
だが、見えている
「……癖あるな」
「?」
「こいつ、突っ込むとき必ず右にズレる」
ヴェルカは黙って聞いている
「次で取る」
「失敗したら」
「そのときは頼む」
「分かった」
⸻
変異体が再び構える
低く沈み込む姿勢
来る
「……来い」
突進
やはり右にズレる
その瞬間
ルクスは一歩、踏み込んだ
逃げない
正面
すれ違う直前
体をひねり、懐に入る
「――そこだ!」
胸の“核”へ手を叩き込む
触れた
⸻
〈ERROR 修正〉
⸻
だが
バキッ――ではない
ビキビキ、と嫌な感触
「……硬っ!?」
核が強すぎる
一撃じゃ足りない
変異体が暴れる
至近距離
避けられない
「ヴェルカ!」
「任せろ」
次の瞬間
視界が揺れた
ヴェルカが目の前にいた
片手で変異体の顎を受け止めている
「……止めた」
「助かる!」
ルクスはもう一度核に触れる
今度は意識を集中させる
一点に
深く
押し込む
⸻
〈ERROR 修正〉
⸻
バキィッ!!
今度ははっきりと砕けた
次の瞬間
変異体の力が抜ける
膨れ上がっていた筋肉がしぼみ、体が崩れ落ちる
ドサッ、と音を立てて倒れた
⸻
「……終わったか」
ルクスはその場に座り込む
「遅い」
ヴェルカが言う
「うるせえ」
「最初から私がやれば早い」
「それだと検証できねえだろ」
ヴェルカは少し考えてから言う
「……非効率」
「うるせえ」
⸻
変異体の体が淡く光る
「ドロップか」
ルクスは立ち上がり、それを拾う
黒い結晶
鑑定
⸻
〈歪んだ核〉
効果:不明
⸻
そして
⸻
〈ERROR〉
種別:システム断片
危険度:高
⸻
「……またこれか」
ルクスはそれを見つめる
「ヴェルカ」
「何だ」
「この世界、普通じゃない」
「知っている」
「マジかよ」
「最初からそう感じている」
ルクスは苦笑する
「……だろうな」
⸻
下水路の奥
静寂が戻る
だがその裏で
世界の“歪み”は確実に広がっていた




