表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/39

2話 え、誰ですか?

私立櫻陵おうりょう高等学校に通う僕は、二年に進級したばかりだ。春のうららかな陽気は、大気だけでなく僕の心にも訪れたようだ。妄想じゃないよ。いくら僕がゲーマーだからって、そこまでお花畑じゃない。

そう、妄想なんかじゃないんだ。二年から同じクラスになった水奈月さんに突然告白され、もちろん即OKした。まさか気になっていた子から告白されるなんて、思いもしなかった。

ゲームでは告白されるように進められるけど、現実でも起こるなんて思わないじゃないか。まて、僕は夢の中で水奈月さんの出るゲームをしていたのか?

そんなわけあるかっ!


「お、数音。妄想の中で振られたか。」

うん、そうなんだ。って違うわ。

今日も祐二の酷い言葉に僕の心は傷ついた。いや大丈夫、僕には水奈月さんが居る、水奈月さんの笑顔が祐二に付けられた傷を回復魔法のようにあっさりと癒してくれる。

「次の授業英語だろ、文法の事を考えていたら、わけわかんなくなってさ。」

「ふーん、つまり妄想の相手は帰国子女か。」

「ちげーっての。」

人の話し聞けよ。

「まあいいや、帰りにメガ寄らない?」

「ん、いいよ。」

メガとは、MEGA-Pというゲームセンターの事だ。祐二とは中学の時から、ちょくちょく学校帰りに寄って遊んで帰っているお店なんだ。

僕がOKすると祐二は自分の席に移動して行った。さて、祐二に付けられた傷を癒すには、やはり現実の水奈月さんを見るのが一番だよね。チャイムが鳴る前にと思って水奈月さんの方を見るが、本に落としている視線は変わらずにこちらには気付かないようだった。

おかしいな。

昨日のは夢じゃないよな。

そう言えば今日、一度も話していない。照れもあるしバレたくないってのは分かる。僕だって知られるのは恥ずかしいし。ただ、見向きもしないのはどういう事だろう。


そこでチャイムが鳴ったので、昨日の帰りを思い出して癒される事にした。ちなみに授業は数学だったため、祐二の帰国子女発言に納得がいったのと、納得がいかないのと・・・。


昨日、学校を出た僕と水奈月さんは、ファミレスに寄りミニパフェとドリンクバーを注文して少し会話をした。経験値ゼロの僕に会話しろとか無理ゲーなんだけど。そこは水奈月さんにフォローされた、ダメ男です。ほっとけよ。

「趣味はなに?」

「読書です。」

はい、さらっと答えました。嘘は言ってません。

「えぇ、それって私に合わせて言ってない?」

「そんな事はありません、家の本棚に結構あります。」

マンガですが。

「ふーん、ならそうなのか。」

見てはいないけれど納得したように水奈月さんは相槌を打つ。多分、信用されていないだろう。

「あと、ゲームを少々。」

嘘です。ゲームが人生です。

「知ってる、よく森高くんとゲームの話ししてるもんね。」

バレバレでした。なんで僕は少々とか見栄を張ったんだ。だがそう言った水奈月さんは、笑顔だった。その笑顔に見とれてしまう。

「あ、さては私に見とれているな。」

こっちもバレバレか!慌てて顔を逸らすがもう手遅れだろう。むしろ逸らした事で認めたようなものじゃないか!


そんな他愛もない会話をした事を思い出す。話す前の見ていただけの時と、印象は違ったが僕の中での可愛さは増した。それにゲーマーって気付かれていて、声を掛けられたなら、来てんじゃないかこれ?って勘違いしてもいいよね。

いや、実際のところ男女の付き合うって概念がよくわからないのだが。マンガやゲームでの付き合いがリアルじゃないってのは僕だって分かる。そこまで馬鹿じゃない。けれど、どうしたらいいのか分からない事には変わりがない。


はい、昨日の水奈月さんの笑顔を思い出して、とりあえず祐二から付けられた傷は回復しました。思い出してみるとやっぱり僕の妄想なんかじゃない。ちゃんと昨日の帰り、水奈月さんとファミレスに寄ったじゃないか。

あれ、もしかすると僕はデートってやつをしたのか?

しかも気になっていた水奈月さんと。

改めて考えると嬉しくなって、つい顔がにやけてしまう。


昨日の事を考えているだけであっという間に本日の授業が終了した。

残念な事に祐二と約束をしてしまったので、水奈月さんに今日は一緒に帰れないと伝えなければ。だけど、そんな話しにはもともとなっていないんだよな。でも、伝えておこう。

でも、声を掛けられるだろうか。

いや、昨日少し話したんだ、いけるだろう、僕?

祐二がトイレに行ってくると席を外したところで、勇気を出して僕は水奈月さんの前に移動した。

「あのさ、水奈月さん。」

声を掛けたら水奈月さんが睨みつけてきた。しかも下から睨め付けるように。

「誰だてめぇ?気安く話しかけてんじゃねぇぞ、おい。」

えっ・・・誰ですか・・・。

その時世界は白くなりました。

それはもう、目に映るものは全て純白です。


>なにそれ、新しい冗談?と気軽に言う。

 お前こそ誰だ!?って言い返す。

 恐いから逃げる。

 もう一度確かめる。


って待て待て待て、選択肢を作っている場合じゃないっての。

>もう一度確かめる。

って結局選ぶのかよ。でもそうだ、多分気の所為だ、もう一度話しかけてみよう。

「水奈月さん、ですよね。」

「どっからどう見てもそうだろうがよ、何言ってんだてめぇはよ。」

・・・

現実って、何処?

ああ、昨日に帰りたいよ。水奈月さんが水奈月さんであって水奈月さんじゃなくなった。自分でも言っている意味が分からないけど、どうなってるんだよ、これ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ